Sun.

解放祭パランティア 2  

「目に付いた物で使えそうなのは・・・」

 仲間が迷子にならないよう、気を配りながら歩くエディンが視線を走らせる。
 とある露店の固まった所を指差し、一行はどれどれと覗き込んだ。
 アレクは三振りある中で、一番安い値の付けられている剣が妙に気になった。
 店主のおばちゃんに声をかけ、鞘から抜いて刃を確認させて貰う。

「デザインは今のものじゃないな。全く傷がないが・・・」
「そんじょそこらにはない業物だよ!新品と一緒にしないどくれ」

 肩をすくめたアレクの目に、ふと柄にぎっしりと彫られた文字が映った。

「・・・・・・ルーン文字に似てる。ア・・・ポカ・・・リプス?」
「なんだアレク、それが欲しいのか?」

 じっくり吟味してるアレクの横で、エディンが別の剣を手にとって調べている。
 彼の手にあるのは、繊細な装飾が施された見事な細剣で切れ味は良さそうに見える。

「確かに古代に作られたものらしい」

 店主の主張に頷きながら、エディンがギルに声をかけて、アレクと自分の調べた剣を購入した。

「あ、おい。いいのか?」
「お前は若いが、見る目は確かだと思うよ。俺が鑑定するまでもないだろう。それに・・・」

と言って、エディンがクスリと笑った。

「アレク、すごいもの欲しそうな目でこの剣を見てたからな。まるで一目惚れした女見てるみてえだった」
「・・・・・・!そ、そんな目はしてない!」
「あー、ハイハイ。じゃあ、そういうことにしてやるよ」

 最後の真っ白な剣は、一瞥もしない。アレが全く実用に耐えることもできない剣であると、持つまでもなく二人には分かっていたのだ。
 そのほかに、ギルのメインウェポンである斧も出品されていたのだが、それは首切り用の斧と分かり、ギルは残念そうにため息をついてから諦めた。
 途中、赤い髪の若い戦士から、「どうやら、同業者のようだな。どうだい?首尾は」と問われ、

「ぼちぼちだな。得ばかりとはいかないみたいだ」

とアレクが応える。

「そうか・・・。やっぱり一筋縄には行かないな。こっちは駄目さ。狙ってた短剣にろくなのが無くてな・・・」
「まだまだ、これからじゃないか。諦めずに探せばきっと見つかるよ」
「そうだな、ありがとよ!そっちも良い物が見つかるといいな」

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 エディンの励ましに顔を綻ばせた戦士と別れ、冒険者たちが緑のローブを着た老婆に話しかけようとした時、老婆は売り場の方をさっと指さした。
 見ると、年は10歳くらいの男の子が店の品物を持って逃げようとしている。

「あっ!」

 小さく声を上げたアウロラの横を、素早く少年がすり抜けた。

「へへっ!のろま!お前なんかに捕まるかよ!」
「待てコラ、クソガキ!」

 少年は捕らえようとする店主の手をかわし、今にも逃げ出そうとしている。
 しかし、少年が逃げ出そうとするより一瞬早く、冒険者たちの手が少年の体を捕らえた。

「クソッ・・・!!」
「ほいほい。手の中のやつ離せよ。・・・ほら、おっさん」

 エディンが襟を掴んだ少年から品物を取り戻し、店主に放り投げた。

「ああ・・・ありがてえ!」
「品物は返ったんだから、この子のことはこちらに任せていただけますか?」
「あ?そいつぁ構わないが・・・・・・」
「おい、アウロラ。ここじゃ商売の邪魔しちまう、こっちだ」

 冒険者たちは露店と露店の間にあるスペースに少年を引っ張ってきた。

「おい坊主、何で泥棒なんかしたんだ?」

 ギルが何の斟酌も無く、真っ直ぐ相手を見て尋ねた。
 少年は、気まずそうに目を伏せて言った。

「関係ねえだろ。余計なことしやがって!」

 むっとして口を引き結んだ幼馴染に代わり、アレクが発言した。

「余計なことじゃないぞ。お前が道に外れるのを止めてやったんだ」
「悪いこと・・・。道に外れる・・・・・・」

 少年の顔は恐ろしいものでも見たように青ざめたが、またすぐに元の表情に戻った。
 おやおや、とエディンは思った。
 おそらく、この子どもは生粋のスラム育ちではない。それにしては、まだ罪悪感が根を張りすぎている。
 何かの弾みで親が破産したか、捨てられたか――。

(ま、いずれにしても、俺の目の前でモグリに仕事はさせられねえが)
「お・・・俺は道から外れちまっても良いんだ!俺が神様に嫌われるのはどうってことないんだ!」

 これは何か事情があると察した冒険者たちは、互いに頷き合うと、少年の事情を最後まで聞いてみることにした。
 ギルの肩車から降りたミナスが、自分とさほど背丈の変わらない相手を説得する。

ScreenShot_20121230_224049781.png

「怖がらなくて良いよ。官憲には話さない。約束するよ。だから、事情を教えて?悪いようにはしないからさ」

 少年は近い年頃のミナスを見て安心したのか、罪の意識で緊張した顔をいくらか和らげ、ぽつりぽつりと事情を話し始めた。
 それによると父親は死去、母親は働くところが無く、少年と少年の妹はいつも空腹を抱えて過ごしているらしい。

「エミリはまだ何も分からないし、お腹すかせてると可哀相なんだ!」

 エミリとは、年の離れた彼の妹らしい。

「だから盗ったものをご飯に換えて、エミリにお腹一杯食べさせてやりたいんだ・・・」
「・・・・・・」

 ギルは難しい顔で考え込んでいる。
 リューンと言う大都市で貧富の差は顕著だ。たとえ此処で彼が少年に金を出したとしても、それは一時しのぎにしかならず、根本の解決にはならない。
 とりあえず、全ての事情を聞いた冒険者たちは、少年を解放してやることに決めた。
 ジーニが珍しく優しげな笑みを浮かべて、少年を諭す。

「もう、泥棒なんかしないで。泥棒したもので買った食糧だって分かったら、きっとエミリちゃんは悲しむわ」
「でも・・・だって・・・」
「・・・聖北教会に行け。あそこなら、きっとお前達を助けてくれるさ」

 エディンの発言に、少年のみならず仲間たちも大きく目を開いた。

「・・・・・・なんだよ、俺が教会の名前出しちゃいけないってのか?」
「いえ。貴方が言い出すとは思わなかったもので・・・失礼しました」
「あのな・・・・・・」

 エディンとアウロラのやり取りをほっといて、ミナスが教会の場所を少年に一所懸命説明している。
 少年は口の中で何度か「聖北教会、聖北教会」と呟いてから、冒険者たちにぺこりと頭を下げて去った。

「ふん、妹のためにかい・・・ガキのくせになかなか見込みがあるじゃないか」

 老婆が呟いた声が、噴水の水しぶきで濡れた石畳に落ちて、消えた。

2013/01/06 03:15 [edit]

category: 解放祭パランティア

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