さて、仮装をして≪狼の隠れ家≫に戻ってきた冒険者達だったが、1階では宿の亭主と給仕の娘さんが忙しなく働いている。

「あぁ、忙しい忙しい」

と言って、墓石の被り物の横をぱたぱたと駆け抜けていく。
「親父さん何をしているのですか?」
「ん?おぉ、お前達か。なんだ、本格的な仮装だな」
「アンジェがハロウィンを今までやったことがなかったようなので、予行練習をしてみたんですよ。それより、ずいぶんとお忙しい様子ですが…」
「今、娘と協力して菓子を作っていたのさ」

 立ち止まった娘も一緒になって答えたところ、もうすぐ訪れるハロウィンのために、子供たちから悪戯をされないよう配るお菓子を試作していたのだという。

「夕方頃、近所の子供達がお菓子を貰いに来るんです」
「ああ、なるほど…こんな時期からもう用意をしているのですか」
「ふふ。朝早くからお父さんと協力していっぱいお菓子を作ったんですよ」

ハロウィン・ナイト!1

 微笑んだ娘さんが宿の亭主の方を見ると、彼はカウンターの下から皿に乗った試作品を出してきた。
 ピスタチオの味がする緑のチョコレートで飾った、南瓜クリームたっぷりのモンブラン。
 カラフルなアイシングで飾られたクッキーの山。
 裏ごしした南瓜を生地に混ぜて作ったという、ジャック・オー・ランタンの形のデコレーションケーキ。
 出てきた品々に、仔兎のように跳ねたアンジェが歓声を上げる。

「へー!美味しそう!」
「張り切って作ったんだけど、子供たち喜んでくれるかしら?」
「ええ、きっと大丈夫。子供達が喜びそうですねぇ」

 ふと、宿の亭主が顔を上げる。

「そうだお前ら。どうせ暇だろう?菓子作りを手伝ってくれんか」

 さすがに熱くなって墓石の被り物を脱いだロンドが、

「何だ藪から棒に」

と呆れた声を出す。

「というか暇って決めつけないでくれ」
「わざわざ出かけてハロウィンの仮装を試着してきたお前らに、碌な依頼があるとは思えんわ。いや、実はな…わしと娘だけでは、店の給仕があるから手が回らないんだ。頼むよ」
「う~~~ん」

 少々考え込んでいたパーティだったが、確かに休みを満喫したいと思っていたので、たまには料理もやってみるかということになった。
 その代わり、子供達に試作の菓子を振る舞ったあとは、店で宴会を開いてくれるという。
 途端に目を輝かせる男が一人。

「酒はあるのか酒は」
「お、おう。ハロウィンのためにもう少し取り寄せようと思ってた、とっておきのがあるぞ」
「ロンド…本番じゃないんですから、ほどほどにしておいてくださいね」
「そういや白髪頭って、酒が好きだったな」
「うん。兄ちゃん、酒ならドワーフの飲むような奴でもへーき」
「若いのう……」
「聖北の神よ、ロンドが明日二日酔いになりませんように…」

 シシリーがもっとも穏当な祈りを捧げた。
 その日の夕方――。
 衣装の寸法を確かめるため、魔女や魔法使いの扮装で≪狼の隠れ家≫を訪れた子供達の前に、

「わぁ、かわいいカップケーキ!と…あはは!おもしろいクッキー!かえったら弟に自慢しちゃお」
「へぇ、美味しそうだ。…ぶははっ!!なにこのクッキー!!冒険者さんのセンスぱねぇ!!」

と、シシリーやテアが作ったカップケーキや、ロンドが何をとち狂ったのかきっぱり作ってしまったア○キの形をしたクッキーなどは受けたのだが…。

ハロウィン・ナイト!2

「うわあああああ!!」
「おや、噛みついてしまいましたねぇ。ご安心下さい。食べれば退治できます」
「無理無理!!た、たすけて!!」

 初めてのハロウィンで浮かれきったアンジェと、実は料理がデスコックの域に達しているテーゼンと、普通に料理をしていて錬金術の反応を起こせるウィルバーが、共同開発したミミッククッキーは……残念ながら、≪狼の隠れ家≫のハロウィンメニューに加わることはないだろう。

「男は度胸ですよ。好き嫌いはよくありません」
「こ、こらこら!」

 宿の亭主が止めなければ、大変なことになっていたに違いない。
 兎にも角にも、確かに休みを満喫した一行だった。

※収入:≪カップケーキ≫2個、≪マッスルクッキー≫1個、≪ミミック≫3個
※支出:
※サンガツ様作、鈍色錆通りにて&ハロウィン・ナイト!クリア!
--------------------------------------------------------
■後書きまたは言い訳
9回目のお仕事は、サンガツ様の鈍色錆通りとハロウィン・ナイト!でございました。
先にお詫びをさせていただきます。
これらのシナリオは、本来ならばハロウィン当日の出来事となるストーリーなのですが、後にまだハロウィン・カーニバル!(仮)のリプレイを予定しているため、まだちょっと先の話として書かせて頂きました。
作品を作られたサンガツ様には、重ねてお詫び申し上げたいと思います。

ハロウィン・ナイト!にはクーポン分岐があるため、その前に同氏の鈍色錆通りをプレイしております。
これがまた面白い。初回のオープニングも素敵。
12種類もの仮装クーポンが用意されておりまして、その中から好きに自分のやってみたい仮装を選ぶんですが、吸血鬼だのフランケンシュタインだのの王道の中に、まさかね……墓石とかね……あまりにも似合いそうだったので、ついロンドにつけてしまいました。ごめん。
まことに勝手ながら、一応パーティに悪魔がいるので、錆の魔女さんとは知り合いというスタンスでリプレイを書かせて頂いております。なれなれしくすいません。
ハロウィン・ナイト!は、旗を掲げる爪では三種類しかお菓子を作れませんでしたが、本当ならレベルを上げて挑戦したり、逆に全然適性の合わない料理チャレンジをやってみたりしたほうが、もっと色んな食べ物(とは思えないのもあるが)アイテムが増えて面白いかと思います。
子供達の反応が見たくて、つい済印をつけずに何度もチャレンジしたくなりますよ。
なお、こちらのシナリオではちょこちょこ仮装以外のクーポンにも反応を返してくれまして。
うちは「デスコック」「酒豪」「聖北教会修道士」「甘党」なんかがいるので、ところどころでくすっと笑わせていただきました。
皆さまの冒険者たちにもお心当たりのクーポンがありましたら、ぜひプレイをオススメします。

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

2016/02/25 12:39 [edit]

category: 鈍色錆通り後のハロウィン・ナイト!

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