罠などを警戒して先に進んでいたテーゼンが、仲間を振り返って声をかける。

「見ろ、宝箱だ……!」
「えっ」
「ゴブリンども、何か隠していたようだな」

 テーゼンはそう呟くと、黒々とした双眸をウィルバーの腰へと当てた。

「さっき拾った鍵が役に立つかもな」
「ああ、なるほど…」
「ちょっと待って!まず罠を見てみようよ」

 進み出ようとしたウィルバーを押し留め、アンジェは宝箱にしゃがみ込んで素早く目線を走らせた。
 小さく繊細な指先が、そっと蓋を撫でる。

「ええ、確かに鍵が掛かっているわ。罠は……ないみたいね」

 肩をすくめたホビットに促され、今度こそウィルバーはポケットから鍵を出した。
 赤い飾りのついた小さな鍵を鍵穴に差し込むと、ピタリと合う様だ。
 彼はそのまま鍵を回した。
 かちゃりと軽い音がして、宝箱の蓋が開く。

「どれどれ……」

 ウィルバーが慎重な手つきで中を探ると、大粒の緑の宝石があることに気づいた。
 さらに、宝石の下には小さい皮袋がある。
 黒くなった血の跡から推測するに、おそらく、ゴブリンが襲った人間の持っていた財布なのだろう。
 石をアンジェに預け、ウィルバーが固く縛った皮ひもを丁寧に解くと、そこには銀貨が200枚入っていた。

「いやいや、ありがたい!臨時収入としては充分でしょうね」 
「農家の人たちの依頼は完了したし、宝は見つけたし。今回は大成功、ってところじゃないかしらね」

 中に傷の多いエメラルドを、シシリーの持つランタンにかざして鑑定していたアンジェが、小さく笑った。
 確かに彼女の言う通りかもしれない。
 シャーマンによって眠らされた時は、すぐ身近に死が迫っているように思っていたが、終わってみるとあっけなかったような気もする。
 ただし、アンジェ自身はすでにテアの癒しを受けて五体満足だけれども、仲間たちの前衛に立ち続けたシシリーやロンドの額や肩には、生々しい傷跡が開いている。
 野外生活に長けている、と自己評価したテーゼンによって応急処置は済んでいるものの、彼らをこのまま湿った洞窟に居させるのは体に悪いことだろう。
 さっそく帰るべきだと判断したアンジェやウィルバーは、二人を労りながら宿へ――≪狼の隠れ家≫へ帰還することにした。

 宿に帰ってきた一行は、結果を亭主に報告した後にゆっくりと休みを取った。
 傷も癒え、仕事の報酬を受け取ったあとに拾ってきた宝石も売り払い、寒い風が吹きこんでいた財布がようやく落ち着きを取り戻す。
 顔を見合わせて微笑みを浮かべる彼らに、宿の亭主が地下室の奥から出してきた道具を持ってきた。
 冒険者たちは見たこともない貴重な品々に歓声を上げながら、どれを貸与してもらおうか必死になって相談しあった。

「見て、≪早足の靴≫ですって!可愛いからあたしが使わせてもらうわ。あと、こっちの呪文書も使えるような気がするの」

 【黄金の矢】と書かれている呪文書を手に取ったアンジェが弾んだ声を上げたのと重なるように、必死に吟味していたらしいウィルバーが伏せていた顔を上げて言った。

「月並みですが、防御は大事です。学連でも教えている【魔法の鎧】があるようですので、こちらを使わせていただきましょう…恐らく、しばらくは一度の冒険に一回唱えるので精いっぱいでしょうが。もうひとつは、【理矢の法】というものを習得することにします。実力が上がれば、ますます便利になる攻撃魔法のようです」
「その杖も選んだの?それってなに?」
「これは≪万象の司≫と言いまして…学連で一人前の魔術師の資格を取った際に貰える杖よりも、かなり威力の強い魔法の発動体ですよ」

 賢者の杖、と一般に呼ばれている魔法の発動体は、杖の先についている宝玉の魔法回路が呪文への集中を助けるものだ。
 ウィルバーが手にした杖は、古の魔法技術によってそれより強力な魔法回路が組まれているらしい。
 貴重な杖をしばし眺めたあと、ちらっとウィルバーは視線を宿の中庭へと走らせた。
 そこでは、新たな武器として炎を上げるスコップを振り回すロンドと、古代王国期には量産されていたらしい魔鉱石によるロングソードを構えたシシリーが、練習試合を繰り広げている。
 どちらの武器も、実体のない敵にもダメージを及ぼすことの出来る魔法がかかっている。
 二人ともこないだ怪我をして呻いていたというのに、元気なことである。
 次なる冒険の用意は出来たようだ。
 出してもらって使わなかったアイテムや呪文書を宿の亭主に返し、ウィルバーは頬杖をついて二人の様子を眺めた。
 シシリーたちの一行の冒険はまだ、始まったばかりだ。
 そう、パーティ名もつけたほうがいいかもしれない――ウィルバーは、二人が練習に飽きた頃を見計らって声をかけようと思った。

※収入:報酬600sp+200sp、宝石売り払い200sp
※支出:リューン旧街道(SIG様)にて【癒身の法】を購入。
※その他:ゾンビ怖い様の黄金の魔術師より【黄金の矢】、飛魚様の四色の魔法陣より【魔法の鎧】、Djinn様のある小さな店より【理矢の法】・魔剣工房より≪早足の靴≫、SARUO様のネルカ城砦跡より≪万象の司≫・アマリアがためにより≪マスタースコップ≫≪光の鉄剣≫を取得。
※ハーバー様作、ちょっとだけ1.50仕様のゴブ洞クリア!
--------------------------------------------------------
■後書きまたは言い訳
1回目のお仕事は、ハーバーさんのちょっとだけ1.50仕様のゴブ洞です。
よく冒険者たちの最初の仕事として選ばれるAsk様のゴブリンの洞窟ですが、他のパーティで済印をつけてあります。
なら、ゴブ洞改変のシナリオで楽しくひねった感じのシナリオを…と思った時に、こちらの作品にしようと思い立ちました。
実際に遊んで比べたらわかるのですが、1.50エンジンでできるようになった小技のきいた改変でございます。
ただ、これだと魔法の発動体もとい最強アイテムの賢者の杖が手に入れられなくてきっついため、高レベルパーティが余している技能や魔法やアイテム群を開放することにしました。
え、縛りが甘いんじゃないかって?
それらを手に入れるのに前パーティで苦労してるんですから、大目に見てやってください。

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

2016/02/04 12:59 [edit]

category: ちょっとだけ1.50仕様のゴブ洞

tb: --   cm: 0

コメント

コメントの投稿

Secret

プロフィール

最新記事

最新コメント

月別アーカイブ

カテゴリ

カレンダー

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

ブロとも申請フォーム

QRコード

辺境に足を運んだ方の人数

▲Page top