Sun.

主なき人形 4  

 一度、オデッサ炭鉱に入った一行だったが、ゴーレムに仕込まれているコアが光り出し、ルーシーが叫んだことで退却を余儀なくされた。

「間違いない、自己再生型のゴーレムだわ!掘削用の割には随分と質の高いコアを使ってるわね!」
「・・・困ったな。あれを倒すにはどうすればいいんだ?」

 エディンのぼやきに、ルーシーが答える。

「そうね、やっぱりコアをゴーレムから奪取するしか方法はないわ」
「・・・奪取、か。気楽に言ってくれるぜ」

ScreenShot_20121210_163228328.png

 悪態をついたギルだったが、他に方法もない。
 ゴーレムの一撃を受けたジーニが気絶していることもあり、一行は酒場に戻ることにした。
 ジーニの回復をアウロラとミナスに任せ、ゴーレムからコアを奪取するイメージトレーニングをしていたエディンだったが、村長兼酒場の主人である青年が身につけている首飾りに興味を抱いた。

「・・・ん、綺麗な首飾りだな」
「・・・これですか?これは私の父の形見でして、肌身離さず持っているのです」
「親を敬うこと篤し、だな。どこかの誰かに見習ってほしいところだ」

 からかうようなギルの言に、ルーシーが不機嫌そうに「聞こえてるわよ」と彼の肩をつついた。
 やがて意識を取り戻したジーニが、ゴーレム起動と停止のコマンドワードが、イアンの庵にあるのではないか、と言い出した。

「ありえない話ではない。先の≪蒼石の指輪≫もそうだが、魔法の品は合言葉が決まっていることが多い。ゴーレムも例外ではなかったはずだ」

 アレクが、元冒険者である父母に教わった知識でジーニを援護する。
 結局、それならイアンの家に寄ってから炭鉱に行こう、ということになった。

 青年に教わった場所に建つその小屋は、みすぼらしくはないものの小さなものだった。
 しかし、窓の傍に花瓶が据えてある等、誰かによって管理されているのが窺えた。 
 死後も惜しまれる人格者だったのだろう、魔術師にしては珍しいケースである。
 興奮した様子を隠しきれないルーシーが、

「きっとゴーレムに関するものすごい蔵書があるんだわ」

と、本棚に並ぶ書物の背に書かれた文字を追っている。
 ふと、その顔が困惑した態になった。

「おかしいわ。ちょっと眺めただけだけど、ゴーレム関連の書籍がまったく見当たらないなんて」
「・・・確かにそれは妙ね」

 同じように本棚の書物を調べていたジーニが言う。この小屋を詳しく調査する必要があるかもしれないと、彼女は鋭い目線を辺りに這わせた。

「・・・ここだけ床の色が濃い。元は何かがあったと考えるべきでしょうね」
「・・・とすれば、本棚。ゴーレム関連の書籍が入っていたものかしら」
「・・・恐らくは」

 ジーニとルーシーは顔を見合わせ、膝のほこりを払った。
 その時、エディンがふと気になった寝台の隙間に手を突っ込んだ。

「何してるんだよ、エディン」
「ここに何か挟まってる・・・ほら、日記じゃないか?」

 そして古びた皮の表紙の本を取り出し、その中を改める。

「・・・この本の文面、古代文字のようだな。解読できればいいが」
「やってみましょう。貸してちょうだい」

 エディンから本を受け取ると、ジーニは慣れた手つきでページをめくり、その複雑に絡み合った綴りを細い指先で追っていった。

「『ここには日記の類を記す。わざわざ古代語で書くのは、読まれると恥ずかしいと感じる私の浅はかな感情によるものだ。』・・・村にやってきた経緯が書いてあるわ」
「あのゴーレムについて、何か書き残してないか?」
「ちょっと待ってね、もう少し進んでみる」

 旅の途中で負傷し、オデッサ村の前で気を失ったという魔術師イアンの述懐を斜め読みしたジーニは、次第に彼が村長である例の青年に、家族のような情を感じていた事を読み解いていった。
 世擦れた魔術師に、この村の人々は純朴な好意を向けたものらしい。
 その恩に報いるため、あの掘削用ゴーレムを開発したのだという。

「えーと。『今は私の魔力で動かしているが、制御用のアーティファクトをあの青年に渡した。いずれ種明かしをしよう。青年は喜んでくれるだろうか?』・・・・・・ってあれ?」
「アーティファクト?知らずに持ってるのか、あの村長」

 ジーニの読解に、エディンは首を捻った。そしてその後、続けられたジーニの朗読に、黒いたれ目に緊張をみなぎらせることになる。

「『アーティファクトには青い宝石を使った首飾りをあつらえた。あれはいずれ、この村の繁栄の象徴となるだろう。』だって。後日、ゴーレムを買い取りしたいって堀削業者がいたらしいけど、一蹴してるようね。ずいぶんとあの青年に肩入れしてること」
「青い宝石・・・首飾り・・・」

 エディンの脳裏に、かの青年とその首飾りが浮かび上がる。ジーニが続けて読んでくれた業者のくだりに、とある推理が固まりかけたが、それをこのまま突きつけても恐らく認めはしないだろう。
 隙を突く必要がある。
 エディンは、「炭鉱に行こう」と短く言うに留めた。

2012/12/30 13:03 [edit]

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