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Wed.

見知らぬ仲間その5  

 迷宮と化した、いくつかの小部屋に分かれた地下室――。
 無意味な行き止まりや、力任せに崩されたと思しき壁――。
 それらを目にする前から、ここに住まう”獣”の異質さや危険性は感じていたはずだったのだ。
 だが、推測はただ推測でしかない。

「何だってんだ、この咆哮とプレッシャーは……!」

 こちらへと一心不乱に向かってくる”獣”の気配に、ロンドの皮膚が粟立っていた。
 遺跡に入る以前から異常を感じ取っていたミカはといえば、すでに顔は蒼白になっており、身に着けた装身具の魔力展開を怠った途端に気絶しそうな有様であった。
 シシリーが仲間を庇うように立ち位置を変えながら、さらに下がるよう指示する。
 短く息を続けるミカは、そんなリーダーの姿を知覚することもなく、隣に立つウィルバーへ確認をした。

「魔界よりもなお死に近い、冥界からの――正確に気づいて――いたんですか?」
「薄々は。あの魔方陣。そして手記がありましたのでね。……あなたも、そして私たちも。一度近いものに接していましたし」

 ただ、前回は退けることができたが、今回の”獣”は――実力的に自分たちの遥か上にある。
 すでに長剣を抜いているシシリーが、呻くかのごとく言った。

「分かっているのなら焦らさないで。教えてちょうだい」
「亡者を食らう三つ首の犬、ケルベロス――以前に幽霊列車で対峙したヘルハウンドの、上位種に当たります」
「地獄の番犬ですって――っ!?」

 冒険者たちの応酬の最中、”獣”はけたたましい音を立てて部屋の一部を壊し、その姿を現した。

ScreenShot_20180307_162645234.png

 血の赤と、地獄の瘴気の緑に覆われている黒い異形の獣。
 三つの首が、別々の動きでやっと入り込んできた餌を見据えている。

「伝説上の生物だと思っていたのに……」
「いや、本来はその通りですよ?」

 沈着な態度を崩さず――精一杯の矜持と年下の仲間たちへの責任感でもって、必死に作っている仮面ではあるのだが――ウィルバーは後輩魔術師への講義を続ける。

「ですが、禁呪中の禁呪で召喚が可能です。魔導協会で悪魔と交戦した詳細を賢者の塔にて証言し終わった後、今後の参考にと思って禁書庫で魔術書を読んだんです」
「あのガウスと戦った時のですか?」
「今後もああいう手強い敵が出てこないとは限りませんのでね。案の定、あの手記の持ち主は実行していたわけです」
「というか、ウィルバーさん!敵の正体に気づいてたんなら、早く言ってくれよ!」
「すいません。こちらにも色々事情がありまして」

 誰よりも気配に聡いアンジェが、腕輪からワイヤーウィップを抜きつつ注意を促した。

「ちょっとみんな、無駄口叩いてる暇はないよ!」
「ぐ、ぐう……っ!!」
「あああああっっ!」

 ケルベロスがそこに”存在”するだけで、旗を掲げる爪の面々の、身体と魂の拒絶反応が起きようとする。
 上の死体は、地下に封印しただけで至近に留まっていたために、この拒絶反応がごく緩やかに行われ続け、やがて魂のすべてが身体から剥がれてしまったのだ。
 効果を顕著にしようと、地獄の番犬が咆哮する直前――素早く印を編んだミカが、薄紅色の花びらで味方を覆いつくし、さらにウィルバーがそよ風のベールを被せた。
 2人の魔法使いによる結界の作成である。

「これで少しは楽になった筈です。さあ、一旦逃げましょう!」
「に、逃げるって……おっちゃん、これからどーすんの!?」
「こちらへ、作戦があります!」

 その場に崩れ落ちてしまいたい衝動を堪えて、他の者たちが参謀の示すほうへ走り出す。
 走り抜かされて、先頭からあっという間に真ん中から後ろのほうになりながら、ウィルバーは作戦の説明を始めた。

「この地下がケルベロスを出さないよう、迷宮のようになっているのには気づきましたか?」
「面倒な場所だっていうのは理解しているわ」
「私とミカの二重結界を纏っていても、正面から挑んでいい相手ではありません。そこで、この杖の出番です」
「そう言えば、手記にこの杖で獣を封印したって書いてあったね……。これを使って、またあれを封印するの?」
「はあ!?封印!?そんなのは反対だ、あれは俺がブッ倒すんだからな!」
「2人とも、早とちりしないように。私の作戦は、この杖を使ってケルベロスを弱体化させ、そこを討つという作戦です」

 封印の杖に込められた魔力総量は、それほど多くはない。
 そのため、永続的な封印を施すことは不可能なのだが――一時的な弱体化に留めればいいのであれば、封印の力でケルベロスの四方を囲ってしまえば、十分用は足せるのだ。
 アンジェがぼそりと消極的な案を出す。

「壁にあいつを追い詰めて、二方向に杖の力を使えば手っ取り早いんじゃない?」
「その形では無理ですよ。杖の力がケルベロスに負けてしまいます」
「……その方法しか無さそうね。注意しないとならないのは、相手も私たちを狙って動くだろうってことだけど」
「私たちの方がケルベロスに捕捉されないように、ですね」

 シシリーの言葉に頷いたミカは、後方のけたたましい轟音に、いくらか血の色を取り戻している顔を顰めた。

「あれはどうやら、壁を突き破ってくるみたいですね」
「だが、主よ。それはこちらにとっても好都合だ。移動可能な道が増えるのだから……いっそ、ある程度は壁を破壊させてから封印作業に移るほうが良くないか」
「そうですね、ナイトの言うとおりです……杖の具合からすると、十回弱が使用制限といったところですかね」
「リスクが高そうね。ケルベロスと鉢合わせしたら、その場で戦闘開始なんでしょ?」

 己の腰のベルトにがっちり固定していた棒杖から視線を外し、暗い地下室で、ほのかな明かりにより金に輝く頭髪を見やったウィルバーは、

「ええ。ですが他に道はない……頼みましたよ、リーダー。あなたにこの命を預けます」

と声をかけた。

「最善を尽くすわ。それじゃ――行くわよ、皆!」

 その号令から後は、まさに命懸けであった。
 近づくだけで身体から精気を抜かれそうになるのを堪えながら、足は止まることなく、シシリーの指定したポイントで杖の魔力を開放する。
 一度だけケルベロスに追いつかれそうになったものの、辛うじてナイトの召喚した雪の馬が囮となり、事なきを得た。
 異形の気配に冷や汗を掻きつつ、最後の封印を行うと――。

「よし、後はタコ殴りだ!」

 杖の色と同じ、青みがかった灰色の結界に囚われた大きな敵へ、あらゆる支援魔法を唱え終わった冒険者たちが挑む。


「グウウウゥゥゥゥ……!」
「力を封じられたことにお怒りのようだな……」
「面白ぇ……!全力でかかって来いよ、ワン公!」

 弱体化の結界に閉じ込められていながら、ケルベロスはなお猛々しく咆哮し、首の一つから炎のブレスと毒のブレスを同時に冒険者たちへ吐いた。
 すでに相手と接近戦を挑もうとしていたロンドやアンジェ、後方で魔法展開を始めていたウィルバーとミカがブレス範囲に巻き込まれる。

「そう来るとは……思っていましたよっ!」

 ウィルバーの【海の呼び声】の杖に蓄えられていた死霊術の回路が開き、毒に犯されていた前衛たちを癒す。
 ミカは【喜びの緑】の使用によって、自身の中にある毒を浄化していった。
 ブレスを吐くために開いた大きな口へ、アンジェの鋼の糸が飛び込み蹂躙する。

「ウグルァアアアアア!」
「気に食わなかったって!」
「そうかい、じゃあこっちはどうだ!?」

 ロンドが曲刀を抜き放ち、半月を描く太刀筋で己の数倍もあろうかという巨体へ、大気を震わせながら傷をつけていく。
 精霊であるスピカやランプさん、妖精ムルも戦場を飛び交い、ケルベロスの攻撃をあらぬ方角へ逸らしたり、一行の怪我人の血を癒しの魔法により止めた。
 動くことのできない鉱精ユークレースも、ロンドの右腕に深く穿たれた牙の痕を薄めるようにして魔力を働かせている。
 それだけの回復手段がありながらも、なおパーティの傷は治りきらない。
 わき腹に爪で深手を負ったアンジェを下がらせ、ミカは【癒優の法】で治療した。

「大丈夫ですか、すぐ治しますから…」
「だいじょぶ、兄ちゃんのあんな出鱈目な姿見たら、無理とは言えないじゃん……」

 2人の女性の目前では、ロンドが火を吐こうとして位置の下がったケルベロスの頭にまず体当たりをぶちかまし、今度は【漣の拳】で無数の拳打を放っている。
 ケルベロスの炎の属性を押さえ込もうと、【凍て付く月】の魔法を唱えていたウィルバーが、詠唱はそのままに、呆れたように首を振る。
 海の眷属の秘宝に集まった氷の強大な魔力を、ロンドが犬の足に蹴飛ばされて転がっていくのと同時に解き放つと、異形の敵の身体の一部が、あまりの低温に壊死して崩れ落ち始めた。

「ええええい!!」

 気合声と共に切り込んでいったシシリーの剣先が二重にぶれ――惚れ惚れするような弧を描き、毒のブレスを吐こうともたげていた頭を額から断ち割った。
 余裕で避けられるだろうと甘く見ていたケルベロスは、陽炎のように剣閃が二つに分かれる彼女の技に、うかうか騙されてしまったのである。
 怒りに任せて三つ目の首が、今度は雷のブレスを吐こうとしたのだが、その前に風の精霊たちに守られた戦士が立ちはだかった。

ScreenShot_20180307_165509150.png

「天のものは天へ、地のものは地へ、そして冥界のものは――冥界に、去れ!」

 【天地魔境陣】――幽体をも切り裂く無数の刃は、ケルベロスへ明らかに致命傷と分かる傷を負わせた。
 あれほど圧倒的な威圧感を放っていた異形の身体が、ついに地へ伏せる。

「ゼェッ……ゼェッ……」
「はーっ、はーっ……」

 まったく同じ拍子で呼吸していたシシリーとロンドは、声を出すのも億劫だったために、無言のまま親指を立てあった。
 やっと動いても支障のない程度まで回復してもらったアンジェが、ワイヤーを収容しながら額の汗を拭う。

「竜どころか、ケルベロスまで倒すことになるなんて……人生、というかホビット生、生きてみるものだね」
「まあ……何とかなりましたね。早くこの場を離れましょう。先ほどから、実は瘴気で鼻が――」

 曲がりそうだ、と続けるはずだったウィルバーの言葉は、喉の奥に飲み込まれてしまった。
 ズズン……ッという、大掛かりな振動が今いる空間を揺らしたからである。
 精神がないためあまり動じないナイトと、リーダーとして素早く状況判断をしようとしたシシリーの目が合う。

「何だ――地震か?」
「それにしては、少し変な振動じゃないかしら……」

 顎に指をやったウィルバーが、眉根を寄せて考え込んだ。

「地震ではない……なら……まずいっ!」
「おっちゃん?」
「皆、早くここから逃げましょう、天井が崩れます!!」
「なっ……」

 ウィルバーは目を剥いたロンドの腕を掴む。

「壁を破壊し過ぎました。天井への支えがなくなったんです、このままだと地下は潰れて崩壊しますよ!」
「そういうことなら、さっさと出ませんと!」
「まったくだよ。生き残ったと思ったら圧死なんて、笑い話にもなりゃしない」
「よし……動けない人はいないわね?走るわよ!」

 的確なシシリーの先導で上への階段を見つけ出した一行は、地下に降りる時ですら長いと感じた空間を、いつ天井が落ちるかひやひやしながら駆け上がっていく。
 懸命に動かしていた足が、崩れた壁の一部に引っかかり、ミカはひざをついて転びそうになった。
 後ろから来ていたナイトが、すかさず彼女の身体を支える。

「ハァッ、ハァッ……な、何ですか、この無駄に長い階段は……!」
「主よ、文句を言う暇はない。走れるか?」
「ええ、あと少しですから――」

 ようやく先がうっすら見えてきた所で、旗を掲げる爪の耳を劈いたのは――紛れもなくケルベロスの咆哮だった。

「あれってまだ死んでないのですか!?」

 足が震え始めたミカを元気付けようと、アンジェが肩をそびやかすが、どう見ても虚勢にしか見えない。

「……ふ、ふん。あの傷じゃ、天井が崩落した時に命を落とすよ、ミカ」
「そ、そうですよね……。全く、あの死に損ない……びっくりさせてくれます。さあ、早く階段を上りましょう」
「……。いえ、お待ちを」
「ウィルバー?」

 小脇に杖を抱えた状態で走っていたウィルバーが、階段の下方を見て足を止めた。

「あのケルベロスが吐き出していたブレス――覚えていますか」
「毒と火と雷だろ。あれだけ食らってれば、忘れっこないぜ」
「それです。毒のブレスはともかく、炎と雷のブレスが、この一方向にしか逃げ口のない狭い通路で吐かれてしまったら……」

 先ほど、ミカが崩れつつある瓦礫に躓いたくらいなのだ。
 もしそんな高エネルギーのブレスがいっぺんにこの場へ流れ込んできたら、冒険者たちが出口へたどり着く前に、たちまち崩れる通路の下敷きになりかねない。
 運が悪ければ、階段ごとまた地下の階へ落っこちて怪我を負った上で、望まぬ再会をケルベロスと果たす羽目になるだろう。
 いや、よしんば通路の崩壊を逃れたとしても、この場でナイトを除く全員が黒焦げに炭化するのは間違いないだろう。

「………いやいやいやいやいや。駄目じゃん、それものすごくヤバイよね?」

 残像を残す勢いで首を横に振ったアンジェが言うのへ、ウィルバーは重々しく同意した。

「どうにかしようと思うのなら、階下に速やかに戻り、ケルベロスへ止めを刺してくる必要があります」
「そんな、ここはいつ崩壊するのか分からないのに!?駄目よ!!」
「シシリー」

 焦るリーダーの肩に、ぽん、と置かれた分厚い手は、ロンドのものであった。
 彼はその手で今度は階上を示し、

「早く、他の仲間を連れて行け。俺が一人で行ってくる」

と指示した。

「ロ、ロンド!?」
「止めを刺すんなら、力のある俺が一番適任だろ。いやあ、あんなすごいのともう一回戦えるんだから、誰にも絶対譲らないぞ」
「いやいやいやいやいや、兄ちゃんだけじゃ無理。行かせられない。瓦礫が降ってくる中で、止めを刺した後に逃げようとしたら、地形が変わって帰り道が分かんなくなるのが落ちだよ。……仕方ない、あたしも残るかあ」
「ちょっと、2人とも何を……!?」
「シシリー、お前には他にやることがある。俺たちが上手くやれるよう神様に祈るのは、お前の独壇場だろ?」
「そうそう、こういう仕事は任せてよ、姉ちゃん。時間があんまりないから、早く命じてくれない?」
「お前がいるから、俺たちはパーティなんだろ。だから信じて上で待ってろ」

 ロンドの藪睨みのような目と、アンジェのどんぐり眼が、ひたむきにシシリーの春の海の瞳を射抜く。
 シシリーは、重々しい音を立てて背後に天井の破片が落ちてきたのを、どこか他人事のように感じながら、家族同然の2人の顔を見やった。

ScreenShot_20180307_175520660.png

「……分かったわ。二人共、頼むわね。でも、一つだけ条件を」

 必ず生きて戻って来いというシシリーの条件付けに、気負うことなく笑って頷いた小柄なホビットと大柄過ぎる少年は、一心不乱に瓦礫を叩き落しつつ、階段近くまで這って移動してきていた地獄の番犬へ近づいた。
 息も絶え絶えといった様子ながら、ウィルバーの推測どおり、少しずつブレスを吐くための予備動作を始めている。
 落っこちてきた一際大きな瓦礫を、ネット状に広げた鋼糸で受け止めて弾くと、アンジェはそのまま糸を漂わせて、ロンドの身体に這わせた。
 アドロードの【漂う糸】の技術――鎧のように強固なそれは、どんなダメージからも短時間なら、彼の身体を守ってくれるはずのものである。

「兄ちゃん、行って!!」
「よしっ……お前、覚悟しやがれ!!」

 ロンドは真正面から、葬送の力を纏ったスコップを振り上げた――。

「ラアアアアアアアアアッ!!」

 後年――彼の一撃の様子を唯一見守っていたアンジェは、まるで食人鬼も脅かすような叫び声であったと語るが――。
 実に百年以上の長きに渡って封鎖され続けてきた禁忌の森の、誰にも知られることのなかった人間失踪の原因は、この雄たけびをもって処理されたのである。

 ここから語るべきことは、そう多くはない。
 ケルベロスの瘴気であった森の霧がすっかり晴れると、ウィルバーは仲間たちを伴って、一際霧の濃かった地点へと移動した。
 木陰に倒れ伏している身体を見て、驚かずにいたのは、この参謀と、途中から敵の正体が分かったことで事態を理解したミカだけである。
 見慣れた金色の髪に縁取られた顔は、まごうことなくシシリーその人だった。

「ど、どういう事、これ……!?あそこにいる姉ちゃんは一体……!?」
「そんなに動揺しなくても大丈夫ですよ。いやね、ここにいるリーダーも、あそこにいるリーダーも本物なんです。ただ、魂と肉体が分離した状態でして」
「途中から分かりましたよ。幽霊列車の中では、私が死霊術に組み込まれた魂の状態で皆さんと冒険していた。今度はシシリーさんが、その立場にあったんですね?」
「さすが理解が早い、その通りです。魂だけなんですから、腕の傷やかぎ裂きが消えるのも道理ですね」

 ウィルバーの持つ【海の呼び声】の紫の宝玉がぬらりと光り、遺跡から一緒に逃げてきた方のシシリーを示す。

「つまり――ここにいるシシリーの方が魂なんです。これがドッペルゲンガー現象というものですよ。いやはや、珍しいものに立ち会えましたね」

 どこか熱に浮かれたようなウィルバーに、冷静なナイトが発言の指摘をした。

「……確か、死期の近い人間がもう一人の自分を見る事象だな。私には関係なさそうだが」
「まさにそれです。あれは、人間の死期が近いゆえに、魂と体が分離して起こるものです。今回は、ケルベロスが死期の代わりを務めた――と言えばいいでしょう」

 アドマールの失踪した子供たちも、同じ原理でいなくなったのだろう。
 子供たちも魂だけが森から親元へ一度帰り――肉体だけが森に残った。
 数日後に肉体から分離した魂が、この世に留まり続ける力をなくして天に召され、森に存在していた肉体は、増水した川によってアドマール領まで運ばれて発見される。
 未だにシシリーが魂だけの状態でいれば、同じことが起こってしまうが――。

「あれ、じゃあ、アキアさんて人はどうなるわけ?」
「今朝方に行方が知れないと、使用人のほうのスピカさんが仰ってました」
「つまり、もう……」
「彼女はすでに亡くなっていると、私は思います」

 子供たちが死亡したことで、生きる力が弱まっていたのもあったのかもしれない。
 だが、シシリーは頑健な冒険者であり、今までの峻烈な体験で精神的にも鍛え上げられてきた。
 だからこそ、まだ間に合うのだ。

「肉体さえ生きていれば、元に戻れます。もう冥界に引き込もうとする存在もないですから、大丈夫でしょう」
「え、でも、どうしたら……」
「自分の身体に触れてみればいいんですよ。さあ、シシリー」

 シシリーは、しばらく戸惑っていたが――やがて、木陰で倒れている自分の身体へと歩み寄っていく。
 そしてゆっくりと、自分の身体に手を伸ばした。

※収入:報酬2500sp、≪コカの葉≫、≪錆びたナイフ≫×4、≪ユハトの薬≫×7
※支出:
※その他:
※カリン様作、見知らぬ仲間クリア!
--------------------------------------------------------
69回目のお仕事は、カリンさんの見知らぬ仲間です。
高レベル依頼ではゴリゴリとプレイし甲斐のあるごつい冒険と、シリアスでいかにもな仲間内の会話を詰め込んでくれるカリンさんのシナリオですが、これも相当すごかった!
見知らぬ仲間は、金狼の牙連載時に入っていたリクエストだったのですが、当時の私が当該シナリオを持っておらず、消化しきれないままに連載が終わってしまい、非常に悔やんでいたものです。
ですが、それから年月が経ち、カリンさんがカードワースに復帰してシナリオを再アップして下さったおかげで、旗を掲げる爪の方でプレイが可能となりました。
以前にリクエストを下さった堀内さん、シナリオ作者であるカリンさん、お二方に無限の感謝を込めてお礼を申し上げます。
まことにありがとうございました!

このシナリオは、ラスボスがラスボスだっただけに、クロスオーバーはしていないのですが、「くろがねのファンタズマ(吹雪様作)」に(私なりに)なるべく濃く絡めてリプレイを書かせていただきました。
魂を抜かれる対象としてはリーダー限定なのですが、同じような体験をしてきたミカが、この現象にまったく気づかないのも違和感バリバリだったので、彼女にも参謀の台詞をところどころ肩代わりしてもらったり、シナリオにない台詞で反応してもらったりしております。
プレイヤーとしては、うちのリーダーときたら「花の下(むー様作)」や「水底の棺(春野りこ様作)」に飽き足らず、常に死の方向性を見つめているなあと、妙な方向に感心しました。聖職者らしいと言えば言える……のか?
何か違う気がします……とりあえず、勝手にクロスしたのは以下の通り。

森の主オウスラとの戦い=vip_de_yare様の黄昏の森の妖魔
湖城の後で引き受けた黒竜退治=梨野様の凍える湖城と作者名様の分からない20の命を持つ黒龍
商業都市レンドルの事件=イーグル様の霧を抱く…
鏡の魔物によって成り代わりをされた=つちくれ様のThrough the hole
幽霊列車における冒険=吹雪様のくろがねのファンタズマ
こないだのレイド・クラウン=机庭球様の新人と私
魔導協会で悪魔と交戦した=RE様の緊急の依頼にて

今回のリプレイの中で、後から慌てて書き加えたのは、リーダーの召喚枠に入っている精霊たちの動向です。
シシリーの場合は、いなくなる直前にスピカたちを仲間に託したので、魂が抜き取られる現場を目撃するに至らなかった……と処理しましたが、他の方であれば、どんな風にお書きになるのか興味が尽きません。
最後の瓦礫排除については、これから初めてチャレンジしようというプレイヤーさんがおられるのであれば、攻撃用の召喚獣は外したほうが宜しいかと。
……はい、ムルで一度、痛い目を見ました。やり直しました。
次回はどうしようかな……久々に少人数シナリオとか消化しようかな……。

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

2018/03/07 19:12 [edit]

category: 見知らぬ仲間

tb: --   cm: 2

コメント

どうもお久し振りとなります、堀内です
以前のリクエストに応えていただいてありがとうございました
コメントは残せませんでしたが新リプレイも拝見させて貰っています

このシナリオ、パーティ内の掛け合いもいいんですが、
やはり目玉はラストのケルベロス戦でしょう
このアイテムで弱体化させないと倒せないよ、と救済はあっても
パズル要素あり、アイテムの回数制限ありで思うように行かない
そして倒してもまだひと波乱ありの最後まで気が抜けない展開
攻撃系召喚獣が誤爆して困るのは人質だけではなかった
それだけに終わった後の開放感もひとしお…

URL | 堀内 #vD0NMIH2 | 2018/03/20 22:57 | edit

コメントありがとうございます!

>堀内さんへ

お久しぶりです、堀内さん!
数年越しのリクエスト消化で、大変お待たせしてしまい申し訳ありません。
ケルベロスの封印、私は最初、自力であちらこちらに行って失敗しやり直ししてましたが、後でリードミーを読んで、世の中には頭の良い方が多くいらっしゃるんだなぁと感心しました。
あのシナリオ、本当に開放感や達成感が怒涛のごとく押し寄せてくれる、いいシナリオですね。推挙してくださってありがとうございます。

人質状態のNPCがいると分かってる時は外せるんですが、そうじゃない時にやらかしてしまうこともあり、セーブポイントって本当に大事だと思い知りました。

URL | Leeffes #zVt1N9oU | 2018/03/28 14:06 | edit

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