Fri.
駆け抜ける風 4 
南の通路のほうを少し進むと、南北と西に続くT字路に着いた。
東側の壁に風車の回転扇の様な物がしっかりと設置されている。だが、回転扇は回っていない。
エディンが仕掛けのないことを確かめると、一行はまた南へ移動を始めた。
「・・・随分と古い物のようね」
石壁の所々に小さな亀裂が走っているのを目視しながら、ジーニが言う。
南の通路は北と同じ袋小路になっており、あちらと同じようなレバーと穴があった。
それをじっと見つめていたミナスが、小さく「あ」と声を上げた。
「どうした?」
「ギル、そこの穴、シルフの力がかすかに感じられるよ」
「穴の中に?」
エディンが調査した穴をギルが覗き込むが、暗いだけで何も分からない。
壁面にもう一度手を走らせていたエディンが、「さっきの回転扇・・・ひょっとして・・・」と呟いた。
「リーダー、ちょっとどいてくれるか」
「ん、分かった」
身を引いたギルを確かめたエディンは、がこんとレバーを下に動かした。
先が外と繋がっているのだろうか?周囲の空気が僅かに穴へと吸い込まれていくのが感じられた。
「思ったとおりだ・・・反対側に急いで戻るぞ!」
エディンの指示で、一行は慌てて歩いた道を戻っていく。
そして北の袋小路に着くと、エディンはためらいなくそのレバーを下ろした。
今度は、穴から勢いよく風が吹き出してきた。
「うわあ、シルフがすごい喜んでる!」
何もないはずの空間を、ミナスがきょろきょろと見渡して感嘆した。
それを和やかな目で眺めつつ、エディンが他の仲間に説明する。
「村人が、何らかの仕掛けがあって奥の鉄扉より先には進めない、って言ってたろ?」
「ああ」
「その仕掛けは、多分遺跡を駆け巡る風によって解かれるんじゃないか、と思うんだ。さっきの回転扇さ」
「扉と回転扇が、連動してるということですか?」
「おそらくはな」
説明をしながら風車の位置まで進むと、先ほどまでまったく動いていなかった回転扇が、南北に走る風によってくるくると回転している。
「やっぱりな。よし、西の通路に入ろう。これで何処かの仕掛けが動いているはずだ」
エディンが促し入った通路は、石造りの壁面が灯火によって照らされている。
暫く進むと、北の壁面に村人が言っていた鉄製の大扉、南の壁面に同じ素材らしい扉がある。
北の大扉はまだ開かないものの、南の扉は開くようで、エディンは罠を外す為にしばらく針金を微細に動かしていたが、頭を上げて、

「・・・よし、罠の解除に成功したぜ」
と報告した。
続けて鍵を開ける間、ミナスが用心のためにファハンを召喚する。
静かに扉を開けると、そこは石造りの小さな個室だった。
入ってきた扉以外に出入り口らしきものは見当たらない。奥には、風化した箱や樽などが乱雑に積まれている。
「あ、あれは無事のようですね?」
アウロラが指差したのは、風化してない2つの箱だった。
そっと近づいたエディンが、嫌な予感にとらわれ、触らないようじっと2つの箱を観察する。
「こっちの箱はミミックだ。近寄らないほうがいいぜ」
そう看破すると、もう一つの方の箱に近寄った。
罠と鍵を外すと、宝箱の中には魔術書が入っていた。
無言のエディンからそれを受け取ったジーニがぱらぱらとページをめくる。それは【駆け抜ける風】という遺失魔術らしい。
「周囲の空気を瞬間的に圧縮し、即座に敵単体に発射して転倒させるのね・・・。敏捷性に優れた術者ならともかく、あたしじゃちょっと宝の持ち腐れだわ」
「なら、こいつは臨時収入ってことだな」
魔術師の報告に頷いたギルは、西の通路の先に皆を促した。
すると途中にまた、回転扇が設置されている。
「さっきの大扉、多分、こいつに連動してるんだろうな・・・」
「そういうことなら、この先にレバーと穴がまたあるはずよね」
「ああ。しかし、その前に向こうの扉もちょっと見てみよう」
回転扇の少し離れたところにある鉄扉は、罠がないものの鍵がかけられていた。
外して中に入ると、最初に入った部屋よりももっと小さく、奥の壁にレバーが備えられている。
罠がないことを確かめた上で、エディンがレバーをまた動かした。・・・見た感じ、何かが変わったようには思えない。
「これ、なんなんだろ?」
首を傾げるミナスの横で、ジーニが顎に人差し指を当てたまま言った。
「今まで見たのと同じ素材のレバー・・・・・・多分、他の部屋の仕掛けと連動してるんじゃない?回転扇だけじゃ、ちょっと足りない気がするもの」
「2つ目の回転扇を動かすなら、南側のレバーは元に戻さなきゃならん。それだけでも、結構面倒なんだから十分だと思うんだがなあ」
理解しがたいと頭を振るギルを、杖の髑髏でジーニがつつく。
「きっとあんたより凝り性だったんでしょうよ。ほら、先に行きましょ」
東側の壁に風車の回転扇の様な物がしっかりと設置されている。だが、回転扇は回っていない。
エディンが仕掛けのないことを確かめると、一行はまた南へ移動を始めた。
「・・・随分と古い物のようね」
石壁の所々に小さな亀裂が走っているのを目視しながら、ジーニが言う。
南の通路は北と同じ袋小路になっており、あちらと同じようなレバーと穴があった。
それをじっと見つめていたミナスが、小さく「あ」と声を上げた。
「どうした?」
「ギル、そこの穴、シルフの力がかすかに感じられるよ」
「穴の中に?」
エディンが調査した穴をギルが覗き込むが、暗いだけで何も分からない。
壁面にもう一度手を走らせていたエディンが、「さっきの回転扇・・・ひょっとして・・・」と呟いた。
「リーダー、ちょっとどいてくれるか」
「ん、分かった」
身を引いたギルを確かめたエディンは、がこんとレバーを下に動かした。
先が外と繋がっているのだろうか?周囲の空気が僅かに穴へと吸い込まれていくのが感じられた。
「思ったとおりだ・・・反対側に急いで戻るぞ!」
エディンの指示で、一行は慌てて歩いた道を戻っていく。
そして北の袋小路に着くと、エディンはためらいなくそのレバーを下ろした。
今度は、穴から勢いよく風が吹き出してきた。
「うわあ、シルフがすごい喜んでる!」
何もないはずの空間を、ミナスがきょろきょろと見渡して感嘆した。
それを和やかな目で眺めつつ、エディンが他の仲間に説明する。
「村人が、何らかの仕掛けがあって奥の鉄扉より先には進めない、って言ってたろ?」
「ああ」
「その仕掛けは、多分遺跡を駆け巡る風によって解かれるんじゃないか、と思うんだ。さっきの回転扇さ」
「扉と回転扇が、連動してるということですか?」
「おそらくはな」
説明をしながら風車の位置まで進むと、先ほどまでまったく動いていなかった回転扇が、南北に走る風によってくるくると回転している。
「やっぱりな。よし、西の通路に入ろう。これで何処かの仕掛けが動いているはずだ」
エディンが促し入った通路は、石造りの壁面が灯火によって照らされている。
暫く進むと、北の壁面に村人が言っていた鉄製の大扉、南の壁面に同じ素材らしい扉がある。
北の大扉はまだ開かないものの、南の扉は開くようで、エディンは罠を外す為にしばらく針金を微細に動かしていたが、頭を上げて、

「・・・よし、罠の解除に成功したぜ」
と報告した。
続けて鍵を開ける間、ミナスが用心のためにファハンを召喚する。
静かに扉を開けると、そこは石造りの小さな個室だった。
入ってきた扉以外に出入り口らしきものは見当たらない。奥には、風化した箱や樽などが乱雑に積まれている。
「あ、あれは無事のようですね?」
アウロラが指差したのは、風化してない2つの箱だった。
そっと近づいたエディンが、嫌な予感にとらわれ、触らないようじっと2つの箱を観察する。
「こっちの箱はミミックだ。近寄らないほうがいいぜ」
そう看破すると、もう一つの方の箱に近寄った。
罠と鍵を外すと、宝箱の中には魔術書が入っていた。
無言のエディンからそれを受け取ったジーニがぱらぱらとページをめくる。それは【駆け抜ける風】という遺失魔術らしい。
「周囲の空気を瞬間的に圧縮し、即座に敵単体に発射して転倒させるのね・・・。敏捷性に優れた術者ならともかく、あたしじゃちょっと宝の持ち腐れだわ」
「なら、こいつは臨時収入ってことだな」
魔術師の報告に頷いたギルは、西の通路の先に皆を促した。
すると途中にまた、回転扇が設置されている。
「さっきの大扉、多分、こいつに連動してるんだろうな・・・」
「そういうことなら、この先にレバーと穴がまたあるはずよね」
「ああ。しかし、その前に向こうの扉もちょっと見てみよう」
回転扇の少し離れたところにある鉄扉は、罠がないものの鍵がかけられていた。
外して中に入ると、最初に入った部屋よりももっと小さく、奥の壁にレバーが備えられている。
罠がないことを確かめた上で、エディンがレバーをまた動かした。・・・見た感じ、何かが変わったようには思えない。
「これ、なんなんだろ?」
首を傾げるミナスの横で、ジーニが顎に人差し指を当てたまま言った。
「今まで見たのと同じ素材のレバー・・・・・・多分、他の部屋の仕掛けと連動してるんじゃない?回転扇だけじゃ、ちょっと足りない気がするもの」
「2つ目の回転扇を動かすなら、南側のレバーは元に戻さなきゃならん。それだけでも、結構面倒なんだから十分だと思うんだがなあ」
理解しがたいと頭を振るギルを、杖の髑髏でジーニがつつく。
「きっとあんたより凝り性だったんでしょうよ。ほら、先に行きましょ」
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