Tue.

死人の山の魔術師 5  

「また、冒険者か。しかし、たかが冒険者が外のあれを倒してここに入ってくるとは・・・」

 黒いローブを身に纏ったその男は、”金狼の牙”たちを見てそう呟いた。
 男が立っているその場所は、白い鍾乳石に覆われた湿っぽい部屋だった。
 ぴちゃん、と水の滴る音がする。

「お前が山のゾンビーを操ってる死霊魔術師なのか?」

ScreenShot_20130102_224630968.png

 アレクが前に一歩進んで問いかける。
 山を登っている最中にゾンビーに出会うことはなかったが、まだうろついている可能性はある。
 しかし、この魔術師が操っているのであれば、彼を倒すことでゾンビーたちを活動停止にできるはずだ。

「・・・愚問だ。私以外に誰ができようことか」
「調子乗ってるわねー。こんなじめじめした場所で一人で隠れてるから、脳にカビが生えたんじゃないの?」
「お前の発言もどうかと思うんだがな・・・・・・」

 辛辣極まりないジーニの台詞に思わずギルがツッコミを入れると、魔術師が地を這うような声で唸り始めた。

「思い出したぞ・・・貴様は・・・・・・!そうか・・・あの時の・・・!」
「・・・・・・?」
「・・・また貴様か、また貴様が私の安息を奪い取るというのかッ!」
「え、こいつ誰?俺知らないよ?」
「何言ってんだ、リーダー。こいつあれだ、盗賊ギルドから討伐命令受けた紅き鷹旅団の生き残りだよ!」

 エディンが細剣を構えつつ言い放つと、他の仲間たちもはっとして魔術師の顔を見直した。
 あの事件の時、頭目を倒してからあっという間に逃げられはしたものの、確かに見覚えがある。

「許さん・・・・・・絶対に許さん・・・!殺すだけでは飽きたらん・・・・・・!」
「そりゃこっちの台詞だっつうの。俺らの同業者や旅人をゾンビーなんぞにしやがって」
「貴様を殺した後もわが下僕としてこき使ってくれるわッ!!」

 魔術師は杖を掲げると、なにやら一心に詠唱の集中に入った。

「出でよ、我が下僕よ!」

 彼がルーンを叫ぶと、白い鍾乳石から滲み出るように石像が浮き出てくる。
 一瞬の後に、リザードマンのような形になった二つの石像は、魔術師を守る騎士のように前方で佇み、冒険者たちの進路を妨害していた。

「嬲り殺しにしてやる・・・!」
「そんなことさせません!あなたはここで終わりです!」
「行け、スネグーロチカ!あいつにお前の冷たい抱擁を!」

 ミナスの声に応えて飛んだ雪の精霊だったが、石像が魔術師の前に立ちはだかる。

「あの石像邪魔だ・・・」
「あたしに任せなさい。ようは、動けなくすりゃいいのよ」

 ジーニがベルトポーチに手を突っ込み、【閂の薬瓶】を魔術師めがけてぶん投げる。
 すると彼女の読みどおりに石像が魔術師を守り、主の代わりに薬瓶を浴びた。

「これであいつは動けないわ。やっちゃいなさい」
「ジーニ、なーいす」

 にやりと笑ったギルが、呪縛に囚われた石像に渾身の一撃を叩き込んだ。
 力を込めた分、回避し切れなかったもうひとつの石像の攻撃を受けるが、これはかすり傷で終わった。

「新しい防護の魔法、買っておいて良かったな!」
「ええ、そのようですね」

 アウロラがほっと安堵の息をつく。
 ポートリオン、と呼ばれる港町にあった聖東教会の秘蹟に、ずいぶんと迷ってからお金を払ったのは彼女だった。今までの防護の魔法では、これからドンドン強くなる敵の攻撃を受けられないと判断してのことである。
 それが当たったことが誇らしく、また怖くもあった。
 ギルの一撃をなぞるようにアレクも剣を叩きつけ、石像はあっさり破壊される。

「・・・・・・!」
「もう一方も動かないでもらおうか」

 ジーニの魔法の効果を確かめたエディンが、【磔刑の剣】で残った石像を壁に縫いとめる。
 それを見て激昂した魔術師は、召喚していた幻惑蝶を飛ばしアレク・ジーニ・エディンの精神を恐慌状態に陥らせた。
 その上、本人は【魔毒の矢】をミナスに飛ばす。

「ぐっ・・・・・・」

 ミナスの小さな身体が飛び、硬い石の上に叩きつけられる。
 ギルが叫んだ。

「ミナス!」
「ぼ、僕はへいき・・・。早くあいつやっつけちゃって・・・」
「・・・おうよ!」

 ギルが【薙ぎ倒し】の体勢に入った。
 精神を冒されながらも、アレクが続いて【飛礫の斧】の技を使おうと全身に力を込めて放つ。
 削られた地面から硬い石が飛び散り、魔術師と石像を穿つ。
 よろけて体勢が崩れたところを、飛び上がったエディンが石像に細剣を突き刺した。

「・・・・・・!おのれ、おのれ冒険者め!」
「・・・悪いが、お前はここで死ぬ」

 アレクは静かに黙示録の剣を構えた。
 その頭上を、魔術師への攻撃を指示されたスネグーロチカが飛ぶ。
 氷室に身を置くより何倍も冷たい感覚が、魔術師を包んだ。
 元々、死霊魔術と魔法生物創造の実験で寿命を縮めていた男に、その一撃は致命的だった。

「冒険者・・・呪い殺して・・・やる・・・・・・」
「そんな事はさせません。私がいる限り」 

 魔術師の最後の一言もアウロラが否定すると、彼は悔しそうに歯噛みしていたが突如痙攣を起こし、目を見開いたまま息を引き取った。

「これ、でこの依頼、も、解決だね」

 負傷と毒に麗しい顔を歪ませながらも我慢してミナスがそう言うと、アウロラが【血清の法】や【癒身の法】で彼を癒しながら同意した。

「ええ。さっさと依頼人に報告に行きましょうね」

 山からバーベルに戻った一行は、依頼人に仕事完了の報告をした。
 山の不死者を操っていた魔術師がいたこと、そのほかに彼がトロールを飼っており攫ってきた人間の死体を利用していたこと・・・魔術師に対する偏見がいっそう深まってしまったようだが、ジーニは全く平気の平左といった感じで応対している。
 事後処理は我々に任せたまえという依頼人に、一行は喜んで頷いた。
 報酬の銀貨1100枚を受け取り、冒険者たちは依頼人と別れた。

「リーダーよ、そろそろ帰ってもいいんじゃねえか?お怒り解ける頃だろ」
「娘さんの?うーん、そうだな・・・・・・」
「ねね、その前にフォーチュン=ベルに寄り道しない?錬金するものがあるのよ」
「そうか、そっちがあったな。じゃ、フォーチュン=ベル寄ってからリューン帰ろう」
「僕、あそこの噴水で遊びたい!」
「いいですね、暑い時期ですから丁度いいかもしれません」
「・・・風邪引くなよ」

 騒がしい”金狼の牙”たちは、また一つの因縁を退廃都市で片付けて旅に出る・・・。

※収入1400sp、情報料-40sp、≪防護の指輪≫≪智者の棒杖≫≪コカの葉≫≪癒神の霊薬≫※

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■後書きまたは言い訳
20回目のお仕事は、Wizさんの死人の山の魔術師です。以前にプレイした紅き鷹への葬送曲の続編(魔術師逃亡時のみ)でございます。
こちらの魔術師ダーウェル、ReadMeを読むとWizさんのお気に入りだったそうですが、そう言う悪役ほどきっちりトドメを刺したくなるのはなぜでしょう・・・(笑)。

冒頭において、いくつか店シナリオを記しておりますが、皆様お分かりになられたでしょうか?
SIGさんのアタノオル、Martさんの焔紡ぎ、Moonlitさんの新港都市ポートリオンなどで技能をがっぽり仕入れて参りました。いずれも美麗絵の、キーコードや汎用性にも優れたスキルたちです。シナリオ作者様、絵師の皆様には本当お礼を申し上げたい・・・。

退廃都市というバーベルの名前、どきっとする印象があります。その二つ名は昔の話だと分かった後も、いなくなった人々の情報収集だったり、いつトロールやゾンビに遭遇するかどきどきの山歩きだったり、ちっとも気の抜けない緊張感溢れるシナリオでした。
そうそう、とあるキーコードがないと途中のお部屋に立ち寄れませんので、プレイされる際はご注意を!

さて、次回スポットが当たるのはミナスです。まだまだ子どもの純真なエルフに、一体どんな冒険が待っているか乞うご期待(このフレーズ使ってみたかった)!

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

2013/01/08 17:41 [edit]

category: 死人の山の魔術師

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