主なき人形 1

「それにしても、寂しそうなお姉さんだったよね」
「ああ、あの世捨ての集落か。変わった紋様を体に描いてたな」

 ミナスとギルが、先日通りかかった集落で知己となった女性の話をしている。
 元々、賢者の塔で新たな魔法を開発していたが、塔の戒律にそぐわなかったようで追い出されたと言っていた。

「ああいうのはね、たまーにいるのよ。駄目だって分ってても、禁じられたモノに手を出す種類の魔術師ね」

 その女性から二度目の訪問時に貰った、≪蒼石の指輪≫というマジックアイテムをじっくりと鑑定しながら、ジーニが二人の会話に口を挟んだ。

「気にするまではいいけど、あんまり入れ込むんじゃないわよ、ミナス。塔の戒律が全てとは言わないけど、理由があって追われたんだから」
「ん・・・・・・ジーニは、結構冷たいね」
「言ってくれるじゃないの」

 口ほど気にした様子も無く、ジーニはふふん、と鼻を鳴らした。

「自分で制御できない力なんて、追い求めるもんじゃないのよ。ろくな結果にならないからね」
「そりゃあ・・・・・・そうかもしれないけど」
「そういえば、これから会いに行く依頼人も、新しい魔法の力に四苦八苦してる一人だわね。ギル、そろそろ出かけましょ?」
「ああ、元気だといいな。ルーシー」

 ジーニのその言葉をきっかけに、”金狼の牙”たちは装備を整えて出かけていった。

 冒険者達は以前に一度、とある少女から依頼を受けている。
 新種のゴーレムの戦闘データを得るモルモットとしての仕事だった。
 彼女の父は高名なゴーレムの研究者で、魔法力と蒸気機関によって動くスチームゴーレムを開発していた。
 少女はそのゴーレムを実用化すべく独自の研究を続けているのだ。
 ・・・もっとも、父親の方では彼女の研究を快く思っていない。
 ゴーレム研究の危険性と、女性は子供を産み育てればよいという性別分業主義によるそうだ。

 今回、冒険者達は父親に反発した娘の研修旅行とやらに付き合うハメになった。
 無論、これも依頼であるからには名誉にかけて完遂しなければならない。
 目的地は炭鉱の村オデッサである。
 その村には、少女の父と共にゴーレム学を修めた魔術師が今も研究を続けているらしい。

「・・・父親には内緒か?」

 ギルは楽しげに少女の様子を窺った。

ScreenShot_20121210_154027578.png

「当然、そういう事ね。私が暇を取れば、少しは私のありがたみがわかるってものでしょう?」
「依頼人が亡くなった時は何と報告すればよいでしょう。お父上に合わす顔がないではありませんか・・・」

 憂鬱そうな顔をしているアウロラは、最後までこの依頼を受けるのを躊躇っていた。
 性差別のルーシーの父親に対して同意見ではないものの、娘が父親を説得せずに、勝手に出てきたことを気にしているのである。

「ふ、不吉な事を言わないで」

 ルーシーは慣れない長距離を歩くことで染まった頬をふくらませて、冒険者を睨みつけた。
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