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死人の山の魔術師 4  

 中は湿っており、天井から滴る水が冒険者たちを濡らした。
 アレクは精霊シェリの眠る神殿を思い出したが、ここはあのように人工的に手を加えられた様子は少なく、せいぜい一本道の途中で木製の扉がある程度だった。
 扉の前にしゃがみ込んで聞き耳したエディンが、何も聞こえないと首を振りながら扉の罠を調べる。
 そして妙なことに気づいた。

「この扉は開かねえが鍵穴らしきものはねえぞ」
「ん?つまりどういうことだ?」
「リーダー、俺じゃこの扉は開けられねえ。・・・と言っても、前に探検したグリフォンの洞窟のように、どこか違うところに仕掛けがあるわけでもなさそうなんだが・・・」
「もしかして・・・。ちょっとあたしに見せてもらえる?」

 エディンと場所を入れ替わったジーニが、白い額に杖の髑髏を当てて2~3語ルーンを呟くと、ノブに杖を触れさせて言った。

「魔法の鍵ね。待ってて、今開けてあげる」

 ジーニがベルトポーチから取り出したのは、錬金術の工房で手ほどきを受けた術の薬瓶だった。
 【閂の薬瓶】というそれは、不可視の鎖で魔法の鍵を施す。
 すでに鍵が掛かってる箇所へ再度振りかければ、力が相殺しあって解除することもできるのだ。
 薬を振りかけられたドアノブは、すんなりと開いた。

 ――そこには、かつてフィロンラの花を収めていたのより、ふた回りは大きな水槽があった。
 不気味に脈打つ赤黒い肉塊が浮かんでおり、あまりの醜悪さにアウロラは目をそむけた。
 傍らにはずいぶん黄ばんだ表紙の書物もある。
 いくつか付箋が付けられているのを見て、ジーニはエディンの調査が終わってからそれに手を伸ばした。
 それほど古いものではないようだが、環境のせいか痛んで色褪せているらしく、ジーニはページを破かないよう注意しながら朗読した。

「盗賊ギルドもしつこい連中だ。私がこうなったのは全てあの冒険者のせいだ。バルベルツも冒険者ごときにやられるとは・・・」
「盗賊ギルドが追う相手、だと?」
「そうみたいよ?えーと、このまま追われ続けるのは非常に困る。私の目的達成に支障をきたすからだ。どうにか追っ手の奴らを撒かなければならん」

 この日記をつけた主は、追っ手を撒くことに成功したらしい。
 しばらく山に身を隠そうとした主は、トロールに襲われたが無事に切り抜け、逆にここの門番として飼う事を考えたようだ。

「とんでもないことになってしまった、とか書いてるけど詳細はないわね。死霊魔術関係のことみたいだけど」
「結局、行方不明事件はトロールのせいだったのか?」
「どうもそうみたい。トロールが攫ってきた人間の死体が残っていた、とか書いてる。使い魔で治安隊や盗賊ギルドの連中を偵察したってあるから、街中の連続殺人事件も知ってたようね。・・・なんか、嫌に冒険者を恨むような記述が多いわ」

 よく手入れされた爪で文字をなぞっていたジーニは、不意に出てきた単語に眉をひそめた。

「あん?”新しい私”を創る準備が整った・・・・・・って書いてる」
「新しい私を、創る?」
「ホムンクルスに魂を移せば、自分を追放した賢者の塔の馬鹿どもですら絶対に自分と見抜くことはできない・・・ってさ。ははあ、最初は”不死者に転生”したかったのね。それが上手くいかないもんだから、魔法生物に頼ってみることにしたのか」
「・・・・・・ずいぶんと見過ごしにできない事ばかり書いてますね」

 口を尖らせたアウロラにジーニが苦笑した。死霊魔術もホムンクルスで体を創造することも、聖北教会の教義からするととんでもないことに相当するからだろう。
 最後の方のページには、霊薬を核にホムンクルスを成長させているとある。

「外気に触れたら死んでしまうようね。・・・頭逝っちゃってるわね、書いた奴。邪魔者は手段を一切選ばず殺すってさ」
「・・・・・・とすると、今までのを踏まえるとホムンクルスって・・・」
「そこの水槽の中の肉塊から、ちょっと大きい生命力を感じるよ」

ScreenShot_20130102_220935515.png

 朗読が終わり、エディンが眠たげな双眸を水槽に向けながら言うと、彼の想定を補うようにミナスが【精霊感知】を行って口添えした。
 ギルは一瞬たりとも悩まなかった。斧を構えると、躊躇なく水槽へと竜巻を放つ。水槽のガラスはあっけなく砕け散った。

「ゲアアアアアアア・・・・・・・・・!」

 奇妙な、とうてい生き物とも思えない呻き声が響き、肉塊は外気に触れると溶けてなくなった・・・。

「これは・・・・・・?」

 ギルは肉塊が溶けた後に残った、小指ほどの大きさの瓶を拾い上げる。
 彼の手元を覗き込んだジーニが「まさか」と呟くと、瓶を明かりに透かして鑑定をした。

「癒神の霊薬よ!発見数が少ないからとても貴重でね。服用すると毒や病、負傷や身体の欠損まで完全に癒すことができるの」
「高く売れそうだなあ」
「もちろん!多くの人がこの薬を求めてるもの、高額で売れるわよお」

 うきうきしながら癒神の霊薬をベルトポーチにしまい込むジーニに、「早く来いよ」と声をかけてエディンが先行する。
 隊列を元に戻した一行が一本道を静かに進むと、もう一つ奥に扉があった。

「・・・鍵や罠は無い様だぜ」

 報告する盗賊に頷き、ギルはまた補助魔法をかけるよう声をかけた。多分、ここから先に居るのは日記を書いた者だろう。

2013/01/08 17:21 [edit]

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