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Sun.

そこにいるその1  

 眠い眠いと零す冒険者たち――旗を掲げる爪一行に、宿の亭主は先ほどからくどくどと説教していた。
 もう昼前だというのに、一向に腰を上げる様子が見られない。
 精霊であるランプさんを連れて来てから、すでに3日ほど経っている。

そこにいる
 そろそろ依頼のチェックが必要な頃合だというのに、ウィルバーやアンジェすら掲示板に見向きもしないのだ。

「そんなお前のために仕事をもってきたぞ。リューン郊外からの依頼だ」
「へ?」

 ロンドが宿の亭主が指す先を見やると、そこには依頼人らしき青年たちが座っていた。
 一人は二十歳前後だろうか、郊外の村に住むような人間によく見られる健康的な肌の色をしており、緑の帽子を被っている。
 もう一人の初老の男は、皺のひとつひとつに知的な何かを感じさせる面立ちをしているが、妙に疲れているような印象を受けた。
 亭主はもう昼食を作らねばならないと厨房に引っ込んでしまったため、一同は、やむを得ず近づいてきた彼らに直接事情を尋ねる。
 初老の男の眉が、険しい形に釣り上がる。

「誰でも良い、力を貸してくれ。2日前、孫が何も言わず帰ってこなくなった」

 搾り出すような男の声の後に、青年も口を開く。

「…俺の姪っ子もだ。依頼は突然居なくなった子供たち4人の捜索だ」

 2日前、4人は自宅を出て遊びに行ったきり、帰ってこなかったそうだ。
 初老の男の孫はララタ。青年の姪っ子のカリア。近所に住んでいるブリクとメレファン。
 いずれも7歳から8歳までの子供たちである。
 子供たちの遊び場は村の中心部にあったのだが、その日の遊び場で彼らを見た村民はいないらしい。
 親たちにいたっては、誰かの家へ遊びに行っていたと思い込んだために、帰宅が遅れて初めて事態に気づいたのだろう。
 すでに自警団および治安局にも捜索願を出しているが、彼らの言い分は『事件性が薄い』『だから貴重な人員を裂くことは出来ない』ということで、すぐに調査に移ろうとはしない。
 1日ならともかく、2日も子供が帰ってきてないのに怠慢ではないか、とシシリーなどは口に出したが、そこで仲間の老婆に諌められた。

「現実的な問題として、自警団や治安局の連中の能力がさほど高くないということもある。テーゼンのように野外活動に慣れているものや、うちのおちびちゃんのように探し物をするのが得意なメンバーは稀じゃろうて」
「もっとも、だからこそ我々のような流れ者の冒険者にも依頼があるわけですが。……子供たちが集落の外に出た可能性も、視野に入れるべきでしょうかね」

 苦い笑いを仄かに浮かべたウィルバーが、何故こちらの宿を選んだのかを問うと、集落からリューンに入ってきて一番先に見えた冒険者の宿が≪狼の隠れ家≫だったから、という答えがあった。
 村民だけの捜索では人出が足りない上、一刻を争う事態である。
 手近な冒険者の宿に雇用を頼みに来るのは、ごく自然なことであった。

「じゃあ、報酬はいくらくれるわけ?」

 ざっくりとアンジェが質問すると、男は捜索を手伝ってくれた人員一人につき、銀貨100枚を用意しているという。
 集落の自治会で話し合って決めた限度額なのだろう。

「そして無事に見つけてくれたら成功報酬を支払おう。これは村長と直に話してくれ」

そこにいる1

 子供たちが大人に黙って行きそうな場所の心当たり、集落の周りにある危険地帯、色々聞き出したいことはあるが、探索を急ぐのなら、ここで聞くより道中で質問した方が時間の短縮になる。
 他に確かめておかねばならない事項はなさそうだったので、シシリーはこの依頼を受けるかを仲間に尋ねた。

「俺やアンが、受けないなんて言うかよ」
「そーだね。あたしたちが、一番家族を失いたくないもん」

 まずは二人が受けることに賛成。

「ま、僕はどっちだっていいけどよ。ばあ様に判断を任せるさ」
「お主、またそうやって投げやりにせんでも……。孫に対する御仁の気持ちは分かる。ここは人道的にも引き受けるべきじゃろうの」

 中立が出たが、賛成派と一緒。

「……事前情報が少ないのが気になりますが。確かに人探しで一番大事なのは時間です。我々で受けて手に負えない事態になったら、こちらの方々に≪狼の隠れ家≫まで伝言をお願いして、もう一度来店して貰えば良いのではないでしょうか」
「……ってことは、賛成?」
「ええ、そうとって頂いて構いませんよ」

 答えは決まったようだ。

「おじさま。その依頼、私たち≪旗を掲げる爪≫がお受けします」

 村は馬車でリューンから30分ほど離れたところにあるという。
 青年は他の宿にも声をかけて、とにかく人手を集めようと連れに提案した。

「オヤッさん、飯食ってないだろ。心配なのは分かるけど、これじゃ身が持たない」
「…ああ。少しだけ、休ませてもらう。ならば、また後でな」

 青年が店を出たところで、宿の亭主がちょうど出来上がったサンドイッチを彼らの居るテーブルへ持ってきた。
 瑞々しいレタスとトマトの切れ端、茶色い焦げ目をほどほどにつけたベーコンがパンに挟まっている。
 亭主がよく料理に使っている、色の濃いチーズが味のアクセントになっているようだ。

「おい、昼飯ができたぞ。サンドイッチだ」
「ありがとう、親父さん」

 大きな皿を受け取ったシシリーが隣に手渡す。
 テーブルの真ん中に置く前に、まず一つを掴んだロンドはサンドイッチに大きくかぶりついた。

「これはうまい。おい、あんたも食べろよ」

 不器用ながらも優しさを見せたロンドに礼を言い、依頼人も難しい顔つきのままパンを手に持ったが、口に持っていこうとしない。

「…子供たちは、ちゃんと食べているだろうか」
「子供たちは私たちが見つけてみせます。お任せください。あなたは、発見した時に孫を抱きしめてやれるよう体力をつけておくのが仕事ですよ」

 たとえ、それが遺体であっても。
 ウィルバーは、あえてそのことは口にしなかった。
 何も探し始める前から、精神的打撃を受けている依頼主へ、余計な打撃や軋轢を生みたくない。

「…ありがとう」

 依頼人がようようパンの端を齧りだす。
 材料が余っていたために少し作りすぎた、と慨嘆した宿の亭主は、依頼を受けたのでこれから出ると言う旗を掲げる爪の弁当用に、少し包んで持ってきてくれた。
 10数分後、青年が宿に戻ってきたが、その顔色は芳しくなかった。
 他の冒険者たちは予定が埋まっており、彼らの依頼を引き受けてはくれなかったようである。
 馬車の支度はもう出来ているということだったので、旗を掲げる爪は、それぞれの装備を手にして立ち上がった。

2016/02/14 11:45 [edit]

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