Wed.

木の葉通りの醜聞 7  

 数日後。
 銘々で行動していた”金狼の牙”たちは、≪狼の隠れ家≫で集めた情報を概括することにした。

「ところで・・・」

 眠たげな黒瞳をちらり、と暖炉の脇にやったエディンが問う。

「これは?」

醜聞22

「野暮な到来物でしてね」

 アウロラはそれ以上詳しくは語らず、肩をすくめるに留まった。
 芸術にさして興味はないとはいえ、職業柄その価値を推し量ってしまうエディンの眼からすると、そのチェロは売れば5000spはするだろう代物であった。
 パーティの共有財産から買った様子も見られず、少し戸惑ったような顔をしていた仲間たちであったが、アウロラは構わずに話を続けることにした。

「そういえば・・・この間のメモのことは調べてくれましたか」
「うん。後は聖北教会に頼むだけ・・・何に使うんだ?」

 ギルは首肯しつつメモの控えをアウロラに投げて渡した。

「救助用です。囚われし7人目の被害者のためのね・・・」
「囚われし7人目だって?次の犠牲者はもう犯人の手にかかっているということか?」

 アレクが訝しげに訊ねると、アウロラは静かに肯定する。

「ご明察。7人目にして最初の犠牲者ですよ。ですがまだ助かります」
「その口ぶりだと・・・犯人に検討がついているようね」

醜聞23

 杖を弄ぶジーニの台詞に、彼女はただ静かに微笑んで応じた。
 自分の肩にトールを座らせたアレクが、「ちょっといいか」と仲間たちに呼びかける。

「俺にも気になる人物が居る。女優イルマ・スカルラッティ」
「アレクはんとわてで調べてきた話ですがね。6人目のお嬢さんは、その女優さんの肖像画教室に通ってたらしいんですわ」
「それと事件の日、体調を崩して、医者へ行く途中に事件に遭ったらしいな」
「ああっ、それそれ!」

 幼馴染と雪精の会話の途中で、ギルが割り込む。

「それだよ。他の被害者の家族にも話を聞いてみたけど、その日のうちに体調が悪くなったと聞いたよ」
「そういえば・・・・・・」
「どうした、ミナス?」

 エディンが横に座る少年へ水を向けた。

「5人目の被害者のホフマンさんは、劇場からの帰り道に犠牲になったらしいよ」
「劇場か・・・あやしいな」
「だけど、裏付けもなくイルマ・スカルラッティを犯人扱いするわけにもいかねえよな」

 顎に手をやって考え込むアレクに、珍しくギルが真っ当な意見を出す。

「その女優から話を聞くだけ聞いてみようよ」

 ミナスが小さい拳をぶんぶん振り回して主張する。
 いつもならそれに賛同するであろうアウロラは、気の毒そうに彼に言った。

「おっと・・・残念なことにその女優は来月まで戻りません。アレトゥーザで公演をしていますからね」
「えーっ!?」

 不満そうな叫びをあげた少年を慰めようと、アウロラは小さく苦笑して、ハーブを練りこんだビスケットを彼に渡す。
 少し機嫌の直った彼や仲間たちのために、慣れた仕草で翡翠色の≪水銀華茶≫を淹れていると、ジーニが「アウロラ」と呼び止めた。

「知った口ね。アウロラのつけた犯人の目星とやらはどうなの?」

 コポポポポ・・・と、花柄の塗装が剥げたポットから不恰好なマグに、芳香立ち昇るお茶が注がれる。
 きっかり6人分を淹れ終わると、彼女は落ち着いた挙措でそれを仲間たちに配ってからジーニの質問に答えた。

「それについては、皆さんに手伝って貰いたい事があります。それは違法であり、ややもすると追われる身になりかねませんが」
「あら、珍しいこと」

 目を閉じてお茶の薫香を楽しんでいたジーニが、愉快そうにそう呟いた。
 今までのアウロラは、どちらかといえば窮地の立場に追いやられるパーティを客観的に見て、あえて主流と反対の意見を述べる事の多い立場であった。
 自らの行いでパーティをまずい立場へ追いやるようなことは、ついぞやったことはない。どちらかと言えば、それはギルやジーニのやらかす事である。
 それがここに来てどういう心境の変化であろう。
 戸惑う他の大人たちを制して、アウロラの味方をすると決めているミナスが、「毒を喰らわば皿までっていうじゃない」と快活な笑い声をあげた。
 アウロラも、他の仲間たちも、その姿にふっと頬を緩めた。

「ありがとうございます。ではこの8人目の犠牲者に犯人を手引きして貰うとしましょう」
「8人目?アウロラが?」

醜聞24

「複雑怪奇な醜聞の巣も、ひょんな依頼からその網を絡め取られることがあります・・・」

 眉をひそめたアレクの反応に、アウロラはそっと応えた。

2013/05/08 05:13 [edit]

category: 木の葉通りの醜聞

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