Sat.
遺跡に咲く花 3 
ジグがわざわざ鍵を自分でかけて、部屋に閉じこもって考え込んでいた石版の仕掛けは、あっという間にジーニが解いてみせた。

爆音とともに石像が壊れるのを、余裕の笑みを浮かべてジーニが見やり、仲間たちが尊敬の念を籠めて彼女を誉める。
「まあね。あたしにかかれば、どってことないのよ」
だが、すぐ一行を落胆が迎えた。突き当りの部屋には何も見つからなかったのである。
「これで終わり?」
虚脱したようなリィナの横をすっと通り過ぎ、ジグが「ちょい待ち」と言って、辺りを念入りに調査した。
「あるやないの~」
ジグが見つけてみせたその穴は、人が一人通れるくらいの大きさで、光が届かないため、どれくらいの深さなのか、見当もつかない。
「これは・・・・・・・・」
「これは、結構深いかもなぁ」
言葉を切って考え込んでしまったアレクの台詞を、ジグが補足して口に出した。
こういう時に、空中浮揚などの呪文があれば下りれるかもしれないが、あいにくとジーニの覚えている呪文書のストックにそれはない。
ロープみたいなものがあれば、というジグの呟きに、一番早く反応したのはアウロラだった。
「あの蔦・・・!」
「ん?ああ、鍵を見つけた部屋の蔦か!」
「あれならロープの代わりになるんじゃないですか?」
「結構丈夫だったしな。よし。いったん戻るぜ」
アウロラの思い付きを得て、実際に蔦を払った経験のあるギルが言った。
蔦の多い部屋に戻り、目的の物を必要分だけ手に入れた一行は、急く気持ちを抑えつつ扉に近寄る。
すると、見覚えの無い蔦が扉にかかっているのを見て、邪魔そうにギルが斧で払おうとした。
リィナが、蔦であるはずのそれが、ありえない動きでうねったのに気づいて、大声で叫んだ。
「そ、それ、蛇よ!!」
蔦によく似た色合いの大蛇が三匹、遺跡の中でよほど腹を空かせているのか、牙をむき出しにして襲ってきた。
常に無く慌てたアレクだったが、【飛礫の斧】の技で、崩れていた遺跡の一部を炸裂させ、つぶてで蛇を怯ませる。

その間に呪文を紡ぎ終わったジーニが、すかさず【眠りの雲】で大蛇たちを眠らせた。後は、多人数を頼りにしたタコ殴りである。
あっという間に大蛇を退治し終わった一行は、手足の無いものを気持ち悪がるジグを慰めつつ、穴に蔦を垂らしに戻った。
しかし、ほっとしたのもつかの間。
「いいアイデア」と喜んだジグが、すぐさま顔色を変えた。
それは他の面子にもすぐ分かった理由で・・・・・・なんと穴そのものが崩れて蔦が切れてしまい、捕まっていた全員が落ちてしまったのである。
「ぐへっ」
「いった~い。なんなのようっ!」
リィナの弾力ある尻の下敷きにされたジグを、ミナスとアウロラで助け出し、一行は息をついた。
「みんなは・・・なんとか、無事のようだな」
ギルが周りを見回して言う。落ちたのは災難だったが、骨折した者もおらず、誰一人としてはぐれなかったのだから、不幸中の幸いという奴だ。
穴が崩れたのだから、上に戻ることはできない。
結局、細い通路を進んで先の部屋へでることになった。
エディンの調べたところ、罠も鍵もないと判断したドアを開ける。
「これは・・・」
アウロラが、呆然として呟いた。
赤いケーブルに繋がれた無数の水槽らしき物が、部屋のあちらこちらに佇んでいる。
しかし、どの水槽も空だ。
「この部屋は何や・・・?」
警戒信号に何か灯っているのか、今までに無く鋭い目で辺りを探るジグの言葉に、ミナスが言った。
「これは・・・水槽なのかなあ?」
「あっ!見てっ・・・・・・あの真ん中の水槽!」

リィナが指さす先に、たった一つだけ、紫の花のようなものがおさまった水槽がある。
自分が聞いたフィロンラの花の特徴とそっくりだ、と主張するリィナに、ジーニが太鼓判を押した。
「文献で見たのと同じね。間違いないと思うわ」
「培養が難しいってのは、環境に弱いってことか・・・?あの水槽から、出しちまって問題ないのかよ?」
「エディンの心配ももっともだけど・・・あの馬鹿でかい水槽ごと持ってくのは、無理よ」
「もうひとつ、注意すべきだろ」
ぼそりとアレクが言う。
「古代文明期の研究室だ・・・どんな仕掛けがあるか分からん。できる備えはした方がいいんじゃないか」
彼の台詞に、ジーニとアウロラ、ミナスがそれぞれ補助魔法をかけることにした。ミナスに至っては、【雪精召喚】でスネグーロチカを呼び出している。
できれば、この準備がさして意味の無い行動であればいいが・・・と思いながらも、エディンは覚悟を決めて水槽を割った。
ふわりと紫色のフィロンナの花が、エディンの手元に落ちる。
しばらく警戒したが、何の反応も無い。
胸を撫で下ろしたアウロラがきびすを返し、他の仲間に呼びかけようとした、その瞬間。
「な、何っ!?」
リィナが驚きの声をあげ、その小さなガーディアンたちを見やった。
アウロラが彼女を庇いながら叫ぶ。
「気をつけて、蜂よ!」

爆音とともに石像が壊れるのを、余裕の笑みを浮かべてジーニが見やり、仲間たちが尊敬の念を籠めて彼女を誉める。
「まあね。あたしにかかれば、どってことないのよ」
だが、すぐ一行を落胆が迎えた。突き当りの部屋には何も見つからなかったのである。
「これで終わり?」
虚脱したようなリィナの横をすっと通り過ぎ、ジグが「ちょい待ち」と言って、辺りを念入りに調査した。
「あるやないの~」
ジグが見つけてみせたその穴は、人が一人通れるくらいの大きさで、光が届かないため、どれくらいの深さなのか、見当もつかない。
「これは・・・・・・・・」
「これは、結構深いかもなぁ」
言葉を切って考え込んでしまったアレクの台詞を、ジグが補足して口に出した。
こういう時に、空中浮揚などの呪文があれば下りれるかもしれないが、あいにくとジーニの覚えている呪文書のストックにそれはない。
ロープみたいなものがあれば、というジグの呟きに、一番早く反応したのはアウロラだった。
「あの蔦・・・!」
「ん?ああ、鍵を見つけた部屋の蔦か!」
「あれならロープの代わりになるんじゃないですか?」
「結構丈夫だったしな。よし。いったん戻るぜ」
アウロラの思い付きを得て、実際に蔦を払った経験のあるギルが言った。
蔦の多い部屋に戻り、目的の物を必要分だけ手に入れた一行は、急く気持ちを抑えつつ扉に近寄る。
すると、見覚えの無い蔦が扉にかかっているのを見て、邪魔そうにギルが斧で払おうとした。
リィナが、蔦であるはずのそれが、ありえない動きでうねったのに気づいて、大声で叫んだ。
「そ、それ、蛇よ!!」
蔦によく似た色合いの大蛇が三匹、遺跡の中でよほど腹を空かせているのか、牙をむき出しにして襲ってきた。
常に無く慌てたアレクだったが、【飛礫の斧】の技で、崩れていた遺跡の一部を炸裂させ、つぶてで蛇を怯ませる。

その間に呪文を紡ぎ終わったジーニが、すかさず【眠りの雲】で大蛇たちを眠らせた。後は、多人数を頼りにしたタコ殴りである。
あっという間に大蛇を退治し終わった一行は、手足の無いものを気持ち悪がるジグを慰めつつ、穴に蔦を垂らしに戻った。
しかし、ほっとしたのもつかの間。
「いいアイデア」と喜んだジグが、すぐさま顔色を変えた。
それは他の面子にもすぐ分かった理由で・・・・・・なんと穴そのものが崩れて蔦が切れてしまい、捕まっていた全員が落ちてしまったのである。
「ぐへっ」
「いった~い。なんなのようっ!」
リィナの弾力ある尻の下敷きにされたジグを、ミナスとアウロラで助け出し、一行は息をついた。
「みんなは・・・なんとか、無事のようだな」
ギルが周りを見回して言う。落ちたのは災難だったが、骨折した者もおらず、誰一人としてはぐれなかったのだから、不幸中の幸いという奴だ。
穴が崩れたのだから、上に戻ることはできない。
結局、細い通路を進んで先の部屋へでることになった。
エディンの調べたところ、罠も鍵もないと判断したドアを開ける。
「これは・・・」
アウロラが、呆然として呟いた。
赤いケーブルに繋がれた無数の水槽らしき物が、部屋のあちらこちらに佇んでいる。
しかし、どの水槽も空だ。
「この部屋は何や・・・?」
警戒信号に何か灯っているのか、今までに無く鋭い目で辺りを探るジグの言葉に、ミナスが言った。
「これは・・・水槽なのかなあ?」
「あっ!見てっ・・・・・・あの真ん中の水槽!」

リィナが指さす先に、たった一つだけ、紫の花のようなものがおさまった水槽がある。
自分が聞いたフィロンラの花の特徴とそっくりだ、と主張するリィナに、ジーニが太鼓判を押した。
「文献で見たのと同じね。間違いないと思うわ」
「培養が難しいってのは、環境に弱いってことか・・・?あの水槽から、出しちまって問題ないのかよ?」
「エディンの心配ももっともだけど・・・あの馬鹿でかい水槽ごと持ってくのは、無理よ」
「もうひとつ、注意すべきだろ」
ぼそりとアレクが言う。
「古代文明期の研究室だ・・・どんな仕掛けがあるか分からん。できる備えはした方がいいんじゃないか」
彼の台詞に、ジーニとアウロラ、ミナスがそれぞれ補助魔法をかけることにした。ミナスに至っては、【雪精召喚】でスネグーロチカを呼び出している。
できれば、この準備がさして意味の無い行動であればいいが・・・と思いながらも、エディンは覚悟を決めて水槽を割った。
ふわりと紫色のフィロンナの花が、エディンの手元に落ちる。
しばらく警戒したが、何の反応も無い。
胸を撫で下ろしたアウロラがきびすを返し、他の仲間に呼びかけようとした、その瞬間。
「な、何っ!?」
リィナが驚きの声をあげ、その小さなガーディアンたちを見やった。
アウロラが彼女を庇いながら叫ぶ。
「気をつけて、蜂よ!」
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