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えんまの領域その2  

「この気配の数…間違いなく、大勢の妖魔がいるよ。この先は絶対危険だね」
「匂いもきついしな」

 アンジェとテーゼンが、それぞれ仲間に報告する。

 どうしてウィルバーの感じた異変を、悪魔であるテーゼンが感じ取れなかったかと言うと、どうやらこのオークの悪臭で感知能力が低下しているためらしい。
 それでも武器を取っての戦いには支障がないと主張するので、一同は奥へ進む前に、再び戦いの準備をはじめることにした。
 テアの【活力の歌】、ウィルバーの【魔法の鎧】、そして……。

「僕に【飛翼の術】?」
「つけておきなさい。この翼は、武器攻撃を避けるだけではなく、魔法からの抵抗にも使えるのですから」

 蝙蝠の黒い翼の上から、魔力による白い翼が生えている。
 ちょっとだけ情けない顔になったテーゼンだったが、仲間が心配しているのだからと、あえてその状況受け入れることにした。
 スコップを嬉しそうに振っているロンドは、犬猿の仲の相手をからかうこともせずに、前方に潜んでいるであろう強敵の予感に嬉しそうな様子を隠さない。

「オークどもに、俺たちの力を見せ付けてやる!」
「この、筋肉馬鹿……」
「頼もしいと言えば言えるのですけどね」

 呆れたような年長者組みの感想であったが、シシリーの合図に応えて体勢を整える――そろそろ、突入するべきだ。

「うおおおおおおお!!」

 地獄の底から吼えるような男の声と共に、旗を掲げる爪は戦場へと走った。
 一際広くなった空間の中を、ランプさんとフォウが手分けして照らす。
 彼らの柔らかなクリーム色の光の下、なんとオークの集団と共に、オーガが二体も揃っていた。
 これはさすがに計算外であったため、思わずテーゼンが唸る。

えんま4

「なんっつう数だ!こりゃあ追加報酬を貰わねえとなあ…」
「そんなことは後だよ後!―――来るよ、羽の兄ちゃん!!」

 アンジェは飛び上がって、複数のオークが彼女に振るった武器を避けた。
 これが一番手強そうだと感じたロンドが、敵陣の真ん中へと飛び込み、オーガの一体を足止めする。
 もう一体のオーガには、≪早足の靴≫の能力を最大に生かして、アンジェがフェイント混じりの攻撃で撹乱を行なっている。
 その隙にテーゼンが充分にしならせた槍で敵たちを薙ぎ払い、転んだ手近なオークへシシリーが愛剣である≪Beginning≫を振り下ろす。

「これはまずそうですねえ…」

 思ったよりも多い敵の数に顔をしかめたウィルバーは、とっさの判断で動きの鈍いテアへ【飛翼の術】による援護を与えた。
 突出してロンドとアンジェが暴れている分、取りこぼしたオークたちの攻撃を受けることがあるかもしれない、と判断してのことである。
 彼のその考えは当たっており、オーガを見事に足止めしているロンドや、手持ちの武器を振り回しているテーゼンとシシリーの横をすり抜けるよう、オークたちが後衛のテアやウィルバーたちへ走り寄ってきた。
 テアも2度は攻撃を受けたものの、魔力による翼が攻撃を逸らし、≪鳳凰の盾≫を構えていたおかげで、出来る限り軽傷に抑えていた。
 さらにオークがもう一匹、今度はウィルバーを狙って武器を振りかざしたものの、

「そうはいかないんだな~」

と腕輪から鋼糸を引っぱり出したアンジェの【吊り蜘蛛糸】の技により、拘束されてしまった。

「おおおおおおおお!!!」

 雄々しく吼えてみせたロンドが、ついに相手取っていたオーガの脳天をスコップで叩き割る。

「こっち終わったぜ!アンジェ、今助ける!」
「あんま無理しないでね、兄ちゃん!」

 この2人はさすが長年の絆と言うか、変幻自在のアンジェのフェイントと、ロンドの大柄な体躯に見合った馬鹿力で叩き込まれる渾身の一撃が、あっという間に分厚いオーガの皮膚に傷を刻んでいった。
 痛みを堪えて【まどろみの花】を歌ったテアの眠りの誘いに抗えきれず、生き残っていたオークと、アンジェが撹乱していたオーガが、揃って膝を折る。

「今よ、みんな!」

 シシリーの号令で、一気に眠りこけている鬼族たちへ止めを刺していく。
 最後に残ったオーガはロンドが【花葬】の技で、端の方にいたせいであまり攻撃を受けていなかったオークについては、走る速さを攻撃の衝撃に生かしたテーゼンが討ち取った。

「勝った…!」

 鋼糸を腕輪に収納し終わったアンジェが嬉しそうに呟くと、互いに仲間たちの傷の具合を確かめていた年長組みが、首を横に振って口々に慨嘆した。

「こんな数のオーク、それにオーガがいるなんて…」
「オークの住処、という話じゃったのにのう。冒険者の仕事というのは、何が起こるか分からんものじゃ。まったく酷い目にあったわい」

 テーゼンが戦闘前に嘆いたとおり、依頼料を増額してもらわないと割に合わないだろうとテアが考えていると、全員の無事を確認し終わったウィルバーが呟いた。

「これで依頼達成、ですかね?」
「あー…。生き残りがいないとも限らねえし、ざっと見回っておいたほうがいいんじゃねえか?」
「さっさと回って、早く帰ろう。もう豚の臭いはたくさんじゃ」
「そうだね」

 しみじみとアンジェが頷いた。
 肩にランプさんとフォウを止まらせたシシリーが、ふと顔をあげてまだ北に続く坑道の奥の闇を見つめている。

「この先……まだ続いているのね」
「うん。姉ちゃん、行ってみる?」

 臭い場所はごめんだったが、テーゼンが指摘したとおりに生き残りがいるとまずい。
 一応見ておくべきだろうと、彼らはもう一度武器を握り直して、足を前に進め――ようとした、その時。

「Grooooo………」
「な、なんだろ一体…!?」

 坑道の奥から聞こえる、何者かの叫び。
 その咆哮は空気を叩き、地を揺るがし、冒険者たちの皮膚を粟立たせた。
 アンジェの脳裏に過ぎったのは雷鳴であった。
 しかし、その咆哮の出所は坑道の最奥。
 天から最も遠い、地の底からである。
 びりびりと焦点具が震えるのが伝わり、ウィルバーは眉根を寄せた。

(これは、魔力のパルス…!?何か居るとは思っていましたが、この圧力……)

 咆哮に乗せられ、密度の濃いマナが坑道の中を伝播していく。
 ウィルバーの第六感はそれを鋭敏に捉えた。

(これは熱……いや、赤きマナか?つまりこの魔力の主は――)

 強大な力を有する、炎の魔物だということである――!
 さすがにここまで近づくと、鈍った感知能力にも感じ取れるものがあったのか、テーゼンが全員へ警告を発した。

「来るッ――――!!」
「な!!?」
「Wooooooooooaaaaaaa!!!!」

 まるで噴火のように転がり出てきた赤黒の巨鬼が、三度目の雄叫びを上げる。
 坑道を埋める圧倒的な質量。
 冒険者たちの喉を焼く熱量。
 仲間――ではなく、己が手勢を冒険者たちに滅ぼされた王たる鬼は、その満身を怒りに染め上げていた。

えんま5

「デカい!!普通のオーガの倍はあるぞ!」
「喜んでじゃねえよ、この筋肉馬鹿!」

 槍を構え直したテーゼンが怒鳴りつけたが、存外、ロンドは落ち着いた様子で現状を把握していた。

「こいつが親玉か。仲間を殺されて怒り狂っている。逃げ切れないぞ…!!」

 背を向けた瞬間に、丸太の三倍はあろうかという豪腕が頭に振り下ろされることは想像に難くない。
 溶鉱炉を思わせるほどの炎を巨躯に蓄えた異形の怪物は、旗を掲げる爪をその視線で捉えると、敵対する者として認識したらしく、脅かすように吼えかかった。

「G…Gggaaaaaaaaaaaaa!!!」
「上等だ!!掛かってこい!!!」

 ロンドがスコップを振り上げ、渾身の一撃を叩き込もうとするも、火山の力を得ているオーガはその攻撃を皮一枚の差で回避し、続くシシリーのロングソードもかわしてみせた。

「げっ」
「これならどうだ、【龍牙】!」

 気合の篭った穂先は、しかしオーガによって跳ね除けられてしまう。

「何!?」

 今度こそ本当の驚愕に晒されたテーゼンを無視して、オーガは一番動きの鈍そうな老婆へ、その豪腕を叩き込んだ。

「婆ちゃん!」
「テア婆さん!」

 ロンドとアンジェが異口同音に叫んだが、台風にも等しいその一撃は、幸いにもまだ効果時間内にあった魔力による翼で最大限押さえ込まれている。
 それでも辺りを破壊した瓦礫が老婆の体を打ち、

「ぐっ……」

と彼女は呻いて膝をついた。

「ちっ、これならどうです!?」

 炎の魔物と見てウィルバーが放った【蒼の軌跡】だったが、その冷気の帯はなんと赤黒いオーガの表皮に宿る熱に弾けてしまった。
 効果的なダメージは無理でも、相手の足止め程度はできるだろう――と予測していたウィルバーにとって、それは信じられない事態であった。
 悪夢のような戦闘であった――巨体のはずのオーガはこちらからの攻撃をことごとく避け、辛うじて命中率にかけては余人の追随を許さないアンジェの一撃こそ食らったものの、それが大したダメージになった様子はない。
 再びウィルバーが【蒼の軌跡】を先ほどと同じ場所へと放つも、やはり対して効いているようには見えなかった。
 そんな風に戦っているうちに、今度は多数を相手取るのが面倒になったらしいオーガが、その腕を薙ぎ払うように振り回してくる。
 上方へと飛んで逃げたテーゼン以外の全員がその攻撃に捉えられ、地面へと叩きつけられた。
 
「ぐおお!」
「きゃあああ!?」

 悲鳴が上がる中、体勢を整えたテアが【安らぎの歌】で全員の体力を何とか回復する。
 ロンドが呻く。

「このままじゃ……畜生、ちょっとでも動きが止まってくれれば……」
「動きを止めるのは…あたしの、専売特許でしょ……!?」

 一足先に起き上がったアンジェが、再び腕輪から鋼糸を引き出した。

「当たれえええ!」

 鋼糸はいったん絡まったものの、太い腕に弾かれて千切れる。

「うそっ!?」
「いいや、よくやったアンジェ!」

 彼女の糸を千切るその一瞬――ロンドは、隙を見つけて【杭打ち】の技を叩き込んだ。
 スコップの平面で急所を殴打し、生き物を衝撃でその場に留める――彼の望んだとおり、恐るべきオーガはその場に釘付けになった。

えんま6

 次々と攻撃が叩き込まれ、見る見る分厚い皮膚に傷が蓄積される。
 やっと衝撃から立ち直ったものの影響はまだ続いており、動きの鈍ったオーガを武器で捉えることは、体勢を立て直した冒険者たちには難しいことではなくなっていた。
 テーゼンの【薙ぎ払い】とアンジェの会心の一撃が決まり、最後に――。

「おおおおりゃあああ!」

 ロンドの【花葬】が、止めを刺した。

「Wooo…Woooooaaaaaaaaa!!!!」

 …灼熱の体が崩れ落ちる。
 脈動していた焔の心臓はその動きを止め、獲物を射止める羅刹の瞳はその光を失った。

「もう、さすがに隠し玉はないでしょうね…?」
「勘弁してください。もう動けません…これで依頼達成ですよ。間違いありません」

 リーダーの少女にそう応じると、やれやれとウィルバーはへたり込んだ。
 その後、無事に≪狼の隠れ家≫に帰り着いた旗を掲げる爪の報告に驚いた宿の亭主は、彼らの無事を労った後に、坑道のチェストの中に保管されていたぬいぐるみを見てさらに驚いた。

「この豚のぬいぐるみ……あの名人トーマス=ゴールドの作品じゃないのか?」
「トーマス=ゴールド?」

 博識のウィルバーも首を捻る中、おやと声をあげたのはテアであった。

「そりゃ、一部のマニアに根強い人気を誇っている人形作家じゃないかえ?」
「ああ。ただの玩具じゃなく、特殊な効果を色々含んだ作品を発表しているっていうので、マジックアイテムをやり取りするように高値のつくことが多いんだ。なんでこんなもんが坑道に…」
「え、それってこの豚さん、返さないと駄目なの?」

 ようやく話の見えてきたアンジェが、もっとも懸念する事を訊ねた。
 宿の亭主が首を横に振る。

「いや、契約内容は『鉱山と関係のないものは冒険者の報酬に』だったからな。どう考えても、ぬいぐるみは鉱山と無関係だろう」
「ってことは……これ、売っちゃってもいいんだ」
「というか、特殊効果が何か気になりますねぇ…」

 代わる代わる、何の変哲もなさそうなピンクの豚を覗き込む一行に、何も知らない給仕の娘が目を丸くした。

※収入:報酬800sp、≪薬草≫3個、≪ぶたちゃん≫
※支出:御心のままに(烏間鈴女様)にて【葬送の調べ】、傭兵都市ペリンスキー(RE様)にて【地霊咆雷陣】、ネジ倉庫(もみあげ様)にて【御使の目】購入。
※River様作、えんまの領域クリア!
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■後書きまたは言い訳
22回目の仕事は、River様のえんまの領域でございます。
オーク退治か臭いだろうな~とのんびり出かけたら、とんでもない強敵とガチバトルに入るという、冒険者の仕事は想像を超えることがあるという冒険です。
……こちらのシナリオ、隠し要素があって、本当なら【掌破】かそれに類する技能を持って入ることをオススメします。【炎殺掌破】、欲しかったんだけども…旗を掲げる爪の技能計画に、【掌破】を入れる余地がなかったんだよな…。

いやあ、火山オーガは強敵でした!
あんまりちょうどいいレベルの強敵だったんで、うっかりパーティ内の筋肉馬鹿が大喜びでした。
ビルダーを見ると、一部は評価メンバによる処理で、好戦的な奴が「掛かって来い」というセリフを言うようになっていたのですが、「デカい!」の方のセリフはランダムメンバなんですね。
ロンドの執念、恐るべし。
こういうランダムの神の悪戯って面白くて好きです。
シナリオ内では、まだちょっとだけ、シシリーがテーゼンに対してぎこちないのですが、追々それは解消されていくでしょう……というか、それどころじゃない事件が出てくるでしょう。
シシリーとしても悪魔全てを容認するわけじゃなく、神の使いと言われた青年との邂逅の後なので、人と交流を図る異形と呼ばれる存在に対して、まず相手の本質を見定めることが肝要なのでは、と考え始めている感じでしょうか。
それが聖北教にとって正しいことかどうかは、これから先の冒険で分かっていくのかな。

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

2016/03/21 12:48 [edit]

category: えんまの領域

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