Thu.

霧を抱く…その6  

「あら?罠ね。危うく引っかかるところだったわ」
「これで罠、いくつ目でしょうか?」
「多分3個……いや、4個目だったかな」

 ムルが肩に乗せてもらっているロンドが、顎を撫でながら妖精の疑問に頭を捻った。
 グラスの遺した言葉にあった『古城』――所々が経年劣化で崩れているものの、まだ立派に住居として使うことの出来る石造りの、本当の城である。
 さすが盗賊団のねぐらに利用された建物と言うべきだろうか、途中には高度なトラップがたびたび仕掛けてられており、やむを得ず先ほどから、アンジェが頑張って盗賊の腕前をフル回転している。
 ここに入ってどのくらい時が過ぎたのか、傾いた太陽を窓から見たシシリーは、完全に暗くなる前に出たいものだと思った。
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2016/06/16 13:29 [edit]

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Thu.

霧を抱く…その5  

 ”霊剣・空牙”を入手して二日後――。
 中一日を休養に当てた冒険者たちは、元気満タンとなって依頼主のいる教会へと訪れていた。
 聖騎士の控え室から出てきたハウザーが、どこか困ったような雰囲気で一行を聖堂へと案内してくれたのだが――。

「”空牙”は鉱山からの回収後、ずっとこの聖堂に置かれていた。教会の中でも、最も聖なる力が溢れているからな」
「確かに落ち着く雰囲気じゃの」
「ただ、その……”空牙”に今朝方異変が起きてな」

 見たほうが早いだろう、とハウザーは聖堂の奥――剣を置くのに相応しく設えられた祭壇の方へ声を掛けた。

「おい、いるんだろ?紹介したい連中がいる。出て来てくれ」

 ハウザーが突然、”空牙”に向かって呼びかけると、訝しげに首を傾げる冒険者たちの目の前を何かが横切った。
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2016/06/16 13:26 [edit]

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Thu.

霧を抱く…その4  

 ウィルバーの危惧したとおり、以前に”霊剣・空牙”を取りに鉱山へ向かった聖騎士の小部隊は全滅していたらしく、スラム街のチンピラ達のように出来損ないの人形のような動きで、かつての上司であるジーアやハウザー、彼らと一緒にいる冒険者たちへと襲い掛かってきた。

「リンダ……ルード……」
「悲しむお主の気持ちは分かるがの、ジーア殿」

 バイオリンの弦に弓を滑らせ、【影のパレード】を呼び出していたテアが話しかけた。
 かつて人々を震え上がらせた凶悪な子供たちの影が、黒い陽炎のように彼女を取り巻いている。
 老婆の怪異な容貌と相まって、まるでそれは不吉なサーカスのようにも見えた。

「聖騎士ともあろう者たちが、このまま現世に迷う姿を晒すよりは、今のうちに天へ還してやるのがおぬしら聖北教会の徒の仕事ではないか?」
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2016/06/16 13:24 [edit]

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Thu.

霧を抱く…その3  

 シシリーは目の前で燃え落ちていく屋敷を見守っている。
 誰かが魔法などで火を放ったわけではない。
 アフリーズと名乗ったグードの留守番役の女と戦い、これを無事に打ち倒した旗を掲げる爪であったが、なんと死体から炎が上がったのだ。
 彼女の隣ではハウザーが毒づいている。

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2016/06/16 13:21 [edit]

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Thu.

霧を抱く…その2  

 年長者組+テーゼンは、被害者の遺族たちへ残念な知らせを届けた後、ハウザーが旗を掲げる爪に用意した≪水晶亭≫という宿に宿泊していた。
 シシリーは聖北教会の寮に残り、家族同然の仲間の看護を続けている。
 キィ、と扉の開く音がして振り返ると、そこにはこの街に来てから見知った顔があった。
 一人は自身と同じ金髪碧眼でありながら、儚げで清楚な印象を与える少女。
 もう一人は、穏やかな笑みを浮かべた表情がよく似合う、中背中肉の黒い髪の若者。

「まあ、あなたたち…」

 この両者は≪水晶亭≫で出会った、近郊の村出身の一般市民である。
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2016/06/16 13:18 [edit]

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