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魔術師その3  

 また十数分ほどは同じような景色ばかりの回廊だったが、急に前の方が開けたと思うと、灰色の均等な大きさの石が、まるでレンガ造りのように並んだ壁に、一際大きな樫材らしきドアがある。
 素早く音も立てずに扉へ近寄ったアンジェは、ホビット特有の器用さと身の軽さで調べ始めた。
「この扉には鍵も罠もないね。問題なく開けられそうだよ」
「扉の先に魔術師がいるに違いないわ。皆、出来るだけの用意をしてから行きましょう」

 アンジェの報告を受けて、シシリーが他の一同へそう指示を飛ばすと、すかさずいつもの援護魔法が味方の体へと掛けられていく。
 何しろ、今回の敵は人を殺すことに何の禁忌も持たない魔法使いである。
 魔法に対する対策は、立てておくに越したことはない。
 幸い、ウィルバーの扱う【飛翼の術】で作られる魔力の羽は、回避だけに役立つのではなく、魔法への抵抗力も向上させてくれる効果がある。
 ウィルバーは生命力が豊富で心配のないロンドと、すでに光の精霊の守りが多すぎて魔力の羽が入る余地のないシシリーを外して、他の仲間たちに【飛翼の術】をかけた。
 自身にも護りは欲しかったのだが、それよりも敵の抵抗を早く鎮圧する為に、【理矢の法】を選択して魔力の矢を準備した。
 扉に手をかけたテーゼンは、仲間を振り返って告げた。

魔術師5

「この扉を開けたら後戻りは出来ねえぞ、シシリー。準備はいいか?」
「ええ。行きましょう」

 美貌の青年が扉を開ける――その向こうにあるはずの部屋の中は真っ暗だった。
 ベルトポーチに潜んでいる光の精霊たちが、闇の気配に動こうとするが、シシリーの手にそっと押さえられてとりあえず大人しくなる。
 全員が、神経を尖らせてこの中にいるであろう魔術師の気配を探る。
 ほんの僅かな光源のすぐそばに、目的の人物はいた。
 宿の屋根裏部屋で魔法の本を読んでいたウィルバーのように、蝋燭の明かりらしきものを頼りに、冒険者たちへ背を向けた状態で何か呟いている。

(気がついていないんだわ…)

 目が暗闇に慣れてきた頃合を見計らって、シシリーは全員に素早く合図を出す。
 旗を掲げる爪は音を立てずに忍び寄って、全員で奴を包囲する形を作った。

「おい」

 静まり返った室内の中、男性としてはやや高いテーゼンの声は、妙に響いた。
 悪魔である彼の双眸には、暗闇を苦とすることもなく狼狽した魔術師の顔が映っている。

「…!?な、なんだお前等!?」
「それを知る必要はねえぜ。グェス・ゲェス」
「な、なんで僕の名前をッ…!?」

 アンジェの短剣がちゃきり、と音を立てた。

「問答無用!」

 決着は、しごくあっさりしたものだった。
 槍をしならせて足元を攻撃したテーゼンに続き、すでに逆手に短剣を構えていたアンジェが彼の胸を突き刺したのだ。

「ま、待って、頼む…殺さないで!許してくれ……!」

 自らの赤に染まった敵が、顔を歪めて命乞いを始める。
 醜いな、とテーゼンは思った。
 彼の感じた美醜とは、単なる顔の造作ではなく――己の振る舞いによって、周りと自分にどういう影響を与えるのかということのようだ。
 目の前の男は、耐え難い嫌悪感を彼に与え続けている。

魔術師6

「そうやって命乞いする時間さえ与えずに、何人殺してきやがった?」
「ま、まって…」
「あの世で悔いるこった」
「安心して。私たちもいずれそっちに行くことになるから」

 淡々と付け加えたのは、長剣を引っさげたシシリーである。
 その表情の無さに悪寒を感じて、彼は後退した。

「ヒ…ッ」

 赤子が這いずるように逃げようとした魔術師の背中から、長剣が躊躇いなく振り下ろされる。

「ふう」

と息をついたシシリーは、これまでの彼女とは何か変わったようにアンジェに思われた。
 部屋の片隅にあったチェストから、銀貨200枚を見つけて徴収していた盗賊の娘は、急に不安になって声を掛ける。

「姉ちゃん、帰ろうよ!」
「ええ、そうね」

 ホビットの妹の呼びかけに振り返った彼女は、いつもの彼女であった。
 その横を、魔術師の死体へと近寄った男がいる。
 生活用品である折り畳みの小さなナイフを取り出したウィルバーは、死体の髪を少量切り取った。

「何してんだ、ウィル」
「少し…こいつの髪を…ですね。よし、もう終わりです。帰りましょう」

 面白ずくで人を殺していた魔術師の住処を出た旗を掲げる爪は、帰路の途中で立ち寄った自警団でヨンドネ村と魔術師について話をしておいた。
 しかし、この後に村へ人々が戻ったのか、あの村が再興されたのかどうか、冒険者たちはこの後に情報を仕入れたことはない。
 ただ、ウィルバーは予め死体から採取しておいた髪を、賢者の搭に提出して事情を詳しく説明しておいたので、グェス・ゲェスの元関係者から謝礼と、あるいは口止め料も込みで銀貨300枚を追加で貰った。
 彼のおかげで搭の研究成果が散逸しなかったこともあったのだろう。
 ありがたく金の入った小袋を懐に収めた後、≪狼の隠れ家≫への帰途で彼はため息をついた。

「やれやれ、うちのリーダーはある意味で一皮剥けたようですが…それが吉と出るか、凶と出るか…」

 彼の知る限り、凶悪な妖魔や狡猾な邪教徒などを討伐はしても、積極的に殺そうという姿勢はついぞ見せなかった娘である。
 彼女のあの変化がこれからどうパーティに影響してくるか、注意して見ておこうと、ウィルバーは己に誓ったのであった。

※収入:報酬500sp、≪魔法のルーペ≫、≪売れそうな本≫、≪傷薬≫
※支出:
※なろ様作、魔術師(貼り紙は急募)クリア!
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■後書きまたは言い訳
23回目のお仕事は、なろ様の魔術師でした。
リードミーの注意書きには、「このシナリオでは選択肢によってPCがためらいなく殺人行為を犯す描写があります」「イメージにそぐわない場合、プレイをお控えくださいますようお願いいたします」とあったのですが、シシリーの内面の変化をちょっと表しておきたかったので、あえてこちらのシナリオをセレクトさせていただきました。
結果として、かなり善人パーティを体現していた彼女の、不穏さを含んだ変化が書けたのではないだろうかと思っております。
そもそもこのシナリオで、魔術師はグェス・ゲェスのこと知りませんし、エンディングもこんな感じではありませんので、予めご了承下さい。
ウィルバーは賢者の搭を出て市井にいますが、それまでは搭の魔術師としてずっと頑張ってきた人なので、恐らく搭の資料を持ち出すといったスキャンダルなら、彼が知っていておかしくはない、と判断してのことです。
なろ様、ご不快に思われましたら申し訳ありません。

こちらは短編シナリオなのですが、そうと感じさせない、ちょっとしたキーコードの仕掛けが、色々と置かれている作品でもあります。
勧善懲悪がはっきりしているというか、魔術師がかなり外道なために戦う士気が上がる作品だと思うので、そういったシナリオを好む方にお奨めいたします。
シナリオのレベル対象は1~5とかなり幅が広く、ラスボスである魔術師も入ってきた冒険者たちの実力に応じたレベルに変わるようで、作者さんの細やかな気遣いが垣間見えますね。
このシナリオのために、シシリーへ【御使の目】という暴露効果や鑑定、魔力感知のキーコードが入ったスキルをつけていたのですが……結果からいうと、無駄に終わりました(笑)。
なぜって、スキルについている”鑑定”のキーコードの方が先に反応しちゃうんですね。
こうなってしまうと、【盗賊の眼】を使っているのと変わらないので、途中から諦めて”鑑定”と”解錠”、”魔法を解除”のキーコードだけで突破してみました。
これは下手にスキルで突破するよりは、アイテムで双方単体に効果発動する魔力感知を使った方が、全ての仕掛けを見れるかもしれません。
あるいは”鑑定”キーコードのついていない、”魔力感知”だけできるスキルとか…私もスキル購入の前に、もう少し色々と検討すべきでした。反省。
さて、次はこのシナリオで一人だけ別の依頼を受けていたという、悪魔テーゼンの話にしようと思っております。
どんな感じのが相応しいかなー、とワクワクして考えていたり。

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

2016/03/22 12:59 [edit]

category: 魔術師

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