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敵意の雨 1  

「おう、来たか」 
「ハッ!ここに!」
「・・・・・・どういったご用件でしょう?ディアーゼ様」

 その場に集まったのは3名の影だった。
 特筆すべきは、ディアーゼと呼びかけられた、最初に「来たか」と発言した影である。それは紛れもなく少年期特有の高い声であった。
 彼はその声で言った。

「その前に、ジュビアはどうした?まだ来てねえのかよ?」

 不満そうな響きに、「ここに」とすぐ応えた方の影が戸惑いがちに言う。

「すぐに来るように伝えたのですが・・・・・・」

 そのときだった。

「遅れて申し訳ございません」

 女の声が響く。これで4度目だと怒鳴る声に、彼女は怒鳴らなくても聞こえるとからかうように返した。
 一触即発の雰囲気を止めたのは、少年の声であった。

「やめとけ、バルガス」
「し、しかし・・・・・・」
「ジュビアもいい加減、呼ばれたらとっとときやがれ。分かったな」
「以後気をつけます」

 そのやり取りに、残る一つの影が(何故こうもこの女には甘いのか)という表情をしたことに気づいたのだろう少年の声が、

「何か言いたそうだな、イルード?」

と鋭く問う。
 気づかれたことと、それについて追求されたことによる狼狽の声が出たが、「何でもございませんよ」という台詞でその場は納まった。
 バルガスと呼ばれた影が、ここに自分たちを集めた理由を少年へ訊ねる。

敵意01

「・・・・・・本題に入る前に、お前らに聞いときてえんだが。”金狼の牙”のことは知っているな?」
「”金狼の牙”・・・・・・ですか?はて、聞いたことがあるような・・・・・・」
「何ですそりゃ?新しくできた娼館ですかい?」

 バルカスとイルードがそう応えるのに、ディアーゼという少年はあからさまに脱力した声をあげた。

「・・・・・・知らねえのかよ」
「人間の冒険者集団ですよね?それも、極めてタチの悪い――」

 残るジュビアが切り出した評価に、我が意を得たりといった風情で少年は頷いた。
 人間の。
 わざわざそういう単語を冠した事からも分かるとおり、この場に居る影はいずれも、人ではない。
 三つ目の魔族、青白い顔の吸血鬼、傷だらけの顔を持つ狼男、大柄で継ぎ目の目立つ人造人間・・・どれもがある意味で「人間」の敵側に位置する存在であった。

「そうだ。もっとも、『タチが悪い』なんてレベルじゃねえがよ」
「人間・・・・・・!」

 はき捨てるようなバルカスの言葉に、イルードが茶化すように出した台詞が重なった。

「人間の冒険者・・・・・・ねえ。そんな連中、取るに足らないでしょ?」
「普通なら、ね」
「ああ?」

 そんなイルードを鼻で笑うかのようなジュビアに、彼は不審そうな声をあげた。

敵意02

「そうね。例えば・・・風の大悪魔ヴィンディバックス。ザンダンカルに封じられし魔王。冥王カナン――」

 ジュビアは次々と人外の強者の名を挙げていく。それはディアーゼももちろんのこと、バルガスやイルードもよく知っている名ばかりだった。

「・・・・・・全員、”金狼の牙”の被害者でしたわね?」
「ああ、その通りだ」
「おいおい、ウソだろ・・・・・・!どれもヤバい奴らばっかりじゃねえか!」

 落ち着き払ったディアーゼの首肯とは対照的に、額に脂汗を滲ませたイルードが叫ぶ。
 その様に三つ目の少年は苦笑した。

「全くだ。・・・・・・どいつもこいつもヤバすぎて、俺でも近づきたくねえ。だが――”金狼の牙”の連中は、そいつら全員に打ち勝ってきたんだよ」

 バルガスが勢いよく首を横に振り、イルードが動揺する。

「バカな・・・・・・!人間如きにそんな・・・・・・!」
「し、信じられねえ」
「”金狼の牙”ともし戦うことになれば、いくらディアーゼ様といえどかなり分が悪いのでは?うふふ・・・」
「ジュビア!!言葉に気をつけんかァ!!!」
「あら、事実を言ったまでよ?」
「何!?」

 どれほどこの魔族に心酔しているのか、バルガスは噛み付くように――まさしく文字通りの意味で――ジュビアに反論し激昂したのだが、当の本人から水を差された。

「ジュビアの言う通りだよ。とてもじゃねえが勝てる気がしねえ」
「ディアーゼ様!?何を仰います!!」
「考えてもみろ、バルガス。今さっきジュビアが挙げていった奴ら――。あいつらを倒すような連中が、俺の手に負えると思うか?」
「そ、それは・・・・・・」

 口篭ったことそれ自体が、何よりも雄弁な答えである。
 決してこの狼男の気性が嫌いではないディアーゼは、彼を宥めるように見た後に口を開いた。

「しかし、だ。逆に考えれば――もし、この手で”金狼の牙”をブチ殺せたら?」
「!」
「あの連中を俺がブチ殺したら、闇の世界で俺に逆らう奴は今よりも遥かに少なくなる。・・・・・・そうは思わねえか?」

 反抗的な言動の目立つジュビアですら、それに同意した。

「”金狼の牙”のボケ共の首には、それだけの価値がある。これを利用しない手はねえだろ?」
「・・・・・・なるほど」

 小ずるい笑みを浮かべて吸血鬼が頷く。その向こうで、狼男がディアーゼへ新たな忠誠を誓うかのように宣言した。

「話はわかりました。憎き人間共を滅するためならばこのバルガス、喜んで力を尽くしましょうぞ!!」」
「意気込みは買うが、まあ落ち着け。連中の力を侮るな。さっきも言ったとおり、闇の強者たちを次々と討ち取ってきた奴らだ」

 ぺろり、と闇の中で赤い舌が蠢く。

「いくら俺達といえども、まともにやり合えば勝ち目はねえ」
「ぬう・・・・・・!」
「・・・・・・じゃあ、どうすれば?」

敵意03

「・・・・・・まともにやり合えば、な」

 ディアーゼはそう言ってニヤリと口元を歪めた。
 その笑みを目にしたジュビアたちの背に冷たいものが走る。

「俺にちょっとした考えがあるんだけどよ・・・・・・。当然、お前らにも乗ってもらうぜ?」

2013/05/15 23:29 [edit]

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