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Sun.

魔術師からの脅迫状その2  

 旗を掲げる爪と魔術師アイリスは、森の中にある祠に到着した。
 今まで平穏だった雰囲気が嘘のように、肌寒くなるような気配が祠の周囲に満ちていた。
 祠の周りに生えている木々もその影響を受けているのか、伸ばされたのは細い枝ばかりで、近くを通るとまるで棘のようにこちらの肌を引っかいてくる。
 何の変哲もない灰色の石材で造られた封印の紋様が彫られた祠は、素人目にも明らかなほど、すでにいくつか大きなひびが入っている。
 それを目にしたアイリスが、厳しい顔つきになって封印の作業に必要な道具箱を抱え直した。

魔術師脅迫状4

「まずいな…もう綻びが激しくなっている」
「なら一刻も早く作業を行なって下さい。我々は我々で、時間を稼ぐと致しましょう」

 祠を綺麗に封印するためには、古い封印を取り除く必要がある。
 取り除けば当然、中に封じられている妖魔が我先にと飛び出してくるため、それを殲滅するのが旗を掲げる爪が請け負った仕事であった。
 慎重に一定の距離を置いて魔法の文字を刻み込まれた釘を地面に突き刺すと、アイリスはそっと身を起こしてから使い魔に命じた。

「時間が無いか…デイビス、お前は彼らの手伝いをしなさい」
「畏まりました、ご主人様」

 アイリスはスクロールのひとつを読み上げて、妖魔を外部に流出しないように魔法のフィールドを展開した。
 これは妖魔だけではなく冒険者も同様に外に出られないのだが、もとより敵を殲滅するつもりである彼らに、逃げの一手は不要である。
 アイリスが古い石材を動かし、新たな封印の要となる石を設置した。
 同時に、辺りに満ちていた禍々しい気配が動かされた石材へと集束し、石英が砕けるような儚い音と共に黒い煙から影が湧き出てきた。

「要石に魔法的な保護を施し、その後に妖魔の封印にかかる!それまで頼むぞ!」
「任せちゃってよ、魔女の姉ちゃん。絶対に封印の邪魔はさせないからね」

 黒い煙から現れたのは、ゴブリンやコボルトの群れだった。
 大したことはないと思っていたアンジェだったが、まだわだかまっている煙からはもっと大きなサイズの敵が出てこようとしている。
 彼女は≪剣士の護符≫を構えながら、敵の攻撃を避け続けた。
 ウィルバーは封印が出来上がるまでの長期戦になると判断し、とっさに【魔法の鎧】を唱えた。
 アイリスへの刃を防ぐために半円状となったロンド・テーゼン・シシリーは、走り寄ってきた手近なゴブリンから片付けている。

「ほらよっと!今日も好調だぜ!」
「この筋肉馬鹿、こっちにゴブリンの臓物飛ばしてるんじゃねえ!」
「ちょっと!早く【薙ぎ払い】してよ!」

 なんとも賑やかな戦場である。
 その様に呆れたように首を振り、一歩下がったところで【まどろみの花】を歌うタイミングを計っていたテアだったが、急に警戒の声を発した。

「気をつけるのじゃ、皆の衆!ホブゴブリンのほかに、オーガが出てきおったぞ!」
「……婆ちゃんの言うとおり、そろそろ、まずいのが出てくるようになったね」

 オーガは以前にも坑道で戦ったことがあるが、人の肉を好んで食する上位鬼族で、生命力の高い凶暴なモンスターである。
 その姿に、一所懸命に魔力を祠に注ぎ込んでいるアイリスも気づいた。

「く、強力な妖魔が召喚されるようになってきな…」
「あなたには近づけさせません。封印に専念なさってください」

 そうアドバイスすると、ウィルバーは複数相手の攻撃に転じるため、【理矢の法】を唱え始めた。
 丸太のようなと形容されることの多い腕が、力任せに叩き込まれるのを直前で見切り、シシリーは法力を炎へと変換して【劫火の牙】で斬りつける。
 その後ろからやってきたオーガは、互いに不本意ながらテーゼンとロンドのチームワークにより息の根を止めた。
 ウィルバーの放った魔力の矢が各々に妖魔に突き刺さったものの、さらに煙からは、驚異的な回復能力と怪力に俊敏さを具えたトロールの姿まで出てきた。

魔術師脅迫状5

「もう少しだ!この攻撃を耐え切ってくれ!」
「あいつらは炎に弱いんだ、俺の獲物だぜ!」

 アイリスにそう応じたロンドが、スコップの発火能力を最大限生かし、トロールの岩のような色をした肌へと突き刺そうとしたが、意外と素早いステップで避けられてしまった。

「何やってんだ、白髪男!」
「うるせえ、黒蝙蝠!こっちだって真剣なんだよ!」
「きゃあああ!」

 悲鳴をあげたのはシシリーで、固まってやってきたオーガ三匹が【劫火の牙】を使ったシシリーを強敵と判断したのか、代わる代わる彼女を殴りつけたのである。
 一発目こそランプさんの誘導で回避できたものの、続けざまに放たれた二発目と三発目は、肩と後頭部に受けてしまった。

「生きてるか、シリー!?」
「辛うじ…て、ね」

 くらくらする頭を抱えながら起き上がった彼女は、途切れそうになる意識を必死で繋ぎとめながら自らに【癒身の法】をかけている。
 その時間を稼ぐため、アンジェが跳躍してオーガの一匹に【吊り蜘蛛糸】にて束縛し、ひらりと地上に降り立った瞬間に灰色の縞猫が叫んだ。

「ご主人様!方陣の準備が整いました!」
「旗を掲げる爪!よくやってくれた!退いてくれ!」

 真っ白というよりは、白い閃光としかいいようのないものが辺り一面に満ち、冒険者たちはとっさに目を瞑ってしまった。
 再びそれが開かれたとき、光のほとんどは収束していて、新たにアイリスが設置しておいた要石へと吸い込まれていく……妖魔の姿はすでに欠片もない。
 アイリスは帽子をちょっとずらし、緊張状態から発していた冷や汗を片手で拭った。

「ふぅ…成功したようだな」

 力を使い果たした反動だろうか、彼女はどっとその場に座り込む。
 旗を掲げる爪もそれに倣い各々の位置で座り込み始めたが、アンジェだけはシシリーににじり寄って怪我の具合を確認していた。
 幸いにして【癒身の法】の法術は確かに発動しており、シシリーの気を失わせるかと思うほどの激痛は遠い出来事のように消え去っている。

「ああ~、姉ちゃんが無事で良かった!」
「ちょっと危なかったわね。三匹が同一の目標に攻撃するとは思ってなかったから、油断したわ…」
「俺もトロール相手にしながら、お前がやられたかと思ってヒヤヒヤしたぜ」
「それにしても、あれだけの妖魔の猛攻を耐え切るとは、君たちは強いのだな」

 孤児院組みの和気藹々とした様子に、先ほどまでの真剣な表情と打って変わって、アイリスはにこやかな表情を見せている。

「まぁ良い、これで封印も完了した。あの村が滅ぼされることもないだろう……これは礼金だ。取っておいてくれ」

 アイリスはそう言って、懐から取り出した銀貨の入った袋を、旗を掲げる爪へ差し出した。
 思わず受け取ったテーゼンは、その美貌をきょとんとさせて訊ねる。

「いいのかよ?」
「君達のおかげで、貯めておいたお金を使わなかったからな。…もらってくれ」
「あいよ。…これで依頼も終わりか…村へ帰るか」

 悪魔の言葉に全員が頷き、吉報を待つ村長のもとへ戻ることにした。

「村長へは魔術師を無事追い払ったと報告しておくよ。あんたは…」

 デイビスの手を借りて立ち上がったアイリスが頷く。

「この森から姿を消すさ。祠のことさえなければ、私がここに留まる理由はもうないからな」
「おぬしの行き先に幸あらんことを祈っておるよ」
「ああ、さらばだ、勇敢なる冒険者たちよ。君達の活躍は決して忘れない…」

 アイリスとその使い魔と別れ、村長の家へ帰還したパーティは、その言葉どおり脅迫に怯える必要はなくなったと依頼主に伝えた。

「そうでしたか…さすがは冒険者様でございます。大したおもてなしは出来ませんが、これより感謝会を開きたいと思うのですが…」
「ああ、参加させてもらうよ」

 何しろ、アイリスが荷物をまとめて庵から離脱するだけの時間を稼がねばならない。
 だとすれば村人全員が集まるであろう宴を開かせて、誰も森へ赴こうなどという暇を与えないことが、テアによる最上の策であった。
 旗を掲げる爪は銀貨600枚の他に、寒村ではあるものの精いっぱいのもてなしを受け取ってからリューンに帰還した。
 その後、あの村について噂を聞くことはなく、史書を紐解くと彼ら冒険者は魔術師から村を救ったことになっている。
 だがしかし、それよりも大きな脅威から村を救ったという事実は、冒険者たちと、あの猫を連れた魔術師だけが知っているのであった。

※収入:報酬2100sp
※支出:
※比呂由希様作、魔術師からの脅迫状クリア!
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■後書きまたは言い訳
29回目のお仕事は、VIPシナリオから、比呂由希様の旧作まとめフォルダに入っていた魔術師からの脅迫状でした。
デイビスが使い魔になった経緯などはシナリオのとおりなのですが、テーゼンが感じた森の気配や、アイリスを排斥しようと動いている団体の行動理由などは、私が勝手に組み立てたものです。
作者様にもしご不快な思いをさせましたら、大変申し訳ありません。
なぜかと言うとこちらの作品、すぱっと短い時間でプレイできるのですが、エンディングが色々とありまして…魔術師を村長の言うとおり討伐する、妖魔退治を手伝った上に魔術師を倒す、お金を2000sp払って魔術師の封印を完成させるなど、選択肢次第で私が書いたエンディングとは違う方へといくことが可能です。
ただ、魔術師討伐だけはしたくなかったので(猫好きで気遣いできるアイリスさんきっといい人)、お尋ね者とされる相手を額面どおり捉えることのないよう、色々と理由をつけました。
……本当は、封印後にアイリスさんやっつける方が、点数高いんですけどね(ぼそっ)。
それにしても、アイリスさんが使った【生命感知】の魔法について文章を書くため、改めて某庵で見直していたのですが、あれって双方全員の暴露効果ついてたんですね。精神属性+1ラウンドだけという制限はありますが、そんな効果があったのかとびっくりしました……まだまだ勉強不足です。
街シナリオの依頼をクリアしていた関係もあり、実はもう7レベルまで達している旗を掲げる爪なんですが、もう少しだけ中レベル帯のシナリオを楽しんでから、レベルを変えようと思います。

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

2016/04/03 12:08 [edit]

category: 魔術師からの脅迫状

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