Thu.

死者の村へ・・・ 1  

「こないだのオデッサ村の冒険は、大変でしたね」
「そうだなあ。ルーシー、元気で研究続けてるといいんだが」

 太陽は沈み、街で生活する人々は仕事を終えて一杯やっていようかという時刻。
 狼の隠れ家でも杯を交わす者たちや怪しげな会話に興じる者たちでもり上がっていた。

 ギイィ・・・という音がして。

 酒場の喧騒の中に1人の男が入ってきた。
 ゴツイ鎧を身にまとった男は、神経質そうな顔つきで辺りを見まわし、酒場の一角を占拠していた”金狼の牙”たちを見つけると声をかけてきた。

「お楽しみの所、失礼します」

 声をかけてきたのは、冒険者たちとは顔見知りの、聖戦士ラインだった。

「あ、ラインさんじゃない。こんな時間にどうしたの?」

 アルコールではなく木苺のジュースの杯を抱えたミナスが、深刻そうな顔つきをしたラインとは裏腹に、陽気な口調で問いかけた。

「じつは先日お話した通り、アラン村に軍勢を派遣する事が決定しました。ついては、貴方がたにも協力をして頂きたいと思いまして・・・・・・・・・」

 ラインの言葉を聞くと、冒険者たちの酔いは急激にさめていった。
 それは死者の村と化したアラン村への出兵協力の要請だったからだ。

 アラン村――。
 ”金狼の牙”たちは、消息を絶った聖戦士団の行方を探していた時、倒したはずの死霊術士・ボルラスがアンデットと化して存在し、村を丸ごとアンデット化するという事件に遭遇した。
 その村へ教会は軍勢を派遣することを計画し、彼らもそれに協力することを約束したのだ。

 ラインは低い声音で話を続ける。

「明日の早朝、聖北教会からも派遣部隊が出発します」
「明日、か・・・」

 静かに酒杯を机上に置いたギルの呟きに、ラインが応じる。

「なにぶん急な決定なので、貴方がたにも迷惑な話とは思うのですが・・・・・・。協力していただけますか?」
「分った、協力しよう」

 何しろ、短い間とはいえ行動を共にした神官戦士のフリッツをゾンビにされた怒りがある。
 ボルラスをしっかりと討っておかなかった自分達の責任だ、と思っていたのだ。雪辱は晴らさねばならない。
 アレクが頷く。

ScreenShot_20121215_020856625.png

「確かに戦力が集まるまで出兵を躊躇していたら、あの地方はゾンビーだらけ・・・・・・。なんて事にもなりかねないもんな」
「ありがとうございます。アラン村周辺の住民には避難をするよう指導していますが、時間をあければ戦力が補強されるのは向こうも同じですからね」

 首領であるボルラスの術は、そこに死体さえあれば、際限なく手ごまを増やすことができる。
 ボルラスに、これ以上罪なき人間の屍を利用させるのは嫌だった。

「話は了解したよ。じゃあとりあえず明日の早朝、教会の方に出向けばいい?」

 くりんとした藍色の瞳をラインに向け、ミナスが言う。

「そうです。明日の早朝においでくだされば結構です・・・・・・。それでは明日の準備もありますので私はこれで失礼します」

 聖戦士ラインは冒険者達に協力の約束を取りつけると酒場を出ていった。
 彼の背中を見送り終わったギルが、仲間を見渡して口を開いた。

「それじゃあ明日は早くに出なければならないから、もう休もうか」

 ”金狼の牙”たちは明日の朝が早いことを考え、早めに睡眠をとることにした。

2013/01/03 02:14 [edit]

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