Fri.

かぼちゃ屋敷の夢その2  

「いやー、お客さんは記念すべき第一号の来客!!嬉しいねえ嬉しいねえ!!」
「や、やった!!……じゃなくて。俺は何でこんな所にいるんだ。あと皆はどこいった!?」
「さっきも言ったよー、ここはかぼちゃ屋敷!君の友達もみんなここにいるよ!」
 いや、友達というか家族……とロンドが突っ込もうか躊躇っているうちに、

「ただちょっと見た目はおかしな事になってるかもしれないけど」

とお化けが聞き捨てならないことを言い出した。
 抗議の大声を出したロンドを見た目以外は変わってないとお化けは宥めたが、彼にとってはそういう問題ではない。

「ちょっとボクと遊んでくれたらすぐ元に戻すから、ねっ!!」

 一人称が犬猿の仲の相手と同じことに気づき、思わず憮然となったロンドだったが、ひとしきり焦ったことで逆に落ち着いたのか、

「……それで、何して遊べばいいんだ?」

と訊ねた。

「ええっとねー、宝探し!!!」
「宝探しか!!!」

かぼちゃ屋敷の夢2

 ロンドの声が弾んだ。

「ちなみにその宝って言うのはどんな?」
「こんな感じのぬいぐるみだよー!」

 お化けが指し示した絵は、テディベア…熊のぬいぐるみだった。
 屋敷のどこかに隠してあるから頑張って見つけて、と言ってくるが、金銀財宝やかっこいい魔法の武具を少年のような心で期待していたロンドがやる気をダウンさせたのは、仕方のないことである。

(そういえば、黒蝙蝠は仮装好きゾンビの素性を知っていったっけ。俺も聞いておくべきか?)

 テーゼンと錆の魔女の交流を思い出したロンドは、一応お化けの素性やこの場所のことについて色々と尋ねてみたが、

「かぼちゃ屋敷の主、おばけくんだよ!!!」
「ここはかぼちゃ屋敷、ボクの住居でありミラクルワンダーランド!」
「どうしてこんなことをするのかと聞かれても、一緒に遊びたいからとしか……」

だの、はかばかしい返事はもらえない。
 ただ、依頼人が気にしていた『夜な夜な聞こえる幽霊の声』というのは、どうしても構って貰いたくて騒いでいた、このお化けのものだったようである。
 それが余計に恐怖に拍車をかけ、今まで近所の住民は皆、気味悪がってこの屋敷には立ち入らないようにしていたのだ。
 
「でも!君がここに来てくれたおかげで!!!今とっても楽しい!!!!」
「全く話が読めない!!」
「あ、大丈夫!遊んだら、ちゃんと向こうの世界に帰るから!!!!」
「向こうの世界?」
「ううん、こっちの話こっちの話。だから遊んでくれたらもう騒いだりはしないよ!」

 とりあえず彼に理解できたことは、このままここにいても仲間には会えないし、依頼された件も解決しないということである。
 そうなれば元々行動の人間であるロンドは、南瓜ランタンの示す道をずかずかと歩んでいった。
 今までいたボロ屋敷の面影もない建物の中、彼は慣れない調査を行いながら先を急ぐ。
 どうやらここは二色の石で造られた館のようである。
 住居には向いていないような部屋の配置で、何に使うのか理解に苦しむ空間が多い。
 たまに巨大なオレンジ南瓜に出会うが、動き出す様子は見られなかった。

「ったく……皆、どこに行ったんだ……?」

 行き止まりの部屋の壁に書かれていた文字をメモしたり(羊皮紙がなかったため、直接手に書き込んだが)、液体の入ったガラス瓶を拾ったり、たまに椅子に置かれていたお菓子を拾ったり。
 壁にかけられている絵も、不気味で彼にとっては見たことのないものばかり。
 それでいて、木製のドアに打ち込まれている鉄製のオーナメントは精緻な作りをしており、おそらくこの蝙蝠や蜘蛛の装飾を欲しがる人間もいるのではないか、とロンドは思った。
 しかし、ドアは外して持ち歩くには重過ぎる。
 宿に持って帰って売るのは断念し、ロンドは何度目か分からないドアを開けた。

「げ、犬だ!」
「………」

 そう、そこにいるのは黒い毛並みをもつ大型犬だった。
 幼い頃のトラウマで、ロンドは犬が嫌いなのである。
 大きな体をして情けない限りだが、じりじりと壁伝いに距離を取る。

「こ、こっち来るなよ…吠えるなよ…」
「ガルルル……ウーッ、ワンッワンッ!!」
「ぎゃーーーーーー!!!」

かぼちゃ屋敷の夢2

 ロンドが半泣きになったその時だった。

「……って。ちがーーーーう!!!」
「うわっ!?びっくりした……ってまさかその声、ウィルバーさんか!?」
「そうです!!気がついたらこんな姿になってここに居たんです!!」

 タレ気味の目を瞬かせて、犬の姿のウィルバーはもったりと口を開いた。

「ほかの仲間はどこにもいないし、私はこんな姿だし、一体何がどうなっているのやら…」
「まあでもいいんじゃないか?」

 その姿なら薄毛の心配はあるまい、とロンドは思った。言わなかったが。

「俺の半径数m以内には近づかないで欲しいけど」
「その言葉傷つくからやめて下さい!!!……ともかく、何でこんな事になってるんですか?」

 ロンドは今までの判明した事実を告げた。
 お化けの遊びに巻き込まれ、ぬいぐるみの宝物を探さなければならないことも。

「……まぁ、なんというか、はた迷惑なお化けですね」
「全くだよ」
「事情はわかりましたし、こちらでも何かそれらしいものがないか探してみます」

 今まで、犬の手ではここのドアは構造上開けられないために外に出なかったのだが、ロンドについて出ようとすると見えない壁に阻まれることに気づいたウィルバーが、同行を断念して言った。
 彼がここで発見したのは一冊の本であった。
 ぬいぐるみの捜索に関係あるかは分からないが、一応もらっておくことにする。

「お、ありがとな。……これは、童話か?」
「そうなんですか?この格好では上手く読めないので……」
「肉球じゃページが捲れないのか……」

 通常であればぜひ同行願いたい仲間だが、出れないのではどうしようもない。
 ロンドは更なる発見を求めて、部屋を後にした。

2016/02/26 12:48 [edit]

category: かぼちゃ屋敷の夢

tb: --   cm: 0

コメント

コメントの投稿

Secret

プロフィール

最新記事

最新コメント

月別アーカイブ

カテゴリ

カレンダー

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

ブロとも申請フォーム

QRコード

辺境に足を運んだ方の人数

▲Page top