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Thu.

大時計その2  


 辿り着いたルオランの町は、平凡と言えば平凡な町であった。
 人々は喜怒哀楽のそれぞれの表情をしながら、さざめきあって道を歩いている。

 リューンのような大都市と比べればその数は確かに少ないが、これといって荒廃した印象などはなかった。
 そんな中でも、搭のように町の端っこにそびえている時計台が目立つ。

「……あれが例の時計台だね」

 背が小さいために、急角度に頭を傾け見上げていたアンジェがそう呟いた。
 はい、と細い声で応えたクォーツ氏は、調査については夕方までには切り上げてくれるよう一同に頼んできた。
 現在ルオランの町を支配しているおかしな時間の流れが、旗を掲げる爪に影響してこないとは限らないというのがその根拠である。
 夕方を過ぎる前に町を離れるべきだという彼の意見に、シシリーを始め冒険者たちは一も二もなく同意した。
 そのとき、

「――クォーツ!」

という華やかな声と共に、淡い色の金髪を無造作に束ねた女性が彼ら目がけて走り寄ってきた。
 走ってきただけあって少々息を切らせていたが、すぐにそれを整えて、伏し目がちなクォーツ氏と目を合わせて問う。

「朝からどこにいってたの?心配したのよ」
「やあ……リネット」

 二人のやり取りを見ていれば、説明されずとも親しい付き合いの間柄なのだろうと推測できる。
 ただ、続けてクォーツ氏の吐いたセリフは、リネット嬢にとっては予想外だったに違いない。

「おじいさんの腰の具合は?」
「――え?どうして知ってるの?おじいちゃんが階段から落ちたの、今朝のことなのに……」

 彼女のその返答から、依頼人が最初に「友人の祖父」と言ってた件の老人がリネット嬢の祖父であることにみんな気がついた。
 戸惑ったような顔の「友人」リネット嬢に、クォーツ氏は何も答えようとはしなかった。
 妙な顔つきになったものの、めげずに彼女は旗を掲げる爪のほうへと視線を移す。

「……まあいいわ。ねえ、この人達は?冒険者の人……よね?」
「え、ええと……知り合い、なんだ……近くまで来たから寄ったんだって……」
「うむ、その通りじゃ。ワシらは町から町へと移動を続けているのじゃが、うちの仲間の一人が、縁あって知り合った時計屋の顔を見たいと言い出してな。皆でこうして寄ったのよ」
「そうなんだ」

 醜くはあるが愛想の良い老婆の説明に、リネット嬢はひとまず安心したらしい。

「冒険者さん達、何もない町だけど、のんびりしていってくださいね!」

 買い物の途中だからと断った彼女は、丁寧に繕われたスカートの裾を翻しながら市場の方へと駆けていった。
 それをしばらく無言で見送っていたクォーツ氏が、はっと我を取り戻した様子で一同へ頭を下げた。

「それじゃあ……よろしく、お願いしますね……」

 彼に軽く頷くと、シシリーは仲間達を促した。

「……行くわよ」

 何の変哲もない人波をすり抜け、時計台の方角へと移動する。
 人通りは段々減っていき、一行が時計台の前へと到着すると、ほとんど0に近くなった。
 きょろきょろと辺りを見渡したアンジェが、

「さて……今なら人気も少ないし、忍びこむにはいい機会だけど……」

大時計2

と言って、シシリーを伺うようにする。
 短く首を縦に振った返答に、鍵の掛かった扉にそっと細い針金を突っ込んだアンジェは、解錠を試みた。
 中々上手くいかない様子であったのが、三回目のチャレンジで、がちゃりと鍵の回る音がする。

「よし、開いたよ!」
「アン、お疲れだったな」

 眉をしかめた表情から一転、晴々とした顔になったホビットの娘に、ロンドは笑いながら大きく硬い手でもって頭を撫でた。
 テーゼンがそっと扉を押すと、軽い軋みを上げながら開く。
 顔だけを突っ込んでしばらく中を窺っていた彼だったが、やがて納得したように頷いてパーティを振り返った。
 それを機に、彼ら旗を掲げる爪は時計台内部へと歩を進めた。

2016/02/04 13:58 [edit]

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