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Mon.

ウニ退治後の夏の休日その3  

 翌日。
 『依頼が済んだら海で遊ぼう』という約束どおり、町長の口利きで料亭のお昼を食べ終わった旗を掲げる爪は、海岸にまた来ていた。
 まだ季節が早いので少々寒いものの、本格的なバカンスの時期になったらここはきっと芋を洗うような状態になるだろうから、堪能できるのは今のうちである。
 潮風で錆びたら困るということで、本日は武具を宿に置いてきてある。

夏の休日
 シシリーは手をかざして、きつい日差しから自分の目を守った。

「いやあ、やはり海は開放感がありますねえ」

 何しろ昨日までは、ウニモドキ退治で観光どころではなかったのだ。
 彼女は程よく筋肉のついた長い腕をぐっと突き上げ、ぐっと背筋を伸ばした。

「うわぁ、海だ、ウニモドキのいない海だー!!」

 すっかり青い海と白い雲、木陰を提供する大きなヤシの樹に魅了されたアンジェが、半そで半ズボンの格好で脱兎のごとく走り出す。
 慌てたテーゼンが、口に両手を当てて大声を出した。

夏の休日1

「ああ、アンジェ。走ると転ぶぜ!」
「ぎゅっ」

 言われたそばから足を砂にとられてスッ転んでいる。
 今は仕事中ではないから油断していてもいいのだが、常の盗賊ぶりからは連想できないほど大胆な暴走っぷりである。

「言わんこっちゃない……。ほら、顔の砂を払って」

 転んだ後、キャッキャッと笑い声をあげながら浜をごろごろしているアンジェに近寄り、シシリーは目に砂が入らないよう注意しながら払った。

「おーい、黒蝙蝠。あの椰子の実とってくれよ!」
「……あ?僕がそれやって、何か得することがあるのか?」
「白い実の部分なんて味もないから美味くないが、中のジュースは貴重な水分だからな。割り終わったらお前にも分けてやるよ」
「……ちゃんと分け前は寄越せよ!」

 素直に翼を使うテーゼンは、やはりお人よしなんじゃないだろうか――と、テアは見ていて思った。
 テア自身は、子どもがまだ小さかった時分に、得意先の招待してくれたプライベートビーチなどを訪れたこともあったが、子どもが海で溺れないよう気を配るのに必死で、とても自分が海で遊ぶような暇はなかったので、今じっくりとその快さを味わっている。

(寿命が延びるような心持になるわい)

と、裸足を海に浸した。
 テーゼンはちゃんと6人分の椰子の実を回収し、ロンドは荒い繊維に包まれた実をごつい拳で叩き割っては、ストロー代わりの細い葦を差し込んだ。

「はい、これおばあちゃんの」
「ありがとうよ」
「テアさん、海から上がられますか?お手をどうぞ」
「そこいると危ねえぞ、白髪頭」
「何が………ぶっ!!」

 ロンドの頭目掛けて、ドロップキックよろしく下りてきたテーゼンは、平然とシシリーが抱えていた椰子の実を受け取って飲み始める。
 シシリーはさすがに諌めようかと思ったが、それよりも先にロンドを掘り起こす方が先だと判断し、彼の肩に手をかけて引っ張り上げた。
 たちまち口喧嘩が始まったものの、後の4人は勝手にやってくれとばかりに、背を向けて自分の身を抱えている。
 やがて全員が椰子の木陰に入って水分補給をしていると、シシリーのブラウスに包まれた肩をちょいちょい、とロンドが太い指で突付いてきた。

「なあに?」
「見ろよ、シリー。あの生き物は何だろうな」
「さあ……」
「それじゃ、あの魚は?」
「さあ……」

 太い首をがくりと折り、ロンドは呻くように言った。

「お前は本当に無頓着な奴だな……」
「ロンドのように好奇心旺盛が過ぎると、かえって疲れると思うわ。それに、私は必要なことはきちんと記憶しているのだから大丈夫よ」
「必要なことって、例えば?」
「……自分の名前だとか……」
「他には?」
「……………」

 答えに窮したシシリーが黙ってまたココナッツジュースを飲み始めたのを見て、ロンドはこれ以上の追求をやめた。
 互いに長い付き合いだ、海を楽しみたい一事でこちらへの返答が面倒になっているのが分かる。
 一方、ロンドが示した”あの生き物”は、

「ふう、ふう……」

と息を漏らし、白い毛皮を陽光に曝しながら、堂々とこちらへ近寄ってきた。
 どうやら、狼か犬の獣人らしい。
 人狼でないのは確かだ――人狼なら、ここまで完全に獣化して理性を保っているわけがない。

「この毛皮、冬は重宝するが今時期からはキツイ……む、そこの御方!」

 獣人が真剣な眼差しで話しかけたのは、ウィルバーだった。

「はい?」

夏の休日2

「御方、魔術師とお見受けする。どうか私に冷気の魔法をかけて貰えないか。このままでは熱中症になる」
「冷気の魔法ですか……」

 ウィルバーは自分の掌をちらと見やって考えた。
 彼は【蒼の軌跡】や【凍て付く月】など、範囲制御に慎重さが求められる冷気の術に熟達してはいるのだが、今日は武装を宿置きにしている。
 よって、魔力制御の発動体である杖も手元にないので、中々調整が難しいのだがと断ろうかと思った。
 しかし、縋るような犬の目(文字通り)で見られ、苦笑いの後で折れたのである。

「まあ、何とかやってみましょう。――はっ!」

 右手に集まった魔力の塊が冷気へと徐々に変化していき、掌に小さな寒冷地が形成されていく。
 ウィルバーはゆっくり唱えた魔術を、目前の獣人に対して解放した。
 ひゅう、と涼しい風が吹いたかと思うと――先ほどまで暑さに頭がくらくらしていた獣人は、一瞬にして氷像と化していた。

「おや。ちょっと失敗しましたね」
「ちょっとウィルバー!?!?」
「おっちゃん!?」
「………テーゼン。海に漬けておいで。その内、日差しで自然に溶けるだろうよ」
「仕方ねえなあ」

 渋々、皮膚が張り付かないよう即席拵えの氷像を椰子の葉で包むと、テーゼンは翼をまた広げて海の一番日が当たっていそうな場所へ運んでいった。
 その様子をロンドがじっと見送っている。

「……海は広いな。地平線があんなに遠い……」

 ……訂正。悪魔ではなく地形を見ていたようだ。

「あんな場所に人間が辿り着くことは可能なのか……いや、やってやれないことはないはず」
「え、ロンド。ちょっと待ってください、何するつもりなんですか?」
「俺はやってやるぞ……!はっ!!」
「………えー?」

 保護者役の制止もなんのその、遠くに見える水平線に刺激を受けて、ロンドはそこまで泳いでやろうと飛び込んだのだが…。
 シシリーが仲間の不在に気づき、

「おや?ロンドは?」

と聞いた時には、既に彼は遠い沖の方で溺れて地元民に救助されていた後だった。間抜けである。
 こんな風に、旗を掲げる爪は普段の仕事を忘れて、白い砂浜と青い海でエンジョイしたのだった。
 夕暮れ時になった頃には、さんざっぱら遊んで気の済んだテーゼンとアンジェが、自ら進んで帰り支度を始めたが、ロンドはまだ体力を回復していなかったという……。

※収入:報酬1000sp、≪シーストーン≫、≪酔い止め≫
※支出:≪酔い止め≫購入150sp
※その他:リューン枯葉通り(小柴様作)にて【梁上の君子】、ささやかな宝(Y2つ様作)にて≪海賊の帽子≫を購入。
※Acid様作、ウニ退治&カリン様作、夏の休日クリア!
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■後書きまたは言い訳
45回目のお仕事は合わせ技で、Acid様のウニ退治とカリン様の夏の休日です。
季節的にはまだまだ早いのですが、前の依頼が結構アフターケア必要だったと思うので、リプレイ内ではそれなりに時間が経って、初夏の話になってます。
……食べ物に対しては結構こだわりというか執着があって、某ダンジョ○飯なんかも楽しく拝読しているLeeffesなのですが、さすがに自爆するウニモドキは食えんな……と思いました。
あれって、中身が化学反応起こして爆発するんだろうか…しみじみ怖いです。
ここで貰えるシーストーンは、精神状態を回復しながら技能カードを一枚配布してくれるという便利なアイテムで、見た目も素敵なので、もし賢者の杖以外でその手の道具を入手したい人にはお勧めです。
ちょっと今回は財布に余裕がないので酒が買えなかったのですが、金持ちパーティで訪れたら大人買いしたくなります。

そして、素敵な背景素材で綺麗な海をせっかく見れたのだからと、カリン様の夏の休日もチャレンジ。
お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、どういうわけか冒険者の並び順がいつも通りだとエンジンが固まってしまうので、順番を変更してプレイしております。
たぶん、「醜い」「老人」女性が入ってると処理がされない仕様なんじゃないかと…でも、プレイヤー側で並び替えればいいだけの話なので、バグというほどのものでもないですね。
それよりは、色んな特性や称号を持った冒険者たちが、それに対応した反応を見せる姿が面白いので、ぜひ未プレイの方はやっていただきたいと思います。

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

2016/05/09 12:17 [edit]

category: ウニ退治後の夏の休日

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