Sat.

機械仕掛けの番犬 1  

「お前さんたちも、組んでから結構長く仕事してるなあ」

 宿の親父さんが、丁寧に拭き終わった食器たちを片付けながら言った。
 ごつい親父さんの手が、可愛らしい苺の柄がついた皿を棚に戻すのを眺めつつ、のんびりとミナスとアレクが同意する。

「うん、僕もそう思う」
「・・・確かにそうだな。願わくばこのまま、減ることなしでいきたいものだ」
「どうだ。お前さんたち、そろそろ固有のパーティ名をつけないか?」
「ふむ」

 アレクは頬杖をついて、親父さんの提案を吟味した。
 その都度メンバーを変更するのではなく、固定面子で仕事をしている冒険者なら、パーティ名はつけたほうが無難だ。
 仕事の際も、「○○のパーティを」という指名がしやすくなるし、もし何か冒険で名を上げるようなことがあれば、人々が口の端に上らせやすい。
 親父さん自身、かつては”光輝の狼”という名で知られた元冒険者で、その通り名がそのままパーティ名になったとアレクたちは聞いている。
 そんな親父さんの偉業にあやかって、「狼」の名がついたパーティ名を考える者達がこの宿には多かった。

「ギルや他のみんなと相談してみるか・・・」
「僕、かっこいいのがいいな!」

 アレクはさほど面倒見がいい性格をしているわけではないが、ミナスは明朗で素直な少年なので、つい溺愛している弟を構うような感じになる。
 この時もそうで、アレクは秀麗過ぎて人間味の少ない美貌に、滅多にない柔らかな笑みを浮かべながら、ミナスの頭をゆっくりと撫でた。

「・・・・・・というわけなんだけどさ」
「ふーん、パーティ名か。そろそろ考えても良い頃だよな」

 数時間後、エディンが見つけた貼り紙の依頼に行く途中で、ミナスがギルに固有のパーティ名を考えようと持ちかけた。
 エディンが見つけたのは木の葉通り3丁目に済む魔導師ファラン・ディトニクスの、実験データ収集の補助というものだった。
 こういった依頼は、うっかりすると非合法な研究の実験台など何かと不安が多いものだが、エディンが調べられた限りでは、このファランという魔導師の周りで、そういった非道な実験をやっている様子や、近頃トラブルに巻き込まれたという事実はなかった。
 親父さんからも、この魔導師の専門は古代文明の研究で、黒魔術などに凝ってるようなことはない、とお墨付きを貰っている。なんでも、ファランの娘が店に直接来たらしい。

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 他に目ぼしい依頼があるわけでもないので、一行はこの仕事を引き受けることにしたのだった。

 宿屋の亭主から渡された地図のとおりに進むと、町外れの屋敷にやってきた。
 ・・・辺りには特に人影もない。まさに魔導師の館と呼ぶにふさわしい建物だ。

「じゃあ、今回の依頼が終わったら、ちょっとみんなで考えてみるか!」
「うん!」
「パーティ名ですか・・・」
「ちゃんと覚えやすくて言いやすいのがいいわねー」

 雑談をしながら一行が屋敷の門をくぐり、玄関へ向かったその時。

『バウ!! バウ!!』

ScreenShot_20121107_004615062.png

 なんと、全身を金属で作られた犬のようなものが現れた!
 腹部の横のパイプからは、時折ガスを噴出している。

「な、なんだこりゃ!?」

 驚いたギルの様子を尻目に、その犬のようなものは、ガチャガチャと金属音をさせながら、一行をトパーズのような双眸でじっと見据えている。・・・威嚇しているようだ。

「ウーノ?どうしたの」

 その時、屋敷の方から女性の声がした。
 犬のようなものはくるりと向きを変え、玄関の方へ向かって走っていった。
 行く先に目をやると、ひとりの少女が立っているのが見える。

 一行も、玄関へと足を進めた。

2012/11/17 04:54 [edit]

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