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Wed.

敵意の雨 2  

 海港都市エルリース。
 ギルがリューンの遥か西にある街へ仲間とやって来たのは、依頼の為ではなく半分以上観光目的での滞在であった。
 それが今から3日前の夜、一行が都市の酒場で寛いでいると、1人の商人風の男が話しかけてきたのである。
 男の話を簡潔にまとめるとこうだ。

「私はこの街の商会の人間です。あなた達のような優秀な冒険者に是非お願いしたいことがあります。報酬は皆さんの満足のいく額を商会の名にかけて約束しましょう。ただ、依頼の詳細はここでは言えません」
「もし興味がおありでしたら3日後の夜、あなた達の中から代表者を1人選んで街の北西にある集会場までお越しください」
「ただ、この件はあなた達だけではなく複数の冒険者パーティにも依頼をするつもりですので、あらかじめご了承を――」

 その時は男の話を怪しまないでもなかったが、商会が実在すること、そして男がそこの商会の人間であることをエディンが翌日に確認。
 今のところ、特に仕事もない一行は話だけでも聞きに行くことにし、ギルが男の指定した場所まで足を運んだのだった。

「あそこか・・・・・・」

 街の中で、ひときわ豪華でも何でもない建物は、まさに街の外観に『溶け込むように』してあった。個人の邸宅とはほど遠い様子のその造りだけが、集会を目的とした建物であることを物語っている。
 ギルは小さく息を吐くと、ゆっくりと集会場の扉を開いた。

(これは・・・・・・)

 中に入ると、そこには多くの冒険者達がひしめき合っていた。

敵意04

(依頼を申し込んだ冒険者は俺達だけじゃないと言ってたが・・・・・・。予想してたより多いな。30人はいそうだ。)

 冒険者は基本的に、4~6人のパーティで行動する事が多い。
 今この場に集まっているのはパーティの代表者のみなので、依頼を受ける冒険者は120~180人はいる計算となる。

「おい、アイツ見ろよ・・・・・・。”金狼の牙”のギルバードじゃないか?」
「え、ギルバートって・・・・・・あのキーレの英雄かよ!?」
「ああ、間違いない。・・・・・・本物の”暴風”ギルバートだ!」

 ギルはすっかり他の冒険者たちの注目の的となっている。・・・・・・正直、複雑な気分だった。

(・・・・・・俺も有名になったのものだ。ってゆーか”暴風”ギルバートって何だよ。名乗ったことねえぞ、そんなもん。)

 そんな彼の思いと裏腹に、まだこそこそした周りの囁きは納まらない。

「ねえ、知ってる・・・・・・?ギルバートと揉めて潰された冒険者は、10人や20人じゃきかないらしいわよ・・・・・・?」
「マジかよ!こわーっ!!」
(心なしか、噂が捻じ曲げられてるような気が・・・・・・。バトルオリンピアトーナメントのことと混ざってるんじゃねえか?)

等と考えながら、ギルは辺りをさり気なく見渡した。
 それにしても――あまり大した実力の冒険者はいなさそうである。そのほとんどが、中堅か駆け出しといったところ。

(・・・・・・あの3人を除いては)

敵意05

 ギルの目がきゅう、と窄まった。他の冒険者たちとは明らかにレベルが違う。
 もっとも、そのことに気づいているのはギル自身と当の3名だけであったろう。
 そこまで考えた時、コツコツという小気味のいい革靴の足音が廊下の方に響き、部屋に集まっていた冒険者たちは顔をあげて入り口を見やった。

「・・・・・・お。誰かきたみたいだぜ」
「商会の人じゃない?そろそろ時間だし」
「これだけの冒険者を集めて説明会をするぐらいだから、やっぱり長話になるのかな・・・・・・」

 そんな会話をしているうちに一番奥の扉が開き、商会の人間らしき男が姿を現した。
 会場の中に入ってきたのは、20代半ばぐらいの精悍な顔つきをした男だった。
 一見すると中肉中背のようだが、見る者が見れば、この男がかなり鍛えられた体の持ち主であることがわかるだろう。

(・・・・・・あれは素人じゃないな。それに何か同業者の匂いがする)

 そう推察するギルを余所に、男は口を開いた。

「皆さん、こんばんは。本日はお忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございます。ただいまより、我々シアノス商会が提示しております依頼についての説明会を開始したいと思います」

 男はそこでお辞儀をした。

「申し遅れました。私、本説明会の司会を努めさせていただきますダニーという者です。以後宜しくお願いします」

 彼はきびきびと、説明会は質疑応答を含めて40分ほどを予定していることを話し、その間の入退室は自由であること、ただし他の者の迷惑にならないようにすることを述べた。

「では、本題に入る前にお伺いしたいのですが――皆様の中で、このエルリースを拠点にしていらっしゃる方はおられますか?」

 約30人の冒険者の中で、挙手をしたのは2人だけだった。

「では最初に、エルリースがどういう都市なのかをお話しましょうか。そもそもエルリースの成り立ちは――」

 それから約20分に渡って、海港都市エルリースについての詳しい紹介が行なわれた。
 歴史・特産物・主産業等々――歴史や特産物についての説明はそれほど時間は割かれなかったが、主産業である交易についての説明はかなり熱が入っていた。
 そのことから、エルリースにとって交易業いかに重要なのかが窺える。

「・・・・・・というわけなのです。ですので、我々シアノス商会――いえ、エルリースにとって新たな交易の航路を開拓することは重要な課題なのです」
(航路の開拓、ね・・・・・・。)
「さて、ここから本題ですが――その航路開拓にあたって、深刻な障害があるのです」
「深刻な障害?」

 そう疑問を口にしたのは、黒いフードを目深に被った男だった。ギルが気にした実力者のうちの1人である。 
 ダニーと名乗った説明役はこっくりと頷いた。

「はい。エルリースから、西に船で1日程の処に一つの孤島があるのですが・・・・・・『障害』というのは、その島なのです」
「島が?」
「!ま、まさか・・・・・・」

 訝しげな表情をする者の多い中、そう言って立ち上がったのは先ほど、エルリースを拠点にしていると言っていた冒険者であった。

「そ、それって・・・・・・『竜の島』のことか!?」
「そのとおり。『竜の島』です」

 首を捻るギルのやや前方に座ったヒゲ面の男が、渋いバスでダニーに問うた。

「何だい、その竜の島ってえのは――」
「何の変哲もない、ただの小さな島ですよ。・・・・・・魔物共の巣であるということ以外はね」
「・・・・・・!」

 航路開拓にあたって、魔物の巣窟である島は障害以外の何物でもない。
 過去、あの島に近づいただけで魔物共に沈められた船は数知れず、と説明役は顔色も変えずに言った。

「ここまで申し上げれば、勘のいい方ならもうお分かりと思いますが、我々シアノス商会が皆さんに依頼したいことは、竜の島に巣食う魔物共の掃討です」

 彼は言う。島の魔物の数は全くの未知数であると。

「今この場にいる方々のパーティを全て動員しても、根絶できる可能性は決して高くはないでしょう」
「じゃあ、どうするんだ?」
「そこで我々は考えました。魔物共の親玉さえ倒せば、島から魔物はいなくなるのではないかと――」
「魔物共の親玉?」

 口々に疑問をぶつけてくる冒険者パーティの代表者たちに、ダニーは臆することなく答えた。

「はい。よって、その魔物の親玉を倒していただけたら依頼完了とみなし、報酬を支払いましょう。報酬は10000spを用意しております」

 ギルは手袋したままの指で頬をかいた。

(これはまた、べらぼうな・・・・・・)

 呆れたような顔のギルの近くにいる冒険者たちは、すっかり興奮しきった声で言い募っている。
 そんな中、最初にエルリースを拠点にしていると挙手した男たち2人の顔色はすっかり蒼白となっていたが。

「ほ、本当か!?その親玉とやら1匹倒しただけで、10000spもくれるのかよ!?」
「はい。証拠となる品を持って、商会本部までお越しくだされば報酬をお支払いします」
「うおおおおおおお、マジか!」
「おい、俺と組もうぜ!」
「バカ言ってんじゃねえ!10000spは俺達のパーティがもらうぜ!」

 興奮と狼狽の坩堝で、それでも微塵も表情を変えない者が4人。
 うち1人であるフードの男が、ふらりと顔を説明役へ向けた。

「・・・・・・ダニーさんと言ったな。一つ聞かせてもらえないか」
「何でしょう?」
「その魔物の親玉とは、どんな奴なんだ?」
「ドラゴンです」

 ダニーがそう呟いた瞬間、ざわめきがピタリと止んだ。

「お、おい・・・・・・。今、何て言った・・・・・・?」
「我々シアノス商会が、皆さんに討伐していただきたい魔物の親玉とはドラゴンなのです。・・・・・・厳密に言えば、エンシェントドラゴンなのですが」

 エンシェントドラゴン。一説によれば、神や悪魔にも匹敵するとまで言われる伝説の魔物である。その名を知らない冒険者がいたら、冒険者など廃業した方がいい。
 そんな伝説の魔物が標的であるとわかった今――場内にいる冒険者たちの頭からは報酬のことなど吹き飛んでしまったことだろう。

(・・・・・・そんなことだと思った)

 ギルは脚を組んだ体勢で、やれやれと頬杖をついた。
 ダニーは説明した。
 ドラゴンの名前は暗黒邪竜。全身を黒い鱗で覆われていることからそう名づけられたという。
 いつ頃から島に住み着いているのか、どういった性質を持つのか、といったことはほとんど知られていない。
 ただカルバチア図書館の文献によると、900年前の時点ですでに暗黒邪竜が島に生息していた記録が残っている。
 900年以上も生きているということは、古竜すなわちエンシェントドラゴンと見て間違いないだろう――というのがシアノス商会の見解らしい。

「纏めに入りますが、依頼内容は島にいるエンシェントドラゴン、暗黒邪竜の討伐。報酬は10000sp。期限は1週間ということでお願いします」

 この条件で納得して貰えたなら、明日正午にエルリースの港まで足を運んで欲しい、とダニーは凍りついたように動かない面々を見回した。

「そこから当商会の船で、皆さんを島までお送りいたしましょう。島に到着してから、その1週間後に迎えの船を送ります。依頼の成功失敗に関わらず、その船には絶対に乗るようにしてください」
「・・・・・・条件に納得できない場合は?」
「無論、条件がお気に召さない場合は無理に引き受けてくださらなくて結構です。断りの旨を伝える必要もありません」

 説明は以上だと区切ったダニーは、質疑応答の時間を取る事にした。
 遠慮なくギルが手を挙げる。

敵意06

「ちょっといいか?ドラゴン級の魔物を討伐するなら普通は騎士団の出番だろう。何故冒険者に依頼を出す?」

 実際、”金狼の牙”がやった蟲竜退治においても、ランプトン卿の騎士団が派遣されていた。結果的に、あれはシニサという1人の騎士と”金狼の牙”たちとの共闘となったが――。

「実は過去に2度――約300年前と約70年前に国は騎士団を島に派遣し、邪竜討伐を試みたのですがいずれも全滅したらしいのです」
「き、騎士団でも歯が立たなかったのか!?」

 上ずった声が駆け出しらしい男から発せられ、ダニーはいずれも1万人以上の大規模な騎士団が出動された旨を話す。

「・・・・・・ですが我々は、その敗因は単純な強さの問題だけではないと考えています」
「どういうこと?」

 眉をひそめながら聞いたのは、赤みがかった金髪の女性であった。

「まず一つ目。騎士団とは本来、国の戦争――すなわち、自分たちと同じ人間との戦いでこそ力を発揮するもの。相手が魔物では、本来の実力を発揮できないでしょう」
「そして二つ目。あんな小さな島に万単位の騎士団を送り込んでも、活躍は到底期待できません。それならば、少人数での行動が得意な冒険者たちの方が遥かに有利でしょう」

 以上のようなダニーの説明に、中堅や駆け出しといった風情の代表者たちは口々に「なるほど」などと呟き、首肯している。

「そういった要因を考慮に入れて、我々は冒険者である皆さんに依頼を申し込むことにしたのです。・・・・・・それに」
「それに?」

敵意07

「我々は、現在この都市にとある英雄達が滞在していることを耳にしました。凡百の騎士団など及びも付かない力を秘めた英雄達のことを――」
「英雄たち・・・・・・?」
「!そ、それってまさか・・・・・・!」

 場内にいる冒険者達が、一斉にギルの方を向く。

「その通り。リューン・・・・・・いや、世界最強と言われている”金狼の牙”です。ギルバートさん。あなた達には商会の人間全員が期待していますよ」
「期待されすぎても困るな・・・・・・。やってみなければわからんよ」

敵意08

「ははは。あなたが言うと、頼もしく聞こえるから不思議です」

 ギルは不本意そうな顔になって頭を掻いた。彼が言ったのは謙遜でも何でもなく、本気の言葉だったのである。
 何しろ、今のギルにはその暗黒邪竜とやらの能力も竜の島の知識も、何も前情報がない。
 ロスウェルの時は、あの先輩冒険者からの説明があった。だからこそ、彼らはあの黒エルフの崇拝する竜が待つ穴へ飛び込んだのである・・・・・・。

(後でジーニに聞いてみよう。)

 彼の思いとは裏腹に、ダニーの台詞は続いていた。

「それに加えて、ここにいらっしゃるのはいずれも有能な方ばかり・・・・・・。皆さんの力を持ってすれば、必ずや我々の期待に応えてくださるものと信じています」
(とてもそうは見えんが。)

 その有能な方々とやらから、報酬についての追加質問があった。
 邪竜以外を倒した者に対する報酬――それについては1匹につき50spを支払うそうだ。勿論、証拠の品あってと注釈をつけることを忘れない。
 70年前の記録ではオーガ・トロール・ミノタウロス等がいたという。
 大方の冒険者たちの意識は、邪竜討伐からその雑魚退治にシフトしたようだ。10匹退治で真っ当な報酬になることや、今は魔物の顔ぶれが少し変わっているのではと口々に呟いている。

(皆、邪竜を倒すことは諦めているようだな・・・・・・。まあ当然と言えば当然だろうが。)

 上がった質問もそこまで。ダニーは説明会を終了することにした。

「それでは、説明会を終了させていただきます。本日はお忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございました」

 彼のその言葉を契機に、場内の者達は次々と立ち上がり、出口へ向かっていく。

(帰るか――。)

 そう思い立ち上がったギルの視線の端で、悠々と座るヒゲ面の男の姿が、妙に彼の記憶に残った――。

2013/05/15 23:33 [edit]

category: 敵意の雨

tb: --   cm: 2

コメント

うちの昔のパーティはSad in Satinで脱ぐルートやってたからここで一悶着ありました・・・

URL |  #- | 2013/06/10 19:23 | edit

コメントありがとうございます

>6月10日の匿名様へ
コメントありがとうございます、お返事遅れてすみません…。そう、敵意の雨はあの経験をしたPTだと、たちまち喧嘩を売られるのですよね。…美味しさを求めるなら、やっておけば良かったかしら…(笑)

URL | leeffes #zVt1N9oU | 2013/07/23 16:25 | edit

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