緑の皮膚の妖魔その2
1階で、それ以上はかばかしい戦果も発見も得られなかった旗を掲げる爪は、2階へと移動した。
その途端、こちらへ向かってくる物音を聞きつけたテーゼンが、列の先頭に立って槍を構える。
「!!……と、現れたか…」
その途端、こちらへ向かってくる物音を聞きつけたテーゼンが、列の先頭に立って槍を構える。
「!!……と、現れたか…」
相手は、確かに人間大と言っても良かった。
どちらかと言えば”小柄な”人間大であるゴブリンと比べると、身長が170センチ台のテーゼンやシシリーに近かったのだが…そして、確かに使用人の証言どおり、緑色の皮膚を持っていた。
ところがそれよりもはっきりと分かりやすい特徴を、その敵は備えていたのである。
硬い鱗に覆われた身体、そして太く長い尾。
どう見ても、蜥蜴人間。
「………ハ?」
何故、こんなに証言しやすい特徴をその使用人は言わなかったんだ――という呆れた憤りを含んだウィルバーの声が、発せられて空に溶けた。
「……………」
蜥蜴人間――すなわち、河畔、海岸など水辺に集落を築いているはずの上級妖魔・リザードマンは、しばしこちらを睨みつけていたが――。
「え?……わっ、こっち来たっ」
慌てながらもブーツに隠した短剣を滑らかに取り出したアンジェと同時に、パーティへと襲い掛かる。
それも、ムルが撹乱まがいの矢を射ることで動揺させ、その隙をついてテーゼンとアンジェがトドメを指すことで、呆気なく戦闘は終わった。
一匹だからこそ短い時間で済んだのだが、本来のリザードマンは生まれながらの戦士であり、勇猛果敢な性分を生かした集団戦が厄介なのである。
今回も、すかさず仲間を呼び集められていたら、少々手こずってしまっただろう。
発達した両手は剣を並みの剣士以上に使いこなすし、鎧などを纏わずとも硬い鱗が相手の武器を弾く。
「ゴブリンかと思ったらリザードマンって…想定より一段階上の相手ばっかりじゃないの!」
「怒るな、シシリー殿。…まあ、勝機がないわけじゃなし、それこそ駆け出しの手には負えないモンスターなんじゃ。ここでわしらが殲滅せねば、依頼主も困るじゃろう。むろん、退路は確保しておくに越したことはないがな」
「ん。ここに来るまでに窓が塞がれたり、細工された様子はないもん。逃げたければ、いつだって逃げれるよ。……兄ちゃんがやる気になってるから、たぶん大丈夫だと思うけど」
強敵の予感に、嬉しげにブンブンと腕を振っている兄貴分を、アンジェが半眼で見やりつつ保障する。
ため息をついてシシリーは指示した。
「ハァ…そうね。いいわ、探索を続けましょう。でも無理はしないこと、いいわね?」
「賛成」
異口同音に仲間たちは言った。
使用人の部屋らしいところは素通りし、さらに奥へ続く廊下を行く。
扉が二つあるうち、右手のドアを開いたテアは眉を上げた。
「ここは…?」
一行は赤い絨毯の敷かれた部屋の中へと踏み込んだ。
「…書物も多いし、結構立派な造りね。この家の主人の、書斎兼寝室ってところかしら?」
シシリーが壁一面を覆う本棚を見やった後、一角獣の立派な彫刻が施されたベッドのフレームを撫でて判断する。
部屋に置かれているのはそれだけではなく、リューンの一般家庭では珍しいねじ巻き式の柱時計や、赤と黄色のまだ鮮やかなドライフラワーの飾られた書き物机などがあり、この家の家具選びの趣味のよさを、無言のまま冒険者たちに伝えていた。
「それはそうと、ここには妖魔はいないのね。もうひとつの部屋なのかしら」
「…あら?この童話……」
アンジェは魔道書・政治学・マナー関係など、分類など丸投げしたような本の陳列に興味をおぼえ、色々な本を取り出しては戻していたのだが、一冊を手に取ったところでそれをしげしげと眺めた。
「…なんか不思議な力を感じる気がする…ねぇ、これを読んでみてよ、お婆ちゃん」
「ほ、どれどれ?……おやま、これは…」
「やっぱり、詩人の管轄?持って行く?」
「いや、ここで暗記できる内容のようじゃな。少々待っておれ」
譜面によると、片手で弦を弾くことが可能らしい運指になっている。
ただ、【春暁】という今時季に相応しいタイトルとは裏腹に、荒々しい音階の上下の繰り返しがある。
実際の演奏では、恐らく何人もの奏者がいるように感じるだろうとテアは思った。
呪歌なので、戦闘中の効果としては”その場の心を持つ全員”が高揚するようになっているのだが…。
「敵味方見境なしじゃのう。出てくる敵が、真っ当な精神を持たない魔法生物やアンデッドばかりなら、あるいはこの歌を生かす局面もあるのかもしれんが…」
「後はじっくり宿に帰ってから検証しましょう。それより、これで最後の部屋にいると見当がついたわけですから……シシリー、援護をしてから突入でいいですか?」
「ええ、お願いするわ」
全員がもとの廊下に引き返し、テアとウィルバーによる援護を受ける。
妖魔たちの集中攻撃を後衛に届かせぬようにと、魔力の翼を背から生やしたロンドがドアを開けた。
「!?」
「!?!?!?」
どうやら、これまでの戦闘音は微かに聞こえていたものの、別荘を占拠する際に邪魔らしい邪魔のなかったリザードマンたちはすっかり油断していたらしい。
急に鎧に身を包み武器を手にした冒険者の群れが入ってきたせいか、責任を押し付けあうかのように、人間の耳には可聴できない領域で鳴き声を交している。
「混乱している今がチャンス!」
嬉々としてスコップを構えたロンドに、すかさずテーゼンが釘を刺した。
「おい、火は使うなよ」
「分かってるって!………そういや、そうだったな」
小さい声で付け加えたセリフを聞いたのか聞いていないのか、テーゼンは真っ直ぐに手前にいたウェアウルフへ槍を突きつける。
その攻撃がザックリと狼の左肩を貫通する前には、アンジェの体はすでに敵の死角に入っており、背中側から心臓を狙って短剣が突き出されていた。
「ギャウウン!?」
「ちぇっ、狙いが甘かったか…」
「アンジェ、気をつけて!」
シシリーが警告を発したのは、リザードマンが二匹も彼女の方へと向かったからだったのだが、ホビットの面目躍如というべきか、風に舞う蝶のような動きで見事に攻撃をさばききっている。
≪万象の司≫による魔力回路を頼りに呪文詠唱の集中に入ったウィルバーの横で、慣れた仕草で竪琴をかき鳴らしたテアが、ロンドとシシリーの攻撃が済んだタイミングを見計らい、【まどろみの花】による眠りを敵全体へ仕掛けた。
果たして、中心にいたリーダー格らしきリザードマン以外の全員がその場に横たわった!
「さすがばあ様!」
「………!」
仲間達をことごとく無力化され、憤慨したリザードマンが手にした長剣に気を集めた。
そのまま、そこらにいる騎士よりも確かな足取りでロンドたちの妨害を潜り抜け、ちょうど【理矢の法】による魔力塊を纏わせたばかりのウィルバーに、深い一撃を放つ。
黒っぽい上着を大量の血が濡らし、魔術師の男がその場に膝をついた。
天井まで飛び上がっていたテーゼンが声を上げる。
「ウィル!」
急激な失血に目を回しそうになったウィルバーだったが、その声に辛うじて片手を上げて応える。
うな垂れている人間へトドメを刺さんと剣を振り上げたリザードマンだったが――。
「そりゃ駄目さ」
ロンドがスライディングよろしく滑りこんだ勢いのまま、肘を二足歩行する蜥蜴の丹田へと叩き込んだ。
剣で上段の構えを取っていた怪物が、これを防ぐすべなどない。
まともに食らってよろめく。
「カハッ……」
「はい、さようなら」
≪早足の靴≫で足音を消し、するすると近寄ったアンジェが短剣を彼の延髄に刺した。
絶息して床に横たわる体を一瞥もせず、彼女は取って返して他のリザードマンの首にワイヤーウィップを巻きつける。
――それを機に、他の面々も残った敵を殲滅していく。
血を失った反動で目を回していたウィルバーも、テーゼンの薬草による回復で、どうにか傷を塞がれて立ち上がれるようになった。
「ウィル、大丈夫か?僕が肩を貸すか?」
「いえ……おかげさまで、どうにか自分で立てそうです」
「ウィルバーさん、平気かい?」
「ええ、テーゼンによく効く薬草を使ってもらいましたからね」
「…それにしても、ゴブリン退治と高を括ったら、まさかのリザードマン退治とはなぁ」
ロンドはガリガリと白髪の頭を掻きながら嘆息した。
「ここで愚痴っても仕方ありません。宿に帰ってから、亭主に情報の不備を訴えましょう」
「そうだな。ま、追加報酬はないだろうけど」
「それでも、呪歌はあたしと婆ちゃんで見つけたじゃない!あれ貰えるなら、収入としちゃちょっとしたもんだよ?」
「そっちは依頼主との交渉次第でしょうね…別荘の中にあるものは、報酬で交渉してないもの」
「いやいや、別荘には大したものは置いてないからと言ってたんじゃ。つまり、あの童話とて依頼人は気にしておらんじゃろうよ」
旗を掲げる爪は、賑やかに喋りながら別荘を後にした……。
※収入:報酬1000sp
※支出:
※オサールでござ~る様作、緑の皮膚の妖魔クリア!
--------------------------------------------------------
■後書きまたは言い訳
記念すべき30回目のお仕事は、某所でもシナリオでもお世話になっているオサール様の緑の皮膚の妖魔でした。
オサール様のシナリオは、多々、独特の笑いの間が襲ってくるのですが…傍観者になりがちで冷静沈着なウィルバーにしては珍しく、敵へのリアクションが絶妙で笑っておりました。
緑の肌っていつものゴブリンか~、なんて油断したらリザードマンとか、冒険者にあり得るシチュエーションなのに、シナリオ作者としてなかなか思いつきませんでしたね…。
シナリオ中、別に”炎による攻撃キーコードで別荘破壊”なんてシステムは組まれていなかったのですが、
Qubesで組まれた画面が明らかに木造建築であったので、縛りプレイもどきにそちら関係のキーコードを使わないことに決めました。
結果としてそれなりにリアリティが出て、面白くなったのではないかと思います。
リプレイに書いたとおり、こちらでは吟遊詩人の称号持ちPCを連れて行くと、呪歌【春暁】を入手するチャンスがあります。
もし、「うちにも詩人PCがいるんだけど、どんな支援呪歌つけるか悩んでるんだ~」というプレイヤーさんがおられましたら、こちらの作品に挑戦なさってはいかがでしょうか?
当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。
どちらかと言えば”小柄な”人間大であるゴブリンと比べると、身長が170センチ台のテーゼンやシシリーに近かったのだが…そして、確かに使用人の証言どおり、緑色の皮膚を持っていた。
ところがそれよりもはっきりと分かりやすい特徴を、その敵は備えていたのである。
硬い鱗に覆われた身体、そして太く長い尾。
どう見ても、蜥蜴人間。
「………ハ?」
何故、こんなに証言しやすい特徴をその使用人は言わなかったんだ――という呆れた憤りを含んだウィルバーの声が、発せられて空に溶けた。
「……………」
蜥蜴人間――すなわち、河畔、海岸など水辺に集落を築いているはずの上級妖魔・リザードマンは、しばしこちらを睨みつけていたが――。
「え?……わっ、こっち来たっ」
慌てながらもブーツに隠した短剣を滑らかに取り出したアンジェと同時に、パーティへと襲い掛かる。
それも、ムルが撹乱まがいの矢を射ることで動揺させ、その隙をついてテーゼンとアンジェがトドメを指すことで、呆気なく戦闘は終わった。
一匹だからこそ短い時間で済んだのだが、本来のリザードマンは生まれながらの戦士であり、勇猛果敢な性分を生かした集団戦が厄介なのである。
今回も、すかさず仲間を呼び集められていたら、少々手こずってしまっただろう。
発達した両手は剣を並みの剣士以上に使いこなすし、鎧などを纏わずとも硬い鱗が相手の武器を弾く。
「ゴブリンかと思ったらリザードマンって…想定より一段階上の相手ばっかりじゃないの!」
「怒るな、シシリー殿。…まあ、勝機がないわけじゃなし、それこそ駆け出しの手には負えないモンスターなんじゃ。ここでわしらが殲滅せねば、依頼主も困るじゃろう。むろん、退路は確保しておくに越したことはないがな」
「ん。ここに来るまでに窓が塞がれたり、細工された様子はないもん。逃げたければ、いつだって逃げれるよ。……兄ちゃんがやる気になってるから、たぶん大丈夫だと思うけど」
強敵の予感に、嬉しげにブンブンと腕を振っている兄貴分を、アンジェが半眼で見やりつつ保障する。
ため息をついてシシリーは指示した。
「ハァ…そうね。いいわ、探索を続けましょう。でも無理はしないこと、いいわね?」
「賛成」
異口同音に仲間たちは言った。
使用人の部屋らしいところは素通りし、さらに奥へ続く廊下を行く。
扉が二つあるうち、右手のドアを開いたテアは眉を上げた。
「ここは…?」
一行は赤い絨毯の敷かれた部屋の中へと踏み込んだ。
「…書物も多いし、結構立派な造りね。この家の主人の、書斎兼寝室ってところかしら?」
シシリーが壁一面を覆う本棚を見やった後、一角獣の立派な彫刻が施されたベッドのフレームを撫でて判断する。
部屋に置かれているのはそれだけではなく、リューンの一般家庭では珍しいねじ巻き式の柱時計や、赤と黄色のまだ鮮やかなドライフラワーの飾られた書き物机などがあり、この家の家具選びの趣味のよさを、無言のまま冒険者たちに伝えていた。
「それはそうと、ここには妖魔はいないのね。もうひとつの部屋なのかしら」
「…あら?この童話……」
アンジェは魔道書・政治学・マナー関係など、分類など丸投げしたような本の陳列に興味をおぼえ、色々な本を取り出しては戻していたのだが、一冊を手に取ったところでそれをしげしげと眺めた。
「…なんか不思議な力を感じる気がする…ねぇ、これを読んでみてよ、お婆ちゃん」
「ほ、どれどれ?……おやま、これは…」
「やっぱり、詩人の管轄?持って行く?」
「いや、ここで暗記できる内容のようじゃな。少々待っておれ」
譜面によると、片手で弦を弾くことが可能らしい運指になっている。
ただ、【春暁】という今時季に相応しいタイトルとは裏腹に、荒々しい音階の上下の繰り返しがある。
実際の演奏では、恐らく何人もの奏者がいるように感じるだろうとテアは思った。
呪歌なので、戦闘中の効果としては”その場の心を持つ全員”が高揚するようになっているのだが…。
「敵味方見境なしじゃのう。出てくる敵が、真っ当な精神を持たない魔法生物やアンデッドばかりなら、あるいはこの歌を生かす局面もあるのかもしれんが…」
「後はじっくり宿に帰ってから検証しましょう。それより、これで最後の部屋にいると見当がついたわけですから……シシリー、援護をしてから突入でいいですか?」
「ええ、お願いするわ」
全員がもとの廊下に引き返し、テアとウィルバーによる援護を受ける。
妖魔たちの集中攻撃を後衛に届かせぬようにと、魔力の翼を背から生やしたロンドがドアを開けた。
「!?」
「!?!?!?」
どうやら、これまでの戦闘音は微かに聞こえていたものの、別荘を占拠する際に邪魔らしい邪魔のなかったリザードマンたちはすっかり油断していたらしい。
急に鎧に身を包み武器を手にした冒険者の群れが入ってきたせいか、責任を押し付けあうかのように、人間の耳には可聴できない領域で鳴き声を交している。
「混乱している今がチャンス!」
嬉々としてスコップを構えたロンドに、すかさずテーゼンが釘を刺した。
「おい、火は使うなよ」
「分かってるって!………そういや、そうだったな」
小さい声で付け加えたセリフを聞いたのか聞いていないのか、テーゼンは真っ直ぐに手前にいたウェアウルフへ槍を突きつける。
その攻撃がザックリと狼の左肩を貫通する前には、アンジェの体はすでに敵の死角に入っており、背中側から心臓を狙って短剣が突き出されていた。
「ギャウウン!?」
「ちぇっ、狙いが甘かったか…」
「アンジェ、気をつけて!」
シシリーが警告を発したのは、リザードマンが二匹も彼女の方へと向かったからだったのだが、ホビットの面目躍如というべきか、風に舞う蝶のような動きで見事に攻撃をさばききっている。
≪万象の司≫による魔力回路を頼りに呪文詠唱の集中に入ったウィルバーの横で、慣れた仕草で竪琴をかき鳴らしたテアが、ロンドとシシリーの攻撃が済んだタイミングを見計らい、【まどろみの花】による眠りを敵全体へ仕掛けた。
果たして、中心にいたリーダー格らしきリザードマン以外の全員がその場に横たわった!
「さすがばあ様!」
「………!」
仲間達をことごとく無力化され、憤慨したリザードマンが手にした長剣に気を集めた。
そのまま、そこらにいる騎士よりも確かな足取りでロンドたちの妨害を潜り抜け、ちょうど【理矢の法】による魔力塊を纏わせたばかりのウィルバーに、深い一撃を放つ。
黒っぽい上着を大量の血が濡らし、魔術師の男がその場に膝をついた。
天井まで飛び上がっていたテーゼンが声を上げる。
「ウィル!」
急激な失血に目を回しそうになったウィルバーだったが、その声に辛うじて片手を上げて応える。
うな垂れている人間へトドメを刺さんと剣を振り上げたリザードマンだったが――。
「そりゃ駄目さ」
ロンドがスライディングよろしく滑りこんだ勢いのまま、肘を二足歩行する蜥蜴の丹田へと叩き込んだ。
剣で上段の構えを取っていた怪物が、これを防ぐすべなどない。
まともに食らってよろめく。
「カハッ……」
「はい、さようなら」
≪早足の靴≫で足音を消し、するすると近寄ったアンジェが短剣を彼の延髄に刺した。
絶息して床に横たわる体を一瞥もせず、彼女は取って返して他のリザードマンの首にワイヤーウィップを巻きつける。
――それを機に、他の面々も残った敵を殲滅していく。
血を失った反動で目を回していたウィルバーも、テーゼンの薬草による回復で、どうにか傷を塞がれて立ち上がれるようになった。
「ウィル、大丈夫か?僕が肩を貸すか?」
「いえ……おかげさまで、どうにか自分で立てそうです」
「ウィルバーさん、平気かい?」
「ええ、テーゼンによく効く薬草を使ってもらいましたからね」
「…それにしても、ゴブリン退治と高を括ったら、まさかのリザードマン退治とはなぁ」
ロンドはガリガリと白髪の頭を掻きながら嘆息した。
「ここで愚痴っても仕方ありません。宿に帰ってから、亭主に情報の不備を訴えましょう」
「そうだな。ま、追加報酬はないだろうけど」
「それでも、呪歌はあたしと婆ちゃんで見つけたじゃない!あれ貰えるなら、収入としちゃちょっとしたもんだよ?」
「そっちは依頼主との交渉次第でしょうね…別荘の中にあるものは、報酬で交渉してないもの」
「いやいや、別荘には大したものは置いてないからと言ってたんじゃ。つまり、あの童話とて依頼人は気にしておらんじゃろうよ」
旗を掲げる爪は、賑やかに喋りながら別荘を後にした……。
※収入:報酬1000sp
※支出:
※オサールでござ~る様作、緑の皮膚の妖魔クリア!
--------------------------------------------------------
■後書きまたは言い訳
記念すべき30回目のお仕事は、某所でもシナリオでもお世話になっているオサール様の緑の皮膚の妖魔でした。
オサール様のシナリオは、多々、独特の笑いの間が襲ってくるのですが…傍観者になりがちで冷静沈着なウィルバーにしては珍しく、敵へのリアクションが絶妙で笑っておりました。
緑の肌っていつものゴブリンか~、なんて油断したらリザードマンとか、冒険者にあり得るシチュエーションなのに、シナリオ作者としてなかなか思いつきませんでしたね…。
シナリオ中、別に”炎による攻撃キーコードで別荘破壊”なんてシステムは組まれていなかったのですが、
Qubesで組まれた画面が明らかに木造建築であったので、縛りプレイもどきにそちら関係のキーコードを使わないことに決めました。
結果としてそれなりにリアリティが出て、面白くなったのではないかと思います。
リプレイに書いたとおり、こちらでは吟遊詩人の称号持ちPCを連れて行くと、呪歌【春暁】を入手するチャンスがあります。
もし、「うちにも詩人PCがいるんだけど、どんな支援呪歌つけるか悩んでるんだ~」というプレイヤーさんがおられましたら、こちらの作品に挑戦なさってはいかがでしょうか?
当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。