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 男は――いや、ダーフィットは、人気のない墓地の中で、つい数時間ほど前に行なった凶行を思い返していた。
 ただの野鍛冶だった自分が、なぜリューンという都会の治安を担う組織に属する人間を、ああまで多く殺すことが出来たのか、未だに良く分からない。
 だが、あのモルナロヴァという魔術師に渡されて以来、ずっと使ってきたナイフを握っていると、不思議と相手のどこを刺し、刻み、切り裂けば良いのか、本能的に腕が動くのである。
 血盗りナイフ、と個人的に呼んでいるそれは、非力な魔術師でも人体を刻めるよう『魔法で切る』術式が篭められていた。
 白銀の刀身に走るいくつかの溝が血をすすり上げ、切りつけられた対象が血を流し続ける仕組みになっているのである。
 ナイフが啜ってくれた数多くの犠牲者の血は、今までずっとマルガレッタに与え続けてきた。
 だから、今回の採血でも――マルガレッタに飲ませてある。
 冒険者に勝てるかどうか、ダーフィットには甚だ自信がなかった。
 何しろ、噂が本当なら、相手は竜をも倒すほどの人材なのである。
 まともに戦えば――とてもじゃないが、自分が生き残れるとは思えない。
 せめてこの子だけでも逃げられるようにと、ナイフからカップに注いだ赤を、しっかり飲むように姪へ言い聞かせ実行したのだ。

(冒険者――≪狼の隠れ家≫の――。)

 ダーフィットは、魔術師が捕まる少し前に訪れた例の店で、自分の近くに座っていた娘の双眸を思い出した。
 まだ二十歳になるやならずやといった風情の彼女の、年不相応の深沈たる青い目を。
 あの娘は恐らく、自分には想像もつかない冒険の日々を過ごし、己を絶えず鍛えてきたのだろう。
 まるで、聖騎士に捧げる研ぎ澄まれた長剣のように――。

(レッタは――逃げられるだろうか。ああ、俺が『死んだら』逃げろなんて残酷なこと、彼女には絶対言えない。もちろん精いっぱいの抵抗はしなければ。だけど、もし、力が及ばなかったら――。)

 ダーフィットの考えは、ひたすら自己の安寧ではなく、今は墓石の後ろに隠している、ただ一人残されるかもしれない姪の安否に注がれていた。
 彼のある意味で独善的な臆病さこそが、連続殺人の引き際を見失わせたともいえるのだが、そんな皮肉を感じることすら出来なくなっている。
 遮蔽物の多い墓地の中を、まだ寒さを含む夜風が吹き抜ける。
 それと同時に、ダーフィットの望まぬ待ち人が、足元の砂利を踏みつける音が響いた。

ダーフィットの日記14

「……あなたが、ダーフィットね」
「いかにも、俺がダーフィットだ」

 顔を合わせた2人は、「やっぱり」と心中で共に呟いていた。
 頬の削げた痩躯の男と、癖のない金髪と青い瞳の娘が、以前に≪狼の隠れ家≫で覚えた互いの顔をじっと見交わしている。

「……俺を捕まえに来たなら、とんだ甘ちゃんだな。あんなにたくさん殺した後で、誰に引き渡すって言うんだ?」

 ひどく陰鬱な響きを孕んだ声だった。

「俺達はこれからリューンを出る。真相を知る、お前達を殺してな」
「……それが、出来ると思うの?」
「さあ、俺を殺して見せろ!」

 ダーフィットがそう吼えた時だった。
 ゆらり、と勝手にシシリーのベルトポーチから抜け出ていた精霊のランプさんが、己の主の仲間やその敵とは違う気配を感じ、そちらのほうを強く照らし出したのである。
 そこに現れたのは、幼いながら見事なプラチナブロンドを持つ、ひどく色白で痩せさらばえた女の子であった。
 太陽とは違う眩しい光に、墓石の陰に隠れていたマルガレッタが悲鳴を上げる。

「あ……おとう、さん!」
「貴様ら――マルガレッタに手を出すなァアアアッ!!」

 激昂したダーフィットが、白銀のナイフを抜いてシシリーへ襲い掛かった。
 まともにナイフで切られるのはまずい――そう判断したシシリーは、半歩だけ横にずれてそれを避けようとしたが、避ける方向のダーフィットの手が、ナイフを握っているのとは別に、真っ直ぐ突き出されようとしているのに気付く。

(あれは――魔法の杭!声を封じるもの……!)

 迂闊だった。
 たとえ掠っただけでも、あれに傷つけられれば、シシリーが操る法力が発動せず、彼女の戦力が半減してしまう。
 回避はとても間に合わないと覚悟し、せめて急所だけは外そうと無理矢理身体を傾けんとする直前、杭が何かに当たって硬く鋭い音を立てた。
 青い目の視界に、見慣れたスコップが写っていた。

「……ロンド」
「そいつは……殺させない」

 唸るように宣言したロンドは、≪声封じの杭≫をスコップの面で防ぐと、力を篭めて弾き上げ、がら空きになったダーフィットの胴体を薙ぐように殴りつけた。

「ぐ……はっ……」

 血反吐を垂らして後退したダーフィットに目もくれず、一心不乱に防御魔法を唱えていたミカの鍵の発動体から、桜という東方で好まれている樹木の花弁が降り注ぐ。
 すると、薄紅色の花びらがすうっと彼らの体に溶け込み、不可視のシールドと化して身を守る助けへ変化した――これで、生半な攻撃では傷つかない。
 ダーフィットの瞳に、絶望が宿った。
 ロンドの先ほどの攻撃で、身体が思うように動いてくれない。
 そして魔法による防護が行なわれたのでは、手にしたナイフの『魔法で切る』優位性が消えてしまう。
 追い詰められ、ギラギラとした獣のような目つきになった男へ、静かに娘は近づいた。

「……ごめんなさい、とは言わないわ。あなたが、自分たちの都合で他の人を殺したことに変わりはないのだから」

 シシリーの剣の刀身に、劫火が宿る。

「さよなら――ダーフィット」

 躊躇いなく、剣閃が夜闇に奔る。

ダーフィットの日記15

「ぐっ、ふっ……」

 あの詰め所で倒れていた小部隊長と寸分違わぬ位置に、高熱による焦げた十文字傷を刻まれて、ダーフィットはその場へ崩れ落ちた。
 間違いなく致命傷である。

「ふ、ふふふ……そうだよなあ、こうなるに、決まってるよなあ……」
「お父さん!」

 潜んでいた墓石からマルガレッタが走りより、虫の息のダーフィットに縋りつく。
 シシリーも、他の仲間たちも、それを遮ることはしなかった。

「レッタ……マルガレッタ……すまないな、お前に、陽の光を……」

 他人のものではない、ダーフィット自身の血に塗れた手を頭部に乗せた。
 余力があれば、頭を撫でてやりたかったのかも知れない。
 だがすでに目で見える範囲も狭まり、ダーフィットの目には、辛うじてマルガレッタの髪の光がぼんやりと映るだけであった。
 段々と力の抜けていく口を、それでも伝えねばならぬ言葉のため、必死に動かす。

「普通の子どものように、遊ばせてやりたかった……」
「お父さん……お父さん……!」
「レッタ……愛してるよ」
「お父さん……お父さん……!」

 ――少女は、半吸血鬼は、涙に濡れた目をシシリーに向けた。

「何がいけないの。わたしたち、一緒に暮らしたかっただけ。ただそれだけだったのに……!」

 シシリーの胸元で光る聖北の印――マルガレッタにとって、何よりも憎むべきシンボルだった。

「半吸血鬼であるあなたを見逃すことが出来るくらいなら、私は、吸血鬼になった仲間を見捨てることはしなかった」
「……」
「でも、私は――恋人が恩人を殺すことを、止めなかった。だからあなたも、ここで終わらせる」

 細身の刀身が、真っ直ぐに天を指す。
 そこに宿る【十字斬り】による白い輝きが、不死者たちを滅ぼす力の篭っていることを、マルガレッタは本能的に察知していた。
 それが自分の首を刎ねるその瞬間まで、マルガレッタは”父”と自分に死をもたらした女の顔をずっと見続けていた。
 ――全てが終わった後、彫像のように立ち続ける姿に、そっとウィルバーが声をかける。

「泣いているのですか?」
「……いいえ」

 剣に付着した血を振り落とし、丁寧に拭うと、シシリーは静かに歩き始めた。
 ロンドとアンジェが、黙ってその後を追う。

「……ウィルバーさん。吸血鬼と化したテアさんを殺したのは……」
「ええ。テーゼンでした」

 ウィルバーはミカの口篭った質問に肯定を返した。

「シシリーを含め、私たちの誰一人として、彼の行為を止められませんでした。物理的にではなく、彼がそうしなければならなかったことを知っていたからです。……そんな結末は誰も望まなかったのに」
「……もし、シシリーさんがダーフィットのようなアイテムを持っていたら、もし、何かがひとつ違っていれば。あの人はテアさんを生かし続けたでしょうか?」
「その仮定は無意味でしょう。テアさん自身に、そんなつもりはなかったのですから」

 ただ、とウィルバーは続けた。

「ダーフィットとあの子どもを逃がすことは、我々の選択肢にはなかった。殺人を繰り返す犯人をここで始末しなければ、見知らぬ誰かをまた殺して、2人は生き続けることを選んだでしょう。それを防ぐには、どうあってもここで始末する他ありません。その決断と覚悟を背負ったからこそ」

 彼女は刃を振るったのだと、言葉を結んだ。

※収入:報酬10000sp、≪赤い実≫≪紫の実≫≪金の輪≫≪古木の杖≫
※支出:
※その他:
※春秋村道の駅様作、ダーフィットの日記&kori様作、手袋の話&YUNI様作、年末の冒険者達クリア!
--------------------------------------------------------
61回目のお仕事は、春秋村道様のダーフィットの日記の中に、kori様の手袋の話とYUNI様の年末の冒険者達を混ぜました。
メインはダーフィットの日記でしたが、このシナリオが年末から3月初旬くらいまでの出来事ということで、冬場の短いエピソードを挟める事に気付き、急遽、後者二つのシナリオを前もってプレイして、メインにかかりました。
手袋の話
年末の冒険者達
どっちのシナリオも、冒険者の”日常”を気軽に垣間見れる素敵なお話です。
資金に余裕があれば、年末の冒険者達など親父さんからお酒を購入することもできます。
中には肉体がないというPCでも使用可能なアイテムがありますので、興味のある方はぜひご検討ください。
なお、エンディング途中で宿の仲間を眠らせる歌を水の都アクエリア(SARUO様作)のものにしたのは、あれだと成功率修正が【眠りの雲】よりも高いからです。イラスト、結構寝てる人多かったので(笑)。

ダーフィットの日記自体は、5つのエンディングがあるシナリオであり、中にはマルガレッタとダーフィットを宿に誘ったり、あるいはダーフィットは殺してマルガレッタだけ加入させる(仇として狙われ続けることになりますが)というエンドも可能です。
ただ、これを単独で遊んでいる時はそこまで深く考えなかったのですが、旗を掲げる爪の場合を考えると……吸血鬼になったことで、テアを死なせてテーゼンと袂を分かったのに、それでマルガレッタを救うということはあり得ないな、という結論に達しました。
そのため、このパーティ、ずばずばNPCを殺しすぎじゃないか?とも思えたのですが、あえてこちらのエンドを選択しております。
違う宿では、加入したダーフィットさんで、悪役シナリオを遊んだりしてます。すごく楽しい。

シナリオ本筋から、変更した点がまた多々あります。
まず、自警団を治安隊に変えたこと。事件担当者がパーティの知人になったこと。マルガレッタ側の述懐があることなどです。
別組織名だったのを治安隊としたのは、やはり冒険者が死体を見つけた場合、知己のいる治安隊に通報しようとするだろうと考えてのことです。
治安隊なら、管轄じゃないということもなさそうですし……ただ、その分、右クリックで『やる気がなくて冒険者を甘く見ている』とされる事件担当者が、PCたちの知り合いになってしまった挙句、ダーフィットによって死亡したのですが。組織全滅というのはまずそうなので、何人か生き残った記述も勝手に作っております。
また、マルガレッタ側の視点でちょこちょこ文章を作ったのは、このシナリオを何度かプレイしていて、彼女側の言い分をちょっとやってみたくなったからです。
春秋村道の駅様たちにとってご不快でしたら、真に申し訳ございません。
それ以外にも、ちょこちょことシナリオ内に入っていないクロスオーバーがあります。

シスター・ナリス、治安隊小部隊長=ライム様作の安らかに眠れ ※本当は名前なしのNPCです。
スカルラッティ女史=小柴様作の木の葉通りの醜聞
≪赤い一夜≫を名乗る賊の討伐=flying_corpse様作の赤い一夜
ヴァイキングの事件=あめじすと様作のヴァイキング急襲!!
銀色じゅわじゅわスライム=つちくれ様作のThrough the hole

スカルラッティ女史の事件については、前パーティである金狼の牙によるものなのですが、木の葉通りの名前が出た時に、≪狼の隠れ家≫が仕事を受けるといったらあの人の関連かな……と想像力が働いて、こんなことになっていました。
作者の小柴様、勝手にその後の話を妄想爆発させて大変申し訳ございません。

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

2017/01/12 12:43 [edit]

category: ダーフィットの日記(合間の手袋の話と年末の冒険者達)

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