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Thu.

ファレンの騎士 5  

「・・・なんだかリューンを出て何年も経つような気がする・・・」

 ミナスはまだ二日目だというのにと小さくため息をついた。

「ふう・・・お酒を飲ませるなんて楽かと思ったけど大変だね。宿の娘さんて偉いんだなー」

と言って、狼の隠れ家の看板娘を思い浮かべる。
 彼女はどんな時も笑顔を絶やさない。その笑顔こそが、店に集う冒険者たちに力を与えていると知っているのだ。

「・・・・・・今は朝?お昼・・・?」

 ミナスは不意にリューンとの違いに気づいた。

「なんだか物足りないと思ったら、ここって鐘が鳴らないんだ・・・」

 ライラックという街についてあまり情報を得ていない彼にとって、それは不思議なことであった。
 大抵、栄えている街と言うのは聖北教会があり、鐘楼がついている。それがここにはない。
 リューンと違ってほとんどの住民が夜更かしだから就寝の鐘に意味はない、と言うことは分かるのだが・・・そのほかにも朝の鐘やミサの鐘というのが教会にはある。
 ミナス自身は聖北教徒ではないのだが、僧侶であるアウロラが鐘にあわせて祈りを捧げているのは見た。
 
「祈りの時間はどうするのかな?」

 あ、とミナスは思った。教会がないから鐘が鳴らないのだと。
 それに気づくと同時でノックもなしにドアが開き、ミナスは毛を逆立てた猫のようにびっくりした。
 開けたのはルーシアである。怖いパックを使っていた女性だ。

「よかったら朝食のあと買い物に行かない?街を案内するわ」
「・・・・・・うん、行くよ。それでさ、ノックをね」
「じゃ、またあとでね」
「・・・・・・ふぅ」

 彼女はまったく人の話を聞かずに出て行った。その様がどこか、ジーニに似てるような気がして苦笑してしまう。
 1時間後、朝食を取った二人が連れ立って街に出ると、外は快晴。
 「ムスメM」というスタミナドリンクの他は特に目的のものを決めずにいるのか、ルーシアは移り気な蝶のようにあちこちの商品を見て回った。
 結構な重さになった荷物に、ミナスが思わず呟く。

「ふぅふぅ・・・重い・・・」
「当たり前でしょ?紳士はこれくらい我慢しなさい?」
「そうだけど・・・これ、買いすぎじゃ・・・」
「・・・・・・・・・え?何か言った?」
「だから・・・」

 買いすぎって言ったの!!と叫ぼうとしたミナスの口を、見知らぬ女の言葉が見えない鎖となって縛った。

「まあ・・・!サロンの女よ・・・さ、行きましょ」

 その言葉の内容よりも台詞に含まれた悪意の針に、ミナスは悲しくなってしまった。

「・・・行きましょうか」
「うん・・・」

 そして暮れ始めた街の中を、宵の夢亭へ歩き始めた二人は、とある商人風の男とすれ違った。
 男の隣には若い女性が並んで歩いている。
 昨日来たお客さんだと気づいたミナスが声をかけようとすると、ルーシアに小声で「声をかけては駄目」と注意された。
 そのまま、路地へ逃げるように引っ張られたミナスは、我慢できずに問いかける。

「ねえ、どうして逃げるのさ?悪いことしてないじゃないか」
「それは光の当たる世界の言葉よ」
「・・・」
「・・・あら?」
「どうしたの?」
「空がきれいよ・・・」

 夢見る乙女のような表情で、ルーシアが黄昏の空を見上げた。

ScreenShot_20130105_182957375.png

「夕焼け雲か・・・」
「・・・・・・きっといいこと、あるわ」

 それはミナスに、というより、自分自身に言い聞かせるような言葉に思えた。

2013/01/10 01:15 [edit]

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