Sat.

遺跡に咲く花 2  

 リィナの案内で遺跡に足を踏み入れた冒険者達は、辺りの光景を見回した。
 入口の洞窟部分とは打って変わって、人工的な建物の内部のように感じられる。

「なんだか・・・ひんやりしてますよね」

ScreenShot_20121112_164012671.png

 リィナの怯えたような小さな呟きに、エディンが適当に相槌を打ちながら周りを調査した。
 古い遺跡にはよくあることだが、壁には植物の蔓が蔓延っている。
 日の光の入らない遺跡なのに・・・と訝しがるリィナを背後に庇うようにしながら、ジーニは、

(ここで植物を育ててたっていうのなら、その種子が残ってる影響なのかも。)

と考えていた。
 入って左手には通路が続き、右には扉がある。
 一応、敵のバックアタックを警戒して、エディンが扉をざっと調べてみたが、罠も鍵も無い。
 扉を開けて中を覗いてみると、また通路が続いた向こう側に扉がある様子だったので、一行は入口部分まで戻り、左手の通路が続く方へ進んでみることにした。
 すると、暗い通路を小さなランタンで這うように照らしていたエディンが、一箇所にうずくまり、柔らかな羽毛を撫でるような仕草をする。

ScreenShot_20121112_164423468.png

「隠し扉だ!!」

という言葉とともに、ギィイと何かの歯車が動いたような音がして、壁の一部がせりあがって扉を露にした。
 隠し扉を進んでいくと、折れた通路の突き当たりにまた扉がある。
 充分警戒しながら一行が進むと、そこは相当古いらしい石の棺が置いてある部屋だった。
 仕掛けが無いことを確かめて、一枚岩の蓋をエディンが開けると、中には、植物の種子のようなものが収められている。

「何かの種だったようだけど・・・もう朽ち果てているようね」
「ジーニ、これってフィロンラの花の種かな?」
「分からないわ、ギル。さすがの私も、花ならともかく、種子の形状までは詳しく知らないのよ。でも、朽ちているからには、今回の依頼には役に立たないでしょうね」
「ん。紙切れが挟まっているみたい」

 エディンとジーニの脇の間から顔を出したミナスが、棺の中にさっと手を突っ込んで取り出す。
 その紙切れには、

(・・・すべての種子が失敗に終わってしまった・・・)
(・・・残ったのはあの花だけだ・・・)
(・・・大切に培養せねば・・・)

等という書付が残っている。
 その解読を聞いて、リィナが顔に血の色を上らせて言った。

「あの花だけって・・・じゃ、じゃあ、この遺跡には花はもう無いってことでしょうか!?」
「落ち着いて、リィナ。培養が上手くいったのなら、30年前に見つかったのと別のフィロンラの花が、この遺跡のどこかに保管されているはずよ」
「諦めるのは早計だな。もう少し探索してみよう」

 アレクの提案にみんなが頷き、一行は探索を続行した。
 奥の蔦の多い部屋で金色に輝く鍵を見つけ、それに合う鍵のついた部屋を探し当てると、中には隅でぶつぶつと何か言っている男がいる。

「えっと・・・・・・・・・・・・・・・・・・せやから・・・・・・・・・・・・・・・」
「あれ誰だろう?」
「多分、俺の同業者だろうな。モグリかそうでないかは分からんが」

 ミナスの疑問に、エディンが答える。ぶつぶつ言う男の装備は、エディンにはよく見慣れた遺跡専門の盗賊のものだった。

「まてよ・・・やっぱり・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・のわっ!!」

 一行が男が気づくのを待っていると、波打つ黒髪をしたその盗賊らしい彼は、大げさにのけぞって”金狼の牙”とそれに守られるリィナに気づいた。

「あ、あんたら・・・いつからそこにおったんや!」

 妙な訛りをした男の言葉に、困ったようにギルが眉を寄せた。

「えっと・・・・・・・・・・・・・・・」
「もしかして、あんたらもこの遺跡のお宝を・・・?」

 男が用心深く体勢を変えたのに、アレクとエディンが反応する。

「もし・・・そうなら・・・商売敵ってことやな・・・」
「あの・・・違うんです」

 一触即発のその雰囲気を察したのか、リィナがジーニの背後から出てきて、男に事情を説明した。

「多少胡散臭い気もするが・・・ま、ええやろ。信じたるわ。浪花節には弱いんや、俺は」
(今のお前ほど、胡散臭くはないがね・・・。)

 心中でエディンが呟くのも知らず、男が信じたついでに探索を手伝う、と言い出すのに、ミナスの目が丸くなった。
 男は、通り名を”疾風のジグ”という、らしい。エディンは長く盗賊ギルドに所属しているが、知らない名だった。詳しく聞いてみると、東の国からやってきた流れ者らしい。
 となると、あくまで男を信じるかどうかは、リィナや”金狼の牙”次第である。リィナは、手伝ってもらっていいのだろうか、という目でこちらを見てくる。
 ジーニは未知の人物を連れ歩く危険を嫌がったが、元々あまり物事を考えないギルや、人を見る目が確かなエディンからすると、大した脅威にはならないだろう、と判断され、同行を承知することになった。
 自分がいれば見つかったも同然、と胸を張るジグから、一行は彼が調べ終わったこと、こちらが調べたことを交換した。

 それによると、石像のある部屋の仕掛けを解かないと、遺跡のさらに奥の部屋には進めないらしい。
 8人連れになった彼らは、その仕掛けに挑むことにした。

2012/12/01 08:19 [edit]

category: 遺跡に咲く花

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