Tue.

死人の山の魔術師 3  

 着いて早々、何かの気配がして茂みに隠れた一行だったが・・・。
 ふらりと奥から進み出てきた2体のゾンビーを、「まさかアレにやられたわけでは・・・」と眺めていると、不意に地響きが起こった。

「な、な、なによこれ!?」
「・・・精霊たちが怯えてる・・・なんだろう?」
「シッ。みんな、静かに・・・・・・。何かでかいのが来る」

 ジーニやミナスを落ち着かせたエディンが、暗い木々の奥を真剣な眼差しで見透かすようにすると、巨大な「何か」がこちらに来るのが分かった。
 その正体を看破したアウロラが青褪める。 

「トロール・・・・・・」

 欲望の剣亭で得た情報は、杞憂ではなかったのだ。

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「もしやこれが以前にここに来た冒険者を殺したのですか!?」

 小声で推測を口にするアウロラに、誰も応じることはできなかった。
 トロールが先を歩いているゾンビーを無造作に捕まえ、その口へと運んだのである。
 気色の悪い咀嚼音に身を縮め、ひたすらトロールが過ぎ去るのを待つ。

 ・・・やがて、満腹になったトロールがゆっくりと山の上方へ去るのを見届けた”金狼の牙”たちは、隠れていた茂みからがさごそと出てきた。

「やり過ごせたようですね・・・。まさかトロールがいるとは・・・」
「冒険者たちを殺したのがあいつだとしても、ゾンビーの方はどうなるんだ?」

 アレクの疑問ももっともだ。

「関係ないでしょうね。死霊魔術を使うトロールなんているわけありません」
「アウロラの言うとおりだと思うわ。私の杖、ちっともトロールに反応してなかったもの」

 ジーニが小さな灰色の髑髏がついた杖を振り回しつつ言う。
 彼女の杖は、かつてゾンビーたちが溢れる洞窟において、魔力で隠された部屋から発見した死霊術士の杖だ。
 それに反応がないと言うことは、トロールとゾンビーが全く別件であると思って良いだろう。
 冒険者たちは、互いの顔を戸惑った目で見つめていたが、アウロラが「引き続き調査を続けましょう」と冷静に切り出し、のろのろと動き始めた。

「あいつとまた出会わないといいんだけどね・・・・・・」
「大丈夫だよ、ジーニ。来たら精霊たちが分かるから、僕が教えてあげる」
「そりゃどうも」

 一行は腐葉土に覆われた斜面を、滑らないように注意しながら登る。
 時折ミナスがその尖った耳を澄ませて、精霊たちに異常がないかを確認していく。
 不意にエディンがしゃがみこみ、とある木の根元に細剣を突っ込んだ。
 つられたようにギルもしゃがみ込んで、剣の先を見やる。

「防護の指輪が落ちてやがんな」
「前に紅き鷹旅団のアジトで見つけたのと同じ奴か?」
「そうだ」

 転がり出てきた銀の指輪は、コマンドワードを唱えると物理攻撃に対する防御力と、魔法に対する抵抗力を上昇させるアイテムだった。
 エディンが器用な指先でつまみ上げたが、眉間に皺を寄せて呟く。

「指輪に血がついてやがる・・・」
「暁の旅団は新米だと言うから、海鳴りの槌の物だろうか?」
「そうだな。価値が下がってるとはいえマジックアイテムだ。アレクの言うとおり、海鳴りの槌の誰かが落とした可能性が高いんじゃねえか」

 近づいたアレクが指輪の所有者を予想すると、ギルも傍らで同意した。
 指輪をベルトの隠しポケットに押し込むと、仲間を促してまた歩き始める。
 途中、落ちたら確実に命がなくなりそうな崖などもあり、冒険者たちはいっそう慎重な足取りで進んだ。
 欲望の剣亭で亭主に聞いた泉も見つけたが、まだまだ体力が余っていたので、休憩を取ることなく先を急ぐ。
 すると、唐突に採石場のような開けた場所にたどり着いた。

「あ、あいつこんな所に・・・・・・!」

 ミナスが指さした先、切り立った崖に埋もれるようにして存在する洞窟の前に、トロールが立っていた。

「まるで門番だな・・・」

ScreenShot_20130102_214227546.png

 やや呆れたようなギルの言葉に、エディンが頷きつつ様子を窺った。

「やつをぶっ殺さなけりゃ洞窟には入れそうにないな」
「正面切るより、絡め手を使うべきでしょうね。いつもの通りにやっちゃう?」
「・・・・・・そう、だな。補助魔法をかけてから【眠りの雲】をかけよう」

 ギルの決定に各々が準備をする。
 ミナスがスネグーロチカを、ジーニが新魔法である旋風の護りを召喚し、戦う姿勢が万全になると、おもむろにジーニが呪文を唱え始めた。

「『万物に宿る魔法の力よ、眠りをもたらせ』!」

 甘い匂いの誘眠性ガスがトロールを眠りへと陥らせる。
 同時に、得物を構えた他の仲間がトロールへと走り寄った。
 動くこともできず崩れ落ちたトロールに、ギルとエディンが深手を負わせ――最後に、アレクが新しい武器である黙示録の剣で止めを刺す。

「よっし、終わった!」
「・・・妙に使い心地がいいな、この剣は」

 幼馴染コンビがそれぞれ違った感想をもらす横で、エディンがこれ以上の罠がないかを確認したが見つからなかった。

「よし、入るぞ・・・」

2013/01/08 17:20 [edit]

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