Wed.
血塗られた村 4 
どこからか声がする・・・・・・。
「おい、おい、大丈夫か、起きろ!!」
目が覚めると、ツンとした匂いが鼻をついた。
冒険者達はようやく正気を取り戻し、辺りを見まわすと鉄格子に囲まれている。
ラインが、眠りに落ちた際に打ったらしい頭を抱えつつ言う。
「どうやら捕まったようですね。ここはどこでしょうか・・・・・・?」
するとすかさず、
「ライン?ラインじゃないか!?」
という声がした。
声のした方を向くと、壁際に力強い風体をした男が座り込んでいる。
見慣れない男に一瞬警戒の態勢をとった”金狼の牙”たちだったが、ラインが親しげに男へ寄り、その肩を叩いたことで体から力を抜いた。
「フリッツ!無事だったか。他の皆はどうした!?」
「ほとんどの奴がやられた。ゾンビーにされちまったんだ・・・・・・。ま、俺も順番待ちなんだけどな」
「えっ!?ゾンビー!?ヴァンパイヤにやられたんじゃなかったのか?」
ラインの同輩らしきフリッツの台詞に、ミナスが小さく叫びを上げる。
フリッツは静かに頭を振った。
「ヴァンパイヤ討伐は成功したんだ。その帰り道の事だった、突然数十体のゾンビに囲まれた、アレはあの村の住人だった・・・・・・」
「そんな事が・・・・・・」
と言ったきり、ラインは絶句している。
ラインに代わってアレクが問う。
「あんたがずっとここにいたのなら、敵について何か分かったことはないか?」
「どうやらゾンビパウダーの密売組織が絡んでいるらしいな・・・・・・聖戦士団のほとんどは、幹部と思われる凄腕の魔術師にやられちまったんだ」
「ゾンビパウダーの密売組織か!」
アレクが鋭い舌打ちを放つ。
どうやら衝撃から立ち直ったらしいラインが、ようようと口を開いた。
「で、ほとんどがやられたと言っていたが、何人かは脱出できたのか?」
「ゾンビーどもに襲われた時、何人かの聖戦士は逃げる事ができたようだったからな・・・・・・」
「ふむ、何人かは無事か・・・・・・」
ラインとフリッツのその会話に、エディンは首を捻った。逃げた聖戦士たちが無事であるならば、どうして1ヶ月以上もの間、何の音沙汰もなかったのだろうか?
同じ事をラインも思い当たったようで、素直にそのことを口に出した。
「しかし、無事に聖西教会まで逃げ切れたとして、なぜ聖北教会に知らせが来なかったんだろう?」
「・・・教会内の体裁や派閥が壁になって知らせが遅れたとしか思えないな・・・・・・」
「ああ・・・・・・体裁か・・・・・・」
納得したがやりきれない様子で、アウロラが嘆息した。

確かに、ヴァンパイヤ討伐に成功したはずの教会の精鋭たちが、何者とも知れない魔術師にしてやられたとは、教会の聖戦士に対する信頼性が無くなるだろうと隠す気持ちは分かるのだが・・・・・・。
「素早く対応を取っていれば助かった奴らも大勢いただろうに!」
フリッツは怒りの拳を石壁に打ちつけた。
仮にも討伐隊に選ばれるだけの腕前があるのだ。それだけの実力者が、為すすべも無く牢に閉じ込められ、仲間がゾンビにさせられるのを見てきたとなれば、彼の教会に対する怒りも無理も無いだろう。
「クソ!これだから聖職者って奴は!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
ラインは赤くなったフリッツの拳を握り締め、黙って彼の怒りと嘆きを押さえ込むかのように震えている。
(聖職者の怠慢か・・・・・・)
それで失われた同胞たちの生命のために、ただひたすらラインは祈った。
「話は分った。よし、とにかくここから逃げ出そう」
全ての話を黙って聞いていたギルが、開口一番、きっぱりと言った。
「よっし、さすがリーダー。決断してくれる時はしてくれるねえ」
「石壁を破壊するとかは止めてよね。建物の造りをずっと見てたけど、それやったらこっちが下敷きになるわよ」
たちまち、エディンが牢を調査し始め、今まで黙って辺りを眺めていたジーニが釘を刺す。
「脱出できるんなら、さっさと脱出したい所だが・・・」
ギルの一言で急に生き生きとし始めた”金狼の牙”たちを、フリッツは驚いたように見やった。
エディンがじっくり調べたところ、鉄格子には古めの南京錠がかかっているが何とかはずせそうだ。
「でも見張りがいるよね・・・・・・。まずアレを何とかしないと・・・・・・」
牢の外の見張りは、ある程度の経験を持っているのだろう。駆け出しの冒険者にとっては、脅威となるかもしれないが、装備を取り上げられたとはいえ、彼らの敵ではない。本来なら。
「・・・・・・まず、不意を打つことですね。油断させなければ」
アウロラの冷静な一言に、フリッツが頷く。
「よし、俺が仮病を使おう」
真に迫ったフリッツの仮病にすっかりだまされた見張りは、うかうかと扉を開けてしまう。
隙を突いて見張りを倒した一行は、装備を取り戻して牢の外に出た。
フリッツによると、ここは村外れにある洞穴らしい。
行き先を近いほうの聖西教会に定めて、一行は移動を開始した。
「おい、おい、大丈夫か、起きろ!!」
目が覚めると、ツンとした匂いが鼻をついた。
冒険者達はようやく正気を取り戻し、辺りを見まわすと鉄格子に囲まれている。
ラインが、眠りに落ちた際に打ったらしい頭を抱えつつ言う。
「どうやら捕まったようですね。ここはどこでしょうか・・・・・・?」
するとすかさず、
「ライン?ラインじゃないか!?」
という声がした。
声のした方を向くと、壁際に力強い風体をした男が座り込んでいる。
見慣れない男に一瞬警戒の態勢をとった”金狼の牙”たちだったが、ラインが親しげに男へ寄り、その肩を叩いたことで体から力を抜いた。
「フリッツ!無事だったか。他の皆はどうした!?」
「ほとんどの奴がやられた。ゾンビーにされちまったんだ・・・・・・。ま、俺も順番待ちなんだけどな」
「えっ!?ゾンビー!?ヴァンパイヤにやられたんじゃなかったのか?」
ラインの同輩らしきフリッツの台詞に、ミナスが小さく叫びを上げる。
フリッツは静かに頭を振った。
「ヴァンパイヤ討伐は成功したんだ。その帰り道の事だった、突然数十体のゾンビに囲まれた、アレはあの村の住人だった・・・・・・」
「そんな事が・・・・・・」
と言ったきり、ラインは絶句している。
ラインに代わってアレクが問う。
「あんたがずっとここにいたのなら、敵について何か分かったことはないか?」
「どうやらゾンビパウダーの密売組織が絡んでいるらしいな・・・・・・聖戦士団のほとんどは、幹部と思われる凄腕の魔術師にやられちまったんだ」
「ゾンビパウダーの密売組織か!」
アレクが鋭い舌打ちを放つ。
どうやら衝撃から立ち直ったらしいラインが、ようようと口を開いた。
「で、ほとんどがやられたと言っていたが、何人かは脱出できたのか?」
「ゾンビーどもに襲われた時、何人かの聖戦士は逃げる事ができたようだったからな・・・・・・」
「ふむ、何人かは無事か・・・・・・」
ラインとフリッツのその会話に、エディンは首を捻った。逃げた聖戦士たちが無事であるならば、どうして1ヶ月以上もの間、何の音沙汰もなかったのだろうか?
同じ事をラインも思い当たったようで、素直にそのことを口に出した。
「しかし、無事に聖西教会まで逃げ切れたとして、なぜ聖北教会に知らせが来なかったんだろう?」
「・・・教会内の体裁や派閥が壁になって知らせが遅れたとしか思えないな・・・・・・」
「ああ・・・・・・体裁か・・・・・・」
納得したがやりきれない様子で、アウロラが嘆息した。

確かに、ヴァンパイヤ討伐に成功したはずの教会の精鋭たちが、何者とも知れない魔術師にしてやられたとは、教会の聖戦士に対する信頼性が無くなるだろうと隠す気持ちは分かるのだが・・・・・・。
「素早く対応を取っていれば助かった奴らも大勢いただろうに!」
フリッツは怒りの拳を石壁に打ちつけた。
仮にも討伐隊に選ばれるだけの腕前があるのだ。それだけの実力者が、為すすべも無く牢に閉じ込められ、仲間がゾンビにさせられるのを見てきたとなれば、彼の教会に対する怒りも無理も無いだろう。
「クソ!これだから聖職者って奴は!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
ラインは赤くなったフリッツの拳を握り締め、黙って彼の怒りと嘆きを押さえ込むかのように震えている。
(聖職者の怠慢か・・・・・・)
それで失われた同胞たちの生命のために、ただひたすらラインは祈った。
「話は分った。よし、とにかくここから逃げ出そう」
全ての話を黙って聞いていたギルが、開口一番、きっぱりと言った。
「よっし、さすがリーダー。決断してくれる時はしてくれるねえ」
「石壁を破壊するとかは止めてよね。建物の造りをずっと見てたけど、それやったらこっちが下敷きになるわよ」
たちまち、エディンが牢を調査し始め、今まで黙って辺りを眺めていたジーニが釘を刺す。
「脱出できるんなら、さっさと脱出したい所だが・・・」
ギルの一言で急に生き生きとし始めた”金狼の牙”たちを、フリッツは驚いたように見やった。
エディンがじっくり調べたところ、鉄格子には古めの南京錠がかかっているが何とかはずせそうだ。
「でも見張りがいるよね・・・・・・。まずアレを何とかしないと・・・・・・」
牢の外の見張りは、ある程度の経験を持っているのだろう。駆け出しの冒険者にとっては、脅威となるかもしれないが、装備を取り上げられたとはいえ、彼らの敵ではない。本来なら。
「・・・・・・まず、不意を打つことですね。油断させなければ」
アウロラの冷静な一言に、フリッツが頷く。
「よし、俺が仮病を使おう」
真に迫ったフリッツの仮病にすっかりだまされた見張りは、うかうかと扉を開けてしまう。
隙を突いて見張りを倒した一行は、装備を取り戻して牢の外に出た。
フリッツによると、ここは村外れにある洞穴らしい。
行き先を近いほうの聖西教会に定めて、一行は移動を開始した。
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