Mon.

階下に潜むモノ 1  

 リューン北東の小さな漁村、アケビ村。
 この村は、精霊の恵みによる近海での漁で、人々の暮らしが支えられているらしい。
 そんな折、精霊が住むといわれる村外れの神殿に、魔物の群れが住み着いた。

 ――今、”金狼の牙”たちの目の前に座る、白髪を綺麗に後ろへ撫で付けた村長が出した依頼書には、そう書かれていたのだった。

「おぉ・・・!あなた方が狼の隠れ家の・・・」
「はい。詳しいお話を聞かせてもらえますか」

 重い荷物を下ろしたアレクがそう言うと、村長はおもむろに語り始めた。

「アケビ村は、近海の漁により生計を立ててきた村です。それがこのごろは、その海が荒れ、とても漁に出られるような状況ではありません」
「そこまでは依頼書のとおりだな」
「はい。嵐の原因はおそらく・・・海精の神殿にあると思うのです」
「海精・・・」

 ぽつりとミナスが呟いたのを見て、ギルが言った。

「知ってるのか、ミナス?」
「うん。多分、海の精霊シレーネの仲間だと思う」

 ええと、とミナスは少し困ったような顔をして説明を始めた。
 ミナスは元々、水や氷の精霊と親和性が高いエルフの一族に連なる者だ。
 ”金狼の牙”に加わる前から、微小とはいえ水精・ウンディーネの力を借りることが出来ていた事からも、その才能の一端は知れるだろう。
 そんなミナスの母親が習得していた呪文のひとつに【海妓召喚】というものがあり、敵を沈黙や恐慌などに陥れ、味方を鼓舞する海の精霊を召喚することが出来たという。
 極めて術者の心の動きに敏感なため、戦闘時以外は姿を見せることは稀だというが・・・。

「『彼女達と交信しようと思ったら、強い意志と素直な心が肝心ね』って、お母さん言ってた。その神殿にいる精霊が、土地の守り神として長く定着していたら、少し能力なんかは変わっているかもしれないけど、話しは通じると思うよ」
「よし、ちょっと依頼に光明が見えてきたな!」

 嬉しそうに言うリーダーに頷いて、ミナスが村長に話の続きを促した。

「で、その神殿って・・・」
「はい。海に恵みをもたらしてくれる精霊を祭った神殿なのですが・・・その神殿に最近になって、恐ろしい魔物達が住み着いたのです。村の者達はこの魔物が、海の荒れの原因と言っております」
「そういうことはあり得るのか?」
「うん。もし、魔物達が神殿を瘴気で冒していたりしたら、精霊の力が届かない事もあると思うよ」
「本当に魔物達が原因であれば、神殿から追い払えばオーケーってことね」

 ギルにも分りやすくジーニが解説すると、彼は体勢を改めて村長に言った。

「そうか・・・よし、じゃあ俺達でも何とかなるだろう。依頼引き受けるから、とりあえず神殿の場所を教えてくれるか、村長?」

ScreenShot_20121115_143152046.png

「おぉ!頼まれてくれますか。ありがたい・・・。神殿は村を出て西に進んだ場所にあります」

 目印となるものの具体的な説明を受けた一行は、さっそく海精の住む遺跡へと向かった。

2012/12/10 19:42 [edit]

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