頭蓋骨部分に絡んでいた白い花を貰った一行は、もう一つの道へと歩き出していた。

 花を受け取った際、骨が躊躇いがちに、

「…彼女もそれを思い出してくれると嬉しいがね!」

と付け加えた様子に、テアはもしかしたらと考えることがあったのだが、他の面子は何も追求することはなく、骨の元気過ぎる挨拶に応えて手を振っただけであった。
 一瞬の後に、何かの物音がして振り返ると、すでにその場所に骨の姿はなかったのだが……。

「あれは……」

 森での探索を続けていると、シシリーの視界の端に気になるものがあった。
 彼女が草むらを探ってみると、その手にフーカ草のレースのような葉が触れた。

「シシリー。あれ」

 テーゼンが示した指の先には、さらに薬の材料となるサネアの実のオレンジがちらついている。
 かなり高いところにあるそれを、するすると木に登ったアンジェが採取し、テーゼン目がけて落とした。
 これで無事に依頼の品を入手したことになる。
 さて依頼人の所に戻ろうか……と、踵を返し始めた一行だったが、ふとシシリーが皆を止めた。

「あれは獣道じゃないかしら?」

 藪に隠れていた細く連なる道を少し行くと、依頼人との話にも出てこなかった洞窟が現れる。
 シシリーが目を凝らすと、洞窟の入り口傍の木に、ひっそり隠れていたゴブリンの影を見つけた。
 そういえば、と一同は宿の亭主の話を思い返す。
 最初のゴブリン退治をした洞窟の近くに魔女の家があった、と。
 ならば、あれだけ苦労をして妖魔を追い出したにも関わらず、また違う洞窟へ逃げた、あの時のゴブリンたちが住み着いたということである。

「まだ、こちらには気がついていないわね」

 シシリーの合図で、一同はもう一度ゴブリンたちを退治することにした。
 何しろ、前の依頼ではすっかり自分たちが仕事を完了したと報告してしまっている。
 それなのに生き残りが懲りずにまたこの辺りを徘徊するようなことがあっては、自分たちの仕事振りを疑われてしまう一因となりかねない――これからの評判の為、排除するしかないだろう。
 再びテアの子守唄【まどろみの花】で見張りを眠らせ止めを刺した一行は、さっさと洞窟へ乗り込んでいった。
 前の洞窟とは違ってすぐ行き止まりになっており、名も知れぬ鉱石がうっすらと光を放っている。
 複数のゴブリンがその中でうずくまって何かを夢中で食べており、冒険者たちの足音に気づいた様子はなかった。
 一瞬で決心したシシリーは、仲間達に突撃の合図を送った。
 ――今度は要領を掴んだからか、はたまたゴブリンシャーマンがいなかったせいか、あっという間に旗を掲げる爪は彼らを掃討した。
 スコップを地面に突き立てると、片手でぼんのくぼを叩きながらロンドが零す。

「結局ゴブリン退治しちゃったな」

魔女の依頼3

「まあ、良いのではないですか。これで前の依頼人である農夫たちに、胸を張ってちゃんと片付けたと言えるのですから」

 ウィルバーがそう言いながらロンドを労っていると、シシリーがしゃがみ込んで蒼銀色の実を拾い上げた。

「……これは」

 ゴブリンたちが齧っていたらしいこの実は、ひんやりとした上品な甘い香りを放っている。
 中々貴重なもののようなので、一つだけ齧られていない実を採取した彼女はそれを布にくるみ、荷物袋へそっと収めた。
 ほの暗い洞窟のせいでつまづき怪我をしたテアを、シシリーが新たに習得した法術で癒し、一行は今度こそ魔女の家へと戻ることにした。

 待ちかねていたらしい依頼人に、まずアンジェが骨から手に入れた花を差し出す。

「この、花は…あなた方、これをどこで?」
「うーん…それについてですが…」

 心底不思議そうな問いに対して答えに給したウィルバーだったが、魔女は不意に自分でその発言を取り消した。

「…いいえ。つかぬことを伺いました」

 彼女のその様子に、テアは内心で思考していたことが当たったことに気づいたが、仲間の誰にもそれを漏らすことはなかった。
 依頼人の説明によると、この白い花は解毒と精神の正常化に役立つのだという。
 今はもう亡き彼女の夫が、よく摘んできてくれた好きな花を、魔女は飽かずにためつすがめつ眺めていた。

「…ありがとう。私は、花を眺める余裕をなくしていたのかもしれませんね」

魔女の依頼4

「ほら、今回の依頼はそれだけがお届けものじゃないだろ。こっちも貰ってくれねえか?」

 テーゼンから薬の材料を渡すと、

「ああ…本当にありがとうございました。これで娘は助かります」

と言った彼女が安堵のあまりか頬へ微かに血の色を昇らせ、報酬の入った皮袋を差し出した。
 森の奥にいた妖魔について言及すると、魔女はそのことには気づいていたという。
 だが、獣道の向こうにあるため、冒険者達がそこまで足を伸ばすとも思えず、また、更なる報酬を払うこともできなかっために、とりあえずあとで自分で対処しようと黙っていたそうだ。
 依頼人は律儀なのか、出せる報酬がないことをしばらくウンウン唸っていたが、ポンと手を打って嬉しげに声をあげた。

「…そうだ、これを差し上げます。手製で申し訳ないのですが」

 立ち上がって竃から出してきたパンを断るわけにもいかず、それと共にウィルバーの交渉によって付けてもらったボーナス――彼女特製の万能薬――を受け取った。
 旗を掲げる爪が依頼人宅を出たとき、沈みゆく日に照らされた魔女の……いや、カトレアの顔は、とても娘がいるようには見えない若い女性のものであった。
 この何日か後に、カトレアから≪狼の隠れ家≫へ手紙が届いた。
 それによると、旗を掲げる爪の取ってきた薬の材料のおかげで、マーガレットというあの少女は病から立ち直ったらしい。
 シシリーが目を閉じると、脳裏ではすっかり元気になった娘が、母と仲睦まじくあの白い花を眺めている絵が浮かんだ。

※収入:報酬600sp、≪銀の実≫≪パン≫≪万能薬≫≪一輪の花≫
※支出:武闘都市エラン(飛魚様)にて【薙ぎ払い】を購入。
※タビビト様作、パーティ名会議・りり様作、魔女の依頼クリア!
--------------------------------------------------------
■後書きまたは言い訳
2回目のお仕事は合わせ技で、タビビトさんのパーティ名会議でパーティ名を決めて、りりさんの魔女の依頼をプレイしました。
魔女の依頼のほうは寝る前サクッとのフォルダで遊ばれた方も多いのではないかと思います。
優しげな、ほんわかした背景と魔女さんの律儀な人柄が素敵な作品で、お土産に貰える品々も彼女たちらしいというか、この依頼らしいというか。
パーティ名会議のほうは、今月アップされたばかりの100KB祭りの作品です。
本来であれば出たばかりの新シナリオ、ネタバレは控えて一ヶ月ほど間を置いているのですが…このシナリオに限っては、今回書いたところ以外にも色々楽しい雑談があるので、安心して遊んでください。
また、今回採用したパーティ名≪旗を掲げる爪≫ですが、これは本当にプレイ中にシシリーから出てきた名前です。
なかなかかっこいい名前であったこと、前のパーティと被らないこと、それでいて統一感はあること。
以上三点からそのまま使わせていただきました。タビビトさん、ありがとうございました。

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

2016/02/04 13:49 [edit]

category: パーティ名会議後の魔女の依頼

tb: --   cm: 0

コメント

コメントの投稿

Secret

プロフィール

最新記事

最新コメント

月別アーカイブ

カテゴリ

カレンダー

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

ブロとも申請フォーム

QRコード

辺境に足を運んだ方の人数

▲Page top