護衛求む 5
「・・・・・・・・・来る!」
ギルの叫びと、森の精霊たちが襲い掛かったのはほとんど同時だった。
自分への攻撃と、ローンへの攻撃を同時に庇ったギルが体力を半分以上削られるが、上手く詠唱を繋いだジーニが、植物モンスターの苦手な【火炎の壁】の魔法を繰り出す。
敵の数が多いと瞬時にとって見たアレクは、武闘都市エランで覚えたばかりの【飛礫の斧】という技を二回使い、四方から襲いかかる雑魚の掃討をした。
ミナスは精霊語で雪精に呼びかけるが、エントの有様に心を痛めているためか、上手く呪文に集中できない。
補助魔法もないまま、不利な条件で彼らは戦ったのだが、ギリギリでアウロラが放った【光のつぶて】が、炎の攻撃で弱っていたエントに止めを刺した。
「グッ・・・・・・」
「ごめん・・・エント、こんなやり方しか出来なくて、ごめん・・・」
泣きじゃくるミナスの頭を抱え込むように撫でたアレクが、ぽつりと呟く。
「・・・精霊・・・」
昔、精霊剣士として名を馳せていた父がここにいたら、自分とは違う結末を彼らに与えられただろうか、とアレクは考え込んだ。
父と同じ道を歩むつもりは毛頭なく、今まで魔法剣のみを習い覚えていたアレクだったが、初めて父と同じ道に興味を覚えた。
「野盗・・・いや、我々人間の行いにずっと怒りを抱いていたんですね・・・」
哀しげに聖北の印を切るアウロラの横で、ローン氏が放心したように言った。
「・・・すいません。私達はもっと・・・考えなければならないのですね・・・」
その時、木々が揺れた。ローン氏の言葉に呼応するかのように。
ローン氏が、野盗の骸をどうするか一行に聞いてきた。
「埋葬してやろうぜ・・・」
そう答えたリーダーに否やを唱えるメンバーは、いなかった。
数時間後、彼らの姿は無事、リューン市内へと移っていた。
ローン氏が一行の苦労を労う。
「みなさん、今回は本当にご苦労様でした」
「いえいえ、ローンさんも疲れたでしょう」
「そうですね・・・。ですが、みなさんのおかげで無事に帰ってこられました」
頭に巻いた白い布に手を当てつつ、ローン氏は続ける。
「もし護衛してくれたのがみなさんでなかったら、私は今ごろ、ここにいなかったかもしれません・・・本当にありがとうございました」
「いや、そんな・・・改まって言われると、照れちゃうじゃない」
上品ぶって口に手を当てて笑うジーニに、仲間が苦笑する。
そんな彼らと同じ表情をしていたローン氏が、姿勢を正して一同に言った。
「では、そろそろお別れですね。こちらが約束の報酬です」
「あれ?多いわよ?」
「・・・感謝の気持ちですよ」
本当にいいのかという面持ちになったジーニの背中を、エディンが軽く叩いてローン氏に頭を下げた。
「分かりました。ではありがたくもらっておきますね」
「・・・よかったら、また護衛を引き受けていただけますか?」
「ええ、いつでも張り紙を出して下さい」
「お願いします。それでは・・・・・・」
これまでずっと同じ道を歩んできた行商人が、リューンの雑踏の中に消えたのを見届けて、アレクが言う。
「・・・俺達も帰るか」
「そうね・・・」
うーん、と髑髏のついた杖を持ったまま伸びをしたジーニが、颯爽と宿の方へと歩き出すのに、慌ててミナスとアウロラがついていく。
その様子を後ろから眺めながら、ギル、アレク、エディンも、子どものように互いを小突きながら歩き出すのだった。
※収入500sp+1500sp(護衛求む+要港都市ベルサレッジ)※
--------------------------------------------------------
■後書きまたは言い訳
7回目のお仕事は、寝る前サクッとカードワースフォルダから、がじろーさんの護衛求むのシナリオです。
隣町までの行商人の護衛という、ともすればありがちな依頼になりかねない仕事を、「隠者の庵」キーコードに反応するようにしたり、森の中に様々な罠を作ったりして飽きさせない手腕は、さすがカードワース内の大ベテランさんだなあと、始終感心させられました。
今回のひそかなお気に入りは、ぷちっと切れたアウロラと、精霊使いとしてのプライドを見せたミナスだったりします。
アウロラは、怒らせると一番怖い人。ドンドン毒舌の鋭くなるジーニと違って、冷静にぷつっと切れるので余計怖い。
ミナスは、いつもは戦闘で攻撃に支援にと縦横に活躍してくれるのですが、このシナリオでの戦闘ではまるで良いところがなく、きっとエントの姿に動揺したに違いない、と私は考えました。
当然、シナリオにこちらの勝手な設定が入ってくるわけではないのですが、ゲーム上の偶然でこちらの思惑に当てはまった瞬間というのは、リプレイ書きにとって何より嬉しい物だと思います。
当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。
ギルの叫びと、森の精霊たちが襲い掛かったのはほとんど同時だった。
自分への攻撃と、ローンへの攻撃を同時に庇ったギルが体力を半分以上削られるが、上手く詠唱を繋いだジーニが、植物モンスターの苦手な【火炎の壁】の魔法を繰り出す。
敵の数が多いと瞬時にとって見たアレクは、武闘都市エランで覚えたばかりの【飛礫の斧】という技を二回使い、四方から襲いかかる雑魚の掃討をした。
ミナスは精霊語で雪精に呼びかけるが、エントの有様に心を痛めているためか、上手く呪文に集中できない。
補助魔法もないまま、不利な条件で彼らは戦ったのだが、ギリギリでアウロラが放った【光のつぶて】が、炎の攻撃で弱っていたエントに止めを刺した。
「グッ・・・・・・」
「ごめん・・・エント、こんなやり方しか出来なくて、ごめん・・・」
泣きじゃくるミナスの頭を抱え込むように撫でたアレクが、ぽつりと呟く。
「・・・精霊・・・」
昔、精霊剣士として名を馳せていた父がここにいたら、自分とは違う結末を彼らに与えられただろうか、とアレクは考え込んだ。
父と同じ道を歩むつもりは毛頭なく、今まで魔法剣のみを習い覚えていたアレクだったが、初めて父と同じ道に興味を覚えた。
「野盗・・・いや、我々人間の行いにずっと怒りを抱いていたんですね・・・」
哀しげに聖北の印を切るアウロラの横で、ローン氏が放心したように言った。
「・・・すいません。私達はもっと・・・考えなければならないのですね・・・」
その時、木々が揺れた。ローン氏の言葉に呼応するかのように。
ローン氏が、野盗の骸をどうするか一行に聞いてきた。
「埋葬してやろうぜ・・・」
そう答えたリーダーに否やを唱えるメンバーは、いなかった。
数時間後、彼らの姿は無事、リューン市内へと移っていた。
ローン氏が一行の苦労を労う。
「みなさん、今回は本当にご苦労様でした」
「いえいえ、ローンさんも疲れたでしょう」
「そうですね・・・。ですが、みなさんのおかげで無事に帰ってこられました」
頭に巻いた白い布に手を当てつつ、ローン氏は続ける。
「もし護衛してくれたのがみなさんでなかったら、私は今ごろ、ここにいなかったかもしれません・・・本当にありがとうございました」
「いや、そんな・・・改まって言われると、照れちゃうじゃない」
上品ぶって口に手を当てて笑うジーニに、仲間が苦笑する。
そんな彼らと同じ表情をしていたローン氏が、姿勢を正して一同に言った。
「では、そろそろお別れですね。こちらが約束の報酬です」
「あれ?多いわよ?」
「・・・感謝の気持ちですよ」
本当にいいのかという面持ちになったジーニの背中を、エディンが軽く叩いてローン氏に頭を下げた。
「分かりました。ではありがたくもらっておきますね」
「・・・よかったら、また護衛を引き受けていただけますか?」
「ええ、いつでも張り紙を出して下さい」
「お願いします。それでは・・・・・・」
これまでずっと同じ道を歩んできた行商人が、リューンの雑踏の中に消えたのを見届けて、アレクが言う。
「・・・俺達も帰るか」
「そうね・・・」
うーん、と髑髏のついた杖を持ったまま伸びをしたジーニが、颯爽と宿の方へと歩き出すのに、慌ててミナスとアウロラがついていく。
その様子を後ろから眺めながら、ギル、アレク、エディンも、子どものように互いを小突きながら歩き出すのだった。
※収入500sp+1500sp(護衛求む+要港都市ベルサレッジ)※
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■後書きまたは言い訳
7回目のお仕事は、寝る前サクッとカードワースフォルダから、がじろーさんの護衛求むのシナリオです。
隣町までの行商人の護衛という、ともすればありがちな依頼になりかねない仕事を、「隠者の庵」キーコードに反応するようにしたり、森の中に様々な罠を作ったりして飽きさせない手腕は、さすがカードワース内の大ベテランさんだなあと、始終感心させられました。
今回のひそかなお気に入りは、ぷちっと切れたアウロラと、精霊使いとしてのプライドを見せたミナスだったりします。
アウロラは、怒らせると一番怖い人。ドンドン毒舌の鋭くなるジーニと違って、冷静にぷつっと切れるので余計怖い。
ミナスは、いつもは戦闘で攻撃に支援にと縦横に活躍してくれるのですが、このシナリオでの戦闘ではまるで良いところがなく、きっとエントの姿に動揺したに違いない、と私は考えました。
当然、シナリオにこちらの勝手な設定が入ってくるわけではないのですが、ゲーム上の偶然でこちらの思惑に当てはまった瞬間というのは、リプレイ書きにとって何より嬉しい物だと思います。
当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。