Sun.

紅き鷹への葬送曲 1  

 無事にパーティ名も決定し、ゴーレム研究を続けているであろうルーシーのことを考えながら、”金狼の牙”たちがカウンターでぐうたらしていると、小柄な男がひとり、静かに店へと入ってきた。
 その男を見た途端、だらけきっていたエディンが素早く起き上がる。
 小柄な男は、盗賊ギルドの使い走りである。以前に、エディンが盗賊の身ごなしやリューン市内の情報の集め方のノウハウなどを、この男に仕込んだことがあった。

「よう。久しぶり」
「あんたも元気にしてたかい、エディン。冒険者なんかになっちまってから、あんまり顔を見ないじゃねえか」
「今日はまた、どういう風の吹き回しでここに来た?」
「あんたに・・・いや、あんた方に依頼したいことがある、と”コウモリ”からお達しがあってね」

 エディンは黒い目を細めた。
 ”コウモリ”は盗賊ギルドの幹部であり、リューン市内におけるギルドにとっての治安維持を担当している男のひとりである。
 ギルド内での地位はさほど高くはないし、盗賊としての実力も高いわけではないのだが、そこからの依頼となると、荒事か、暗殺関係か・・・。いずれにしても、少々危ない仕事になりそうなのは確かだった。

「リーダー、どうする。俺自身は義理があるから断れない仕事だが・・・」
「色んな依頼人がいたけど、ギルドからは初めてだな」

 若々しい顔を皮肉気に歪めてギルは言った。

「訊いたら断れない仕事だろうけど、エディンひとりを行かせるのは気が進まない。全員で行こう」

 鶴の一声とでもいうべきか、それぞれ、何らかのきな臭さを感じてはいたものの、仲間たちは全員が盗賊ギルドへと向かった。

「・・・来たか」

 初老にさしかかろうかという年齢の男が、暗い中にひとり座っている。
 ギルが、

「あんたが依頼人か?」

と問うと、肯定の返事があった。当然のように引き受けてくれるのだろう、という態度を取る依頼人に対して、幾分か緊張の色が濃いミナスが水を差す。

「話も聞かないで決められないよ」
「・・・・・・いいだろう。だが聞いたことは他言無用だ」

 依頼内容について最初に訊いてみると、なんと頼みたい仕事というのは盗賊退治だという。

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「あんたらに潰してもらう盗賊団は紅き鷹旅団を名乗る連中だ」

 幹部が言うには、ギルドの掟を破っているモグリの盗賊団は、粛清の対象になる。それの代行を頼みたい・・・という話なのだが、盗賊ギルドをよく知るエディンがそこで何故と問うた。
 普通であれば、ギルドの面子がかかっているのである。当然、ギルド内で人員を派遣して、始末するべき問題なのだ。
 粛清の代行を部外者に、それも冒険者にやらせるという意図がどこにあるのか。

「あいつらの中には魔術師がいた。それでも善戦はしたんだがね・・・・・・。首領がバケモノだったのさ」
「バケモノ?」
「人外というわけじゃない。それくらい強い・・・ということさ。そういうわけで気に入らねぇがこれ以上、連中をほっとくわけにいかなくなったワケだ」
「ふむ・・・・・・紅き鷹旅団について、もう少し詳しく教えてくれ」
「最近勢力を伸ばしてる盗賊団だ。ここらじゃ、結構やばい連中だな。ギルドに金払ってる連中も襲撃してやがるふざけた連中だ」
「・・・どうあっても見過ごせない相手だな」

ScreenShot_20121107_042846390.png

 盗賊ギルドの収入の一部には、商人や貴族などの有力な者たちからの上納金がある。
 もちろん、それには見返りがあり、ギルドの保護を受けることで、ギルドに属する盗賊たちは彼らを襲うことを禁じられるのであるが、紅き鷹旅団は、そのルールを真っ向から喰い破ったというわけだ。

「魔術師がいるのを確認したが・・・・・・、ありゃもぐりの魔術師だな」
「それは厄介ね・・・・・・。相手の実力のほどが分からないのは」
「ちょいとあんたらには荷が重いかね?」

 ”コウモリ”が小ばかにしたように言うのへ、ジーニがむっとした顔を向けた。とかく、この女性はプライドが高く、人から侮られることをよしとはしない傾向がある。
 それをエディンが上手く押さえて、報酬を”コウモリ”に尋ねた。

「報酬は銀貨で1000枚。いっとくが口止め料込みだぜ。うちも結構厳しくてな。悪いがこれ以上はだせねぇぞ」
「はっ、こないだ西の”蔓薔薇”から”いろいろ”いい物を貰ったと聞いてるがね」

 エディンが小さく鼻で笑った。
 パーティの仲間達には何のことか分からなかったが、指摘された”コウモリ”は舌打ちでもしそうな顔でエディンを見やる。
 盗賊同士の隠語で、エディンは”蔓薔薇”の紋章を持つ貴族から、この幹部へ個人的な上納金が来ていることを指摘したのだ。
 しかし、エディンもこれ以上報酬を吊り上げるつもりはない。
 1000spで引き受けるならそれで構わないが、先ほど「荷が重い」と馬鹿にされたことへの意趣返しと、言い値で仕事をしてやろうという恩を売りつけたのである。
 せいぜい自分達を高く売った”金狼の牙”たちは、依頼を受けて紅き鷹旅団のアジトへと向かった。

2012/11/18 19:44 [edit]

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