Sat.

誘いのうたその4  

 ウィルバーの援護で地に落ちた一匹をスコップで叩き殺すと、あとの流れが冒険者側にとってかなり有利となった。
 テーゼンが≪ダリの愛槍≫で落としたハーピィにはアンジェが飛びかかり、魔法を扱っていた個体にはテアから【小悪魔の歌】により沈黙が与えられる。

誘いのうた7
 仲間がその有様に青くなるほどボロボロだったロンドの体は、すでにシシリーの【癒身の法】によって全快していた。
 また、妖精ムルもテーゼンの襟元から飛びたち、弓を射てハーピィたちの羽根を傷つけることで、相手の回避力を低下させている。

「あと三匹!」

 【葬送の調べ】の大剣技により、息を切らしているシシリーが叫ぶ。
 穂先に気合を込め、流星のように突き刺したテーゼンの後ろから、同じように別の個体へ矢を放ったムルが仲間を呼ぶ。

「アンジェさん、今です!」

 妖精のセリフに、会心の一撃をワイヤーウィップで放ったアンジェがにやりと笑う。

「ナイスアシストだよ、ムル!」
「こっちも…終われ!」

 炎を吹き上げるスコップで、ハーピィの脳天をぶち破ったロンドが咆える。
 羽毛が焦げて嫌な匂いを放ちつつ、敵は絶命した。
 残りの一匹も、シシリーの長剣の攻撃と、ウィルバーの【蒼の軌跡】によって斃れる。

「はあっ、はあっ、これで全部か?」

 テーゼンがそう言って辺りを見回した時――。

「きケええええエエえぇえええ!!!」

 一際大きな怪鳥音が轟き、冒険者たちの目前に紫色のグラデーションが美しい羽毛を散らす、大きなハーピィが舞い降りた。
 その風格、威圧の強さ………今までの個体の比ではない。

「――どうやら、こいつが本命らしいですね」
「さー、もうひとふんばりいくよ、皆ッッ!!」

 アンジェのかざした短剣が、陽光に煌めく。
 それを合図に、最後の戦いの火蓋が切って落とされた。
 ハーピィの女王である個体は、その非常識に大きい体躯を生かして、パーティ全員への体当たりを決行したものの、直前に防御を固めていた彼らの体力を削りきるところまではいかなかった。
 なんとか堪えきったテーゼンが槍を、ロンドが肘うちを決めて、負傷した同じ箇所目がけてウィルバーが【理矢の法】による矢を叩き込む。
 全員分の負傷は、テアの【安らぎの歌】により薄らいだ。

「それにしても、なかなか厄介な個体じゃの。幸いにして、あの図体のために回避力は落ちておるようじゃが…」
「ロンドの負傷が一番深いわね。待って、【癒身の法】をもう一度かけるわ」
「なんとか…隙が、あれば……」
「僕とお前でいってみるか」

 傷を聖北の奇跡で塞がれている最中のロンドに、テーゼンが話し掛けた。
 槍を腰溜めに構えつつ、動きを計算している。

「僕があいつを薙ぎ払う。てめぇがその後ろから跳躍して攻撃しろ」
「簡単に言ってくれるぜ…」
「では私が【死の呪言】で時間を稼ぎます。2人とも、タイミングを読んでくださいね」

 ウィルバーが放った死霊術が、ハーピィの女王の肉体を死の言葉で削っていく。
 そのおぞましさに女王が身を震わせ、動きの止まった一瞬。
 空恐ろしいほどの速さで振るわれた槍が、グラデーションの羽毛を血と共に散らし――機を慎重に計っていたロンドが、自分の体重を乗せた一撃を食らわせた。
 断末魔の声が森全体を震わせ――ハーピィの声が途絶えたのと同時に、全員がその場に座り込んだのであった……。

「…何はともあれ、村人が全員無事でよかったわね」

 シシリーの言葉に、嬉しげに依頼人であるニーナの兄とニーナ本人が首肯した。
 冒険者たちは2人に見送られて、リューンへの帰路につこうとしている。
 絶望的かと思われていた村人は重傷者が二名出てしまったものの、奇跡的に全員生きていた。
 ただ……色々な精神面でのショックから立ち直るには、今しばらくの時間が必要かもしれない。

「…とりあえず、もう二度とあんな目には遭いたくない。今回ばかりは死ぬかと思ったぞ」

誘いのうた8

「ふふん、いつもは強敵で喜ぶおぬしだというのにのう。死に損なっただけで済んで、幸いじゃったの」
「やはりロンドのここ一番の悪運の強さは、ずば抜けてると思いますよ」
「だから、また何かあったときはよろしくお願いね、兄ちゃん」
「……」

 仲間たちの励ましとは到底思えない言葉に、ついにロンドは黙り込んだ。
 一番にからかうであろうと目されていた青年は、黒い翼をゆっくりはためかせながら晴れた空を仰いでいる。

「――さ、早ぇところ≪狼の隠れ家≫に帰って、今日は戦勝祝いするぜ!」

※収入:報酬800sp
※支出:テーブル山天体観測所(烏間鈴女様作)にて【凍て付く月】、ネジ倉庫(もみあげ様作)にて【葬送花】、武闘都市エラン(飛魚様作)にて【風縫い】、リューン枯れ葉通り(小柴様作)にて【艶麗の哄笑】、城郭都市ハイリゲンブルク(_銀貨こそ命様作)にて【賛美の法】、魔女のビブリオテカ(hisase様作)にて【赫灼の砂塵】購入。
※98様作、誘いのうたクリア!
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■後書きまたは言い訳
33回目のお仕事は、プレイヤーの冒険心を刺激して止まない作品の多い、98様の誘いのうたです。
寝る前サクッとフォルダの「雨宿りの夜」で、同作者様の作品をプレイなさったという方も多いのではないでしょうか。
こちらの作品ですが、ちょっと前までオーバーレベルで遊んだらラスボスが凶悪仕様になることを知らず、何で勝てないのだろうと某所で愚痴っていたら、親切にも教えてくださった方がいました。
あの時はありがとうございます。
そんな人様のアドバイスを頂いたりしたので、結構思い入れのあるシナリオです。

生贄にロンドをセレクトするのは、結構前から決めてありました。
キャラクターの設定的な事情による理由はリプレイでも語っているのですが、それ以上に「これ、ロンドくらい体力ないと仲間来るまでもたない」というのが最大の理由だったりします……本当にね、ボロボロにされました(笑)。
でもおかげさまで、パーティの中でこいつが死んだら他の人はもう皆死んでるはず、というロンドの珍しいピンチが描けたと思います。
種族や職業称号に反応はしない作品なので、そこら辺が関わっているようなセリフは全部オリジナルなのですが、強硬に抵抗しようとする犠牲PCの反応や、いきなり歌い出してしまうPCの漫才のようなやり取りは、ほぼシナリオのとおりです。
ギャグ風味も厳しい戦闘もどっちも欲しい、というプレイヤーさんには強く勧めさせていただきます。
さて、あれこれ中堅レベルのシナリオを遊んでいるうちに、とうとうテアのレベルが8に到達しました。
もういい頃だろう、と思いますので、全員のレベルを7まで一気に上昇させてから、また次のシナリオを選ぼうと思います。
その中にはオーバーレベルのものもあるかもしれませんが、プレイヤーが何分下手くそなので、大目に見ていただければ幸いです。

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

2016/04/09 12:38 [edit]

category: 誘いのうた

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