Fri.
石化の魔物その1 
そろそろ本格的な春が訪れ、薄紅色や黄色、赤に白に紫と、冬の間は姿を見せなかった鮮やかな色彩が、そこかしこに咲き乱れていた。
リューンの市街を吹きぬける温みを持った風には、かすかに花の香りが混ざる。
行き交う住民の服装も、すでに毛織物中心の外套は姿を消し、もう少し薄い生地を重ね着して温度を調整するようになってきている。
そんな人ごみの中を、旗を掲げる爪の6人が揉まれていた。
冒険者たちの腕には宿の亭主から頼まれた荷物がそれぞれ乗っており、人にぶつかっても落としたりしないよう、巧みにバランスを取っていた。

リューンの市街を吹きぬける温みを持った風には、かすかに花の香りが混ざる。
行き交う住民の服装も、すでに毛織物中心の外套は姿を消し、もう少し薄い生地を重ね着して温度を調整するようになってきている。
そんな人ごみの中を、旗を掲げる爪の6人が揉まれていた。
冒険者たちの腕には宿の亭主から頼まれた荷物がそれぞれ乗っており、人にぶつかっても落としたりしないよう、巧みにバランスを取っていた。

彼らの服装も冬用から春用にと変わっており、ウィルバーなどは銀で出来た翼のブローチをストール止めに使っている。
「なかなか洒落ものじゃのう、おぬし」
「いえ、そんなことはありませんよ。ただ、いい物は色々と使い回したい性質でして」
「おっちゃんは、色の組み合わせにもうるさいんだよ。今日のあたしの服にまで駄目出ししたんだから」
「そりゃあ、さすがにオレンジと紺色のボーダーはないだろうよ…」
「ロンドの言うとおりかも。私もあれはちょっと着れないわ…」
「そもそも、そんなモンどこに売ってたんだよ?」
「えー、その辺の露店の古着屋だよう」
かなり賑やかに言葉を交わしながら、彼らの足は常宿である≪狼の隠れ家≫へ向かっている。
軋む音を出すくせにスムーズに開く扉は、ホビットであるアンジェでも1人で開閉可能だ。
「親父さん、帰りました」
「おお、帰ったか。すまんな、お使い頼んで」
「別に暇だからねー」
アンジェの返事に宿の亭主は眉をひそめた。
「まったく、暇なら依頼のひとつやふたつ…」
そんな亭主の愚痴を、珍しくウィルバーが遮った。
「それより知ってますか?親父さん」
「ん?何のことだ?」
「つい先日なんだけど、近くの村で村人が石になって発見されたんだ」
ロンドが抱えていた大量のじゃが芋入りのずた袋を、厨房へと運びながら口を挟む。
それを機に、他の面子も自分たちが持っている荷物を、それぞれあるべき場所へと運んでいった。
ウィルバーは小麦粉と卵の包みをカウンターにそっと乗せる。
宿の亭主はタイミングを見計らって彼に質問した。
「…近くの村か。どこの村だ?」
「ラドル村です」
「石にされたとなると、魔術師かのう?」
「いえ、バジリスクやメデューサなどのモンスターかもしれませんね」
旗を掲げる爪の年長組みがのんびりした口調で話し合ってるのに、亭主はうわごとのように呟いた。
「いや…まさかな。そんなはずは……」
「まあ、どちらにせよ!」
ぴょん、と身軽になったアンジェが、階段を途中から飛び降りてテアに駆け寄る。
「宿に依頼が来ないことには、あたしたちには関係のない話よね」
彼女の鋭敏な耳にも届かぬ小さな声で、考え込み続けている亭主がしきりにぶつぶつと言っている。
「いや…でも、しかし…」
いつものテーブルに座り、他の3名が戻ってくるのを待ちながら、年長組みはアンジェの言葉に同意を示していた。
やはり、こちらにも亭主の声は届いていない。
「そうですね、考察するだけ無駄ですね」
「今日の晩御飯は何かのう……」
「お前ら、折り入って頼みがあるんだが」
「え?食材でも足りなかったんですか?」
「うわっ、マジかよ!?嫌だぜ僕、またあの混んでる市場に行くの」
「親父、何してんだ。メモを書き忘れたのか?」
犬猿の仲の2人が口々に言うのを、シシリーは必死に手で制する。
やっと黙り込んだところで、亭主に再びどうしたのかと問うた。
「いや、その……だな。ラドル村の石化事件、わしのせいかもしれんのだ」」
「ええ?」
思っても見なかった言葉に、ウィルバーの細い眉が寄せられる。
宿の亭主がそっと目を閉じ、昔に思いを馳せた。
「昔のわしの罪だ…」
「親父の罪…?」
「ああ、わしがまだ若かりし頃。冒険者として、名を馳せていたときのことだ」
「…それって、正確にはどのくらい前?百年以上前?」
何しろこの≪狼の隠れ家≫の亭主、2世代続けてお世話になる冒険者が珍しくないのだ。
このはげ頭の容貌が何十年と変わってないとあって、敵から呪いをかけられて年を取れないのだとか、何らかのアイテムによって不死を得たのだとか、好き勝手な推測が飛交っているものの、その真相を確かに知る者はいない。
そんな亭主の現役時代となると、恐らくはシシリーの言うとおり、百年近くは前の話になるはずなのだが……。
亭主はそこを説明しようという気はないらしく、勝手に話を続けている。
「わしはガンガン依頼を成功させ、名声と金を手にしていたのだ」
「……ああ、そう。続けて…」
「そしてある日のことだった。わしは息抜きがてらに、リューンの闇市に行ったんだ」
盗品、横流し品、表の市場では決して捌くことの出来ない品々…。
そういった怪しげなものを販売しているのが、盗賊ギルドが裏で手を引いているとも言われている、悪名高きリューンの闇市である。
そこで見つけたのは――。
「……ヒヨコ?」
「おう、わしは可愛いヒヨコを見つけたんだ。欲しい!と思った」
「親父さんがひよこなんて可愛いものを欲しがるなんて…」
理解不能だとでも言いたげに、魔術師の男は残り少ない頭髪を掻き毟った。
その横では同感だと顔に書いた白髪の少年が、半眼になって亭主を見つめている。
亭主が鼻を鳴らした。

「失礼なやつらだ。まあ、あの時は若かったからな。それでわしは欲しいと店主に言ったんだが、ひよこじゃなしに卵を買うのを薦められたんだ」
「卵を?どうして?」
アンジェの呈した純粋な疑問に、亭主は手振りを交えて説明した。

「卵から生まれたひよこは、刷り込み効果によって、生まれて初めて見たものを親と思い込むらしい」
「ああ、鳥の習性なんだね」
「わしの後ろをヨチヨチ歩くひよこ。素晴らしい。わしはさっそくひよこの卵を買った」
宿の亭主は形から入るタイプであったため、毎日、卵を潰さないように細心の注意を払いつつ、布団に入れて温めて寝ていたそうだ。
よく潰さなかったものだ、と感心したテーゼンが頷きながら話に聞き入っている。
「そして、孵化した!実に可愛いじゃないか。わしは手塩にかけて育てることを誓った」
「……何の問題もないように思うんじゃがのう?」
「だよな、ばあ様。大体、ひよこと石化とどう関わるんだ?」
「うむ……ひよこはわしに懐いていて可愛かったんだ。だがな。なんだか変なんだ。図鑑のひよこと比べるとなんか違うんだ。大きくなるにつれて」
「え……」
嫌な予感がしたシシリーが眉根を寄せる。
親父は段々と昔話に力が入ってきたのか、力こぶを腕に無意識に作りながら声を大きくしている。
「明らかにこいつは違う。ひよこじゃない!わしは図書館で本を片っ端から読んで調べた。すると、なんだったか明らかになった」
「まさか…」
「そう、ひよこではなく、コカトリスの卵だったんだ!闇市の店主に騙されたんだ!」
「ああああああ…」
話の落ちに頭痛を引き起こしたリーダーの娘は、ぐったりと上体を机に預けた。
テアが呆れたような顔を亭主に向けたまま、彼女の背中を優しく撫でてやった。
「わしはすぐに闇市の店主に文句を言いに行ったが、店を片付けてどっかへ行った後だった」
「そりゃそうだろうよ……僕だってそうするわ」
闇市の店主は、自分が持て余していた商品を騙して引き取らせたのだ。
目論見がまんまと成功したのなら、ちょっとでも頭があれば同じ所に店は開いていないだろう。
現役時代の亭主は、コカトリスをどうしようかと迷った。
宿の経営者ならともかく、その当時は一介の冒険者に過ぎない。
宿でコカトリスを飼うなんてことがばれたら、常宿を追い出されるか、こないだのテーゼンのように聖北教会のような組織から追われる羽目になるだろう。
そこでどうしたかというと、彼は夜中に森へ捨てに行ったのである。
「まだ小さかったからな。どうせ餓死して死ぬだろうと思っていた」
「捨てないで下さい!」
≪万象の司≫を握り締めてウィルバーが怒ったが、亭主はそれを風のように受け流した。
「仕方ないだろう。わしのことを親だと思っとるひよこ…じゃない。コカトリスなんだぞ!それに…心情的にも自分の手で葬るなど、わしにはできなかった」
「で、その捨てた森がラドル村だったんですか……」
「いや、詳しくは覚えておらんのだ。ダドダ村だったか…ラドル村だったか……。年を取ると物忘れが酷くなっていかんな」
「百何歳は確実の人が、今さら何を言ってるんですか」
話を最後まで聞き終わったアンジェが、素朴な疑問をテアに発する。
「コカトリスって、何十年も生きるものなの?」
「あれの分類は、一応魔獣じゃからのう。…コカトリスについて少し語ろうか」
「うん、お願い」
「頭部と胴体は若い雄鶏のもので、これをコッカレルと呼ぶためにコカトリスという名がついたという説が有力じゃの。長い尾については、蜥蜴だとも蛇だとも言われておる。一般的に恐れられているのは、口から全ての生き物を石にしてしまうガスを吐くことじゃが、爪や嘴による攻撃も侮れん。…極めて厄介な魔獣じゃ」
「あんまり近接攻撃で戦いたい相手じゃないね…」
アンジェが、亀の子が首を引っ込めるような仕草をする。
伝承や伝説に登場するモンスターには詳しい老婆は、すでに疲れたような顔で竪琴の調律を始めた。
亭主はウィルバーへ自分の過去の所業の後始末をさせようと、かき口説いている。
それをチラッと見やってから彼女は呟いた。
「わしは、たとえ遠距離でもご遠慮願いたいもんじゃ」
「なかなか洒落ものじゃのう、おぬし」
「いえ、そんなことはありませんよ。ただ、いい物は色々と使い回したい性質でして」
「おっちゃんは、色の組み合わせにもうるさいんだよ。今日のあたしの服にまで駄目出ししたんだから」
「そりゃあ、さすがにオレンジと紺色のボーダーはないだろうよ…」
「ロンドの言うとおりかも。私もあれはちょっと着れないわ…」
「そもそも、そんなモンどこに売ってたんだよ?」
「えー、その辺の露店の古着屋だよう」
かなり賑やかに言葉を交わしながら、彼らの足は常宿である≪狼の隠れ家≫へ向かっている。
軋む音を出すくせにスムーズに開く扉は、ホビットであるアンジェでも1人で開閉可能だ。
「親父さん、帰りました」
「おお、帰ったか。すまんな、お使い頼んで」
「別に暇だからねー」
アンジェの返事に宿の亭主は眉をひそめた。
「まったく、暇なら依頼のひとつやふたつ…」
そんな亭主の愚痴を、珍しくウィルバーが遮った。
「それより知ってますか?親父さん」
「ん?何のことだ?」
「つい先日なんだけど、近くの村で村人が石になって発見されたんだ」
ロンドが抱えていた大量のじゃが芋入りのずた袋を、厨房へと運びながら口を挟む。
それを機に、他の面子も自分たちが持っている荷物を、それぞれあるべき場所へと運んでいった。
ウィルバーは小麦粉と卵の包みをカウンターにそっと乗せる。
宿の亭主はタイミングを見計らって彼に質問した。
「…近くの村か。どこの村だ?」
「ラドル村です」
「石にされたとなると、魔術師かのう?」
「いえ、バジリスクやメデューサなどのモンスターかもしれませんね」
旗を掲げる爪の年長組みがのんびりした口調で話し合ってるのに、亭主はうわごとのように呟いた。
「いや…まさかな。そんなはずは……」
「まあ、どちらにせよ!」
ぴょん、と身軽になったアンジェが、階段を途中から飛び降りてテアに駆け寄る。
「宿に依頼が来ないことには、あたしたちには関係のない話よね」
彼女の鋭敏な耳にも届かぬ小さな声で、考え込み続けている亭主がしきりにぶつぶつと言っている。
「いや…でも、しかし…」
いつものテーブルに座り、他の3名が戻ってくるのを待ちながら、年長組みはアンジェの言葉に同意を示していた。
やはり、こちらにも亭主の声は届いていない。
「そうですね、考察するだけ無駄ですね」
「今日の晩御飯は何かのう……」
「お前ら、折り入って頼みがあるんだが」
「え?食材でも足りなかったんですか?」
「うわっ、マジかよ!?嫌だぜ僕、またあの混んでる市場に行くの」
「親父、何してんだ。メモを書き忘れたのか?」
犬猿の仲の2人が口々に言うのを、シシリーは必死に手で制する。
やっと黙り込んだところで、亭主に再びどうしたのかと問うた。
「いや、その……だな。ラドル村の石化事件、わしのせいかもしれんのだ」」
「ええ?」
思っても見なかった言葉に、ウィルバーの細い眉が寄せられる。
宿の亭主がそっと目を閉じ、昔に思いを馳せた。
「昔のわしの罪だ…」
「親父の罪…?」
「ああ、わしがまだ若かりし頃。冒険者として、名を馳せていたときのことだ」
「…それって、正確にはどのくらい前?百年以上前?」
何しろこの≪狼の隠れ家≫の亭主、2世代続けてお世話になる冒険者が珍しくないのだ。
このはげ頭の容貌が何十年と変わってないとあって、敵から呪いをかけられて年を取れないのだとか、何らかのアイテムによって不死を得たのだとか、好き勝手な推測が飛交っているものの、その真相を確かに知る者はいない。
そんな亭主の現役時代となると、恐らくはシシリーの言うとおり、百年近くは前の話になるはずなのだが……。
亭主はそこを説明しようという気はないらしく、勝手に話を続けている。
「わしはガンガン依頼を成功させ、名声と金を手にしていたのだ」
「……ああ、そう。続けて…」
「そしてある日のことだった。わしは息抜きがてらに、リューンの闇市に行ったんだ」
盗品、横流し品、表の市場では決して捌くことの出来ない品々…。
そういった怪しげなものを販売しているのが、盗賊ギルドが裏で手を引いているとも言われている、悪名高きリューンの闇市である。
そこで見つけたのは――。
「……ヒヨコ?」
「おう、わしは可愛いヒヨコを見つけたんだ。欲しい!と思った」
「親父さんがひよこなんて可愛いものを欲しがるなんて…」
理解不能だとでも言いたげに、魔術師の男は残り少ない頭髪を掻き毟った。
その横では同感だと顔に書いた白髪の少年が、半眼になって亭主を見つめている。
亭主が鼻を鳴らした。

「失礼なやつらだ。まあ、あの時は若かったからな。それでわしは欲しいと店主に言ったんだが、ひよこじゃなしに卵を買うのを薦められたんだ」
「卵を?どうして?」
アンジェの呈した純粋な疑問に、亭主は手振りを交えて説明した。

「卵から生まれたひよこは、刷り込み効果によって、生まれて初めて見たものを親と思い込むらしい」
「ああ、鳥の習性なんだね」
「わしの後ろをヨチヨチ歩くひよこ。素晴らしい。わしはさっそくひよこの卵を買った」
宿の亭主は形から入るタイプであったため、毎日、卵を潰さないように細心の注意を払いつつ、布団に入れて温めて寝ていたそうだ。
よく潰さなかったものだ、と感心したテーゼンが頷きながら話に聞き入っている。
「そして、孵化した!実に可愛いじゃないか。わしは手塩にかけて育てることを誓った」
「……何の問題もないように思うんじゃがのう?」
「だよな、ばあ様。大体、ひよこと石化とどう関わるんだ?」
「うむ……ひよこはわしに懐いていて可愛かったんだ。だがな。なんだか変なんだ。図鑑のひよこと比べるとなんか違うんだ。大きくなるにつれて」
「え……」
嫌な予感がしたシシリーが眉根を寄せる。
親父は段々と昔話に力が入ってきたのか、力こぶを腕に無意識に作りながら声を大きくしている。
「明らかにこいつは違う。ひよこじゃない!わしは図書館で本を片っ端から読んで調べた。すると、なんだったか明らかになった」
「まさか…」
「そう、ひよこではなく、コカトリスの卵だったんだ!闇市の店主に騙されたんだ!」
「ああああああ…」
話の落ちに頭痛を引き起こしたリーダーの娘は、ぐったりと上体を机に預けた。
テアが呆れたような顔を亭主に向けたまま、彼女の背中を優しく撫でてやった。
「わしはすぐに闇市の店主に文句を言いに行ったが、店を片付けてどっかへ行った後だった」
「そりゃそうだろうよ……僕だってそうするわ」
闇市の店主は、自分が持て余していた商品を騙して引き取らせたのだ。
目論見がまんまと成功したのなら、ちょっとでも頭があれば同じ所に店は開いていないだろう。
現役時代の亭主は、コカトリスをどうしようかと迷った。
宿の経営者ならともかく、その当時は一介の冒険者に過ぎない。
宿でコカトリスを飼うなんてことがばれたら、常宿を追い出されるか、こないだのテーゼンのように聖北教会のような組織から追われる羽目になるだろう。
そこでどうしたかというと、彼は夜中に森へ捨てに行ったのである。
「まだ小さかったからな。どうせ餓死して死ぬだろうと思っていた」
「捨てないで下さい!」
≪万象の司≫を握り締めてウィルバーが怒ったが、亭主はそれを風のように受け流した。
「仕方ないだろう。わしのことを親だと思っとるひよこ…じゃない。コカトリスなんだぞ!それに…心情的にも自分の手で葬るなど、わしにはできなかった」
「で、その捨てた森がラドル村だったんですか……」
「いや、詳しくは覚えておらんのだ。ダドダ村だったか…ラドル村だったか……。年を取ると物忘れが酷くなっていかんな」
「百何歳は確実の人が、今さら何を言ってるんですか」
話を最後まで聞き終わったアンジェが、素朴な疑問をテアに発する。
「コカトリスって、何十年も生きるものなの?」
「あれの分類は、一応魔獣じゃからのう。…コカトリスについて少し語ろうか」
「うん、お願い」
「頭部と胴体は若い雄鶏のもので、これをコッカレルと呼ぶためにコカトリスという名がついたという説が有力じゃの。長い尾については、蜥蜴だとも蛇だとも言われておる。一般的に恐れられているのは、口から全ての生き物を石にしてしまうガスを吐くことじゃが、爪や嘴による攻撃も侮れん。…極めて厄介な魔獣じゃ」
「あんまり近接攻撃で戦いたい相手じゃないね…」
アンジェが、亀の子が首を引っ込めるような仕草をする。
伝承や伝説に登場するモンスターには詳しい老婆は、すでに疲れたような顔で竪琴の調律を始めた。
亭主はウィルバーへ自分の過去の所業の後始末をさせようと、かき口説いている。
それをチラッと見やってから彼女は呟いた。
「わしは、たとえ遠距離でもご遠慮願いたいもんじゃ」
2016/04/08 12:22 [edit]
category: 石化の魔物
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