Sat.

機械仕掛けの番犬 4  

「先ほどは失礼しました。娘が皆さんにご迷惑をおかけしたようで・・・申し訳ありません。父としてお詫びいたします」
「え、いや、こっちは仕事として引き受けただけで、別に迷惑なんか・・・」

 頭を下げた男の姿に驚き、恐縮したギルが、忙しなく手を振りながら頭を上げるよう彼に伝える。
 ルーシェランことルーシーによると、父の名前を拝借したのは、そうしないと誰も相手にしないと思ったから・・・ということらしい。
 酒場に出した覚えがない広告が、自分の名で張り出されていたことに驚いたため、ファラン氏は慌てて帰宅したそうで、

「そもそも私は、お前を魔導師にした覚えはないし、なってくれと頼んだ覚えもない」

と、娘を叱り始めた。

「女は子を産み、育て、次の世代を作るのが勤めだ」

 どうも、ファラン氏は徹底した男尊女卑主義者らしい。その台詞を聞いたアウロラとジーニが、それぞれ違った表情で彼を睨みつけ始めるのを、仲間達は冷や冷やしながら見守った。

「外の世界で仕事をする必要などない」
「・・・その考え方が、おかしいのよ」
「・・・何?」

ScreenShot_20121107_015656359.png

 娘を睨み返すファラン氏を、視線で針のむしろにしつつ、ジーニも口を出した。

「まったくだわ。女性を侮るのも、いい加減にして欲しいわね」
「ちょ、ちょっとジーニ・・・」
「アンタは黙ってらっしゃい」

 ジーニの冷たい声音に、ギルが強制的に黙らせられる。
 その尻馬に乗ったように、ルーシーが口を開いた。

「女だとか、男だとか、そんなの関係ないわよ。やりたい事をしているだけなのに、どうして我慢しなくちゃいけないの?」
「まだそんな事をいうのか。いいか、魔導師というのは、世間では疎んじられる存在なのだ。自然の摂理を曲げ、世界の均衡を崩すもの、それが魔法だ」

 次いで、ファラン氏は魔導師が社会からの蔑視に晒される職業であることを必死に娘に説明したのだが、ルーシーもまったく諦めるつもりはなく、父へ食って掛かった。
 その後ろでは、ルーシーを応援するようにアウロラが頷いている。

「ゴーレムを真に操るにはそれ相応の資質と努力がいる」
「だから修行してるんでしょ!大体ね、お父さんが古代文明の研究に没頭して、家族をほったらかしにするから、母さんに逃げられるのよ!!」
「むっ・・・」

 ファラン氏は至極痛いところをつかれたらしく、その厳つい顔が赤に変わったかと思うと、たちまち青にも変化した。客人の前で、そういったプライベートな事情を暴かれたのが、よほどに悔しかったらしい。

(あー・・・盗賊ギルドでちょろっとだけ聞いた時、もう少し家庭環境について聞いときゃ良かったかな・・・。そうすりゃ、こんなホームドラマを眼前で見なくて済んだんだろうか。)

 エディンが遠くを見やりながら、心中で呟く。
 盗賊ギルドで情報を得る時には、どうしても金が必要になるので、彼は必要最低限と思われる情報をピックアップして行ったのだが、拾い忘れというものは常にある。
 ルーシーが、若々しい顔を興奮の赤に染めながら、自分の主張を叫んで部屋から出て行った。

「ルーシー!!・・・・・・まったく、あの娘は」

 ファラン氏はため息をついた。

「私も女で、しかも冒険者なんて職業に就いていますから?彼女の言い分ももっともだと思いますけどー」
「ジーニ」

 さすがに、仕事は済んでいて娘から報酬は得ているとはいえ、今度またディトニクス家の伝手で、仕事が来るとも限らない。無用な諍いを起こして、新たなしこりを生むのは得策ではないと、アレクが短く彼女の名を呼ばわって目で諌めた。
 そんな冒険者たちのやり取りを見て、ファラン氏も決まり悪くなったものらしい。

「いや、お見苦しいところをお見せしました。・・・では、私もこれで。気をつけてお帰りください」

 これ以上は踏み込まないでくれ、ということである。
 追い立てられるように、一行はファラン氏に玄関まで見送られ、屋敷を出ることとなった。

 宿屋に戻り、いつもの席につくと、酒場の親父が声をかけてきた。

「おう、おかえり。どうだった、首尾は?」
「なんというか、ある意味騙された・・・かな?」
「何?」

 ギルの答えに親父さんが顔色を変えたのを見て、慌ててエディンが要領よく説明してやった。

「・・・へぇ。どうりでねぇ。本当の依頼者は、ファラン氏じゃなく、娘さんだったわけだ」
「ま、そういうことよ」
「んー。あの人、お父さんと仲良くなれたらいいのにねえ」

 ミナスには、まだ男尊女卑の考え方が理解できなかったらしく、結局、ファラン氏の態度も「親としてすごい心配してるんだな」というくらいにしか思っていない。可愛らしく小首をかしげたエルフの少年を見やりつつ、親父が言う。

「ま、報酬はもらえたんだし、よかったじゃねぇか。後は、その娘さんが、お父さんと話し合って決めることだからな」
「その話し合いが、穏便に済めばいいのですけども・・・」
「ルーシーの夢が叶えば、さすがにあの頑固親父も、彼女を認めないわけにはいかないでしょ。かくなるうえは、あのスチームゴーレム相手の私たちの戦闘が、実を結んでくれることを祈るしかないわ」
「じゃ、今日は娘さんの夢に、乾杯だな」

 そういいながら親父さんは、人数分のカップにエール酒を注いだ。

「あ、そうだ。ねえ、ギル。僕らのパーティ名、どうするの?」
「おう、そうだ。どうするんだよ、リーダー」

 ミナスとエディンが、カップを利き手に掲げながら訊いた。
 アレクやアウロラ、ジーニも、ギルのほうを見やる。

「ああ、それなんだが・・・・・・あのウーノを見てて、思いついたのがあって」
「どんなの?」

 ワクワクしながらミナスが促すと、ギルはにやりと笑った。

「”金狼の牙(きんろうのきば)”って名前はどうだろう」
「きんろう・・・?イイね!僕それがいい!」
「いったい、どこから考え出したんだ?」

 アレクが尋ねると、幼馴染は鼻の下をこすりながら言った。

「あのスチームドッグ、綺麗な金の目をしていたろ?でも犬じゃ弱すぎる、せめて狼くらい強くないととか思ってたら、”金狼”って言葉を不意に思いついたんだ。そういう強い生き物になろうって願いを込めてね」

 しかし、ただの”金狼”では面白くないので”牙”をつけたのだと言う。
 はたして、仲間たちは「なんかちょっと恥ずかしい」「名前負けしないといいが」と文句をつけつつも、案外とすんなりその名前を受け入れた。

「よし、じゃあめでたく名前もリーダーによって決まったところで」
「乾杯よぉ!」
「え、ちょっと!なんでジーニが乾杯の音頭取るんだよ!?」

 ギルの叫びを横に置いて、一行はカップを合わせた。酒場の夜は更けていく・・・。

※収入1000sp、パーティ名決定※

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■後書きまたは言い訳
10回目のお仕事は、GroupAskさんの公式シナリオ・機械仕掛けの番犬です。
想定は1~3レベルの依頼らしいですが、はっきり言って3レベル↑じゃないと辛いと思います。
何しろ、最後のスチームゴーレムは7レベルだったりしますので・・・。

男女差別甚だしいファラン氏の発言ですが、可愛い娘を守りたくて一所懸命になってると考えると、またちょっと彼への見方が変わってくるかもしれません。いわゆる、お父さんは心配性。
これ、Askさんから続編は出てないけど、readmeに「序章」って書いてあるんだよな・・・。
一応、ルーシーのその後のシナリオを、有志の方がおつくりになってるものがございます。余力があれば、そっちも片付けていきたいと思います。

さて、今まで無名のパーティだった彼らも、いよいよ名前がついてきました。
”金狼の牙”という名は先に考えてあったもので、「いつ付けたことにしようかな~。由来どうしよう?」などとこのシナリオをプレイしていた時に、ふっとウーノの絵を見て思いつきました。ありがとう、ウーノ!

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。


2012/11/17 05:11 [edit]

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