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狼の森その1  

「ちょっと使いすぎちゃったわね……」
「それだけ色々と買い揃える必要があったんですよ。アンジェやあなたの習得した技術も、テアの新しい歌も、決して無駄にはならないでしょうから」
「それは分かってるんだけど、やっぱり私のは後回しにしても良かったかなって」

 ハーブティを片手にパーティの出納帳を書いて計算しているウィルバーの横で、頬杖をついたシシリーが反省しているようにため息をついた。
 近所の依頼の後に、他の街や色んな店を見て回ったついでに、ちょっとした依頼も受けて稼ぐには稼いだのだが、それ以上に支出も多かった。
 何しろ残額が銀貨300枚である。
 そろそろ手軽に行って帰ってこれる仕事を探さないといけないわね、とリーダーが考えていると、違うテーブルでテアが捲っていた依頼書の束をふと止めた。

狼の森

「おや、狼退治かえ?」
「ん、狼?」
 テアがじっくり検討している依頼書を、翼の手入れをしていたテーゼンが覗き込む。
 町外れの森で出始めた狼が徒党を組み、近くの農村や通りかかった旅人にたびたび被害を及ぼしているため、それを退治してほしいという依頼のようだ。
 キノコと鶏肉のクリームパスタを他の冒険者たちに給仕していた宿の亭主が、

「おう、お前達、その依頼に興味あるのかい?」

と振り返って言った。

「まぁ、狼退治ならお前達でも大丈夫だろう」
「そうね、ちょうどこないだ、セレネフィアでも狼とは戦ったし…」
「確かに。さほど苦戦はしませんでしたね」
「どうだ、この依頼受ける気はないか?」
「ちょっと待っててね、親父さん。アンジェとロンドを起こしてくるわ」

 席を立ったシシリーを見守りながら、呆れたように亭主が首を振る。

「なんだ。あいつら、まだ寝てるのか?」
「いえ、いつもより早起きしたんですがね。……身体を鍛えるのに、早朝から走り込みをして疲れたせいで、昼寝してるんです」
「そりゃまた……」

 宿の亭主は言葉を濁して感想を避けた。
 やがて、シシリーに起こされ、仕事の内容を簡潔に教えて貰ったらしいロンドとアンジェが、ともすればくっつこうとする目を擦りながら階段を降りてくる。
 2人が階段から転げ落ちないか、心配しながらシシリーも着いてきた。

狼の森1

「報酬は?」

と問う声も、どことなく眠たげである。

「銀貨600枚だな。安いかもしれないが、すぐに片が付くだろうし悪くはないと思うぞ」
「私は受けてもいいと思うんだけど……皆は?」

 口々に構わない、受けていいという返事が返って来たので、シシリーは宿の亭主に頷いてみせた。
 狼が出るという問題の場所が書かれた地図を受け取り、各々の装備を確認しあうと、さっさと宿を出発することにした。
 ここから一時間ほどの距離にあるらしい。
 真っ直ぐ狼の住処に向かうことに気づき、アンジェが仲間に問いかけた。

「ちょっと待って、依頼人に会う必要はないわけ?」
「依頼書によるとじゃな、今回の仕事は近隣の農民たちの共同依頼なんじゃ」
「共同依頼?それじゃあ…」
「ああ。報酬の賃上げ交渉はできねえのさ。それでも、すぐ行ける距離で僕たちの実力的に辛くない依頼だから、コストパフォーマンスは悪くねえよ」

 テーゼンはそこまで説明すると、こっちだと一行を先導した。
 野外に慣れている彼についていくと、街道の途中からやや道を外れていった所に森がある。
 梢の葉が密生しているせいか、今まで足を踏み入れた森よりもいっそう緑が濃く感じられた。
 なるべく賑やかな音を立てないよう、出来るだけの注意を払いながら進む。
 腕の一振りで他の仲間の歩みを止めたテーゼンが、辺りの地面を低い体勢で調べる。
 やがて、茂みに隠れるようにして全員を導くと、ある地点でピタリと止まった。

「シッ……皆、あれ見えるか?」
「狼がいるぞ、黒蝙蝠」

 とっさに何か言い返してやろうと思ったテーゼンだったが、狼に限らず野生の獣は他の生き物の気配に聡い。
 彼の向こう脛を蹴飛ばすだけで我慢をして、じっとテアを見つめた。
 彼の意を察したテアは、初めてのゴブリン退治の時と同様に、【まどろみの花】という子守唄を歌いだした。
 セレネフィアではネズミ相手に猛威を振るったこともある呪歌は、たちまち見張りの役目をしていたらしい狼を眠らせてしまった。
 間髪いれずにロンドが止めを刺し、またテーゼンの案内で森の更に奥へと進む。

2016/02/19 12:19 [edit]

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