Sun.

ネルカ城砦跡 6  

 ≪エア・ウォーカー≫で再び魔法の翼を生やした”金狼の牙”の面々は、ゆっくりと穴の下に降りていった。

「何ですか、すごく暗すぎません・・・?」
「確かに・・・まったき闇といえども、ここまで暗いのはおかしい」

 アレクがアウロラに同意する。
 2人に先行する形で先に下りていたギルは、小さく身を震わせた。
 何かとてつもないものが、この闇の向こうにいる気がする――。
 空中にいる時に襲われない用心のため、マントでランタンの灯りを隠していたエディンが、ばさっと一気に覆いを外した。

「――!?」

 あげた声なき叫びは誰のものだったのか。

ネルカ城砦17

「マダダ、マダ負ケテイナイ!」

 ぎしぎしと軋みをあげて大きな鎌を振り上げていた”それ”が口にしたのは、憤怒と悲痛に歪んでいる声であった。
 白く蠢くその様子は骨に間違いは無いのだが、その瘴気といい、漂う重圧といい、今までの遺跡の敵の比にはならない強敵であることを、全員悟らざるを得ない。
 ミナスが呻く。

「ネルカの石の力がこんなところにも・・・!」

 地下をコーティングしているネルカストーンの影響は、どうやらこの得体の知れない敵にも及んでいるようだ。
 振り上げられた鎌は、精霊が憑依したミナスの放つ氷霧やギルの【破邪の暴風】をものともせず、”金狼の牙”たちをなぎ払った。
 冒険者たちはバラバラに吹き飛ばされ、床に血反吐とともに叩きつけられる。

ネルカ城砦18

「ぐあっ・・・!」
「くっ・・・。【召雷弾】!」

 篭手の指先に宿った魔法の雷が、暗闇を引き裂いて頭蓋骨へと突き刺さる。
 瞬間だけ明るくなった軌跡を確認して、エディンが床を蹴った。
 【暗殺の一撃】によるレイピアの刺突と、それを軽減させようと動く鎌の動きは殆ど同時。
 エディンは返した武器で切り裂かれた腿を押さえつつ、くるりと宙返りをしてギルの傍に立った。

「あんまりダメージは食らってねえかな・・・。リーダーの技のほうがよく効いてそうだ」
「だとすれば、あれはアンデッドの分類に入ってるはずだ」

 床に叩きつけられた際に痛めた肩をさり気なく庇いつつ、彼は立ち上がる。
 その視線の先で、背中からモロに叩きつけられたはずのアウロラが背筋を無理矢理伸ばし、息を吸い込んでいた。

「主よ・・・!聖なる光を抱く天よ・・・!」

 瘴気漂う異様な空間の中で響き渡ったのは、今までにも何度か不死者に歌ってみせた【浄福の詠歌】である。
 だが、それまでより倍するような朗々とした歌声は、他の何者をも圧して、全てを優しく清らかに包み込んだ。
 痛みを忘れさせるほどの神々しさ、声に込められた慰撫と安らぎ。
 彼女の歌に敵すらも動きを止めた。
 そして・・・・・・。

「隕石・・・・・・。天ハ何故アノヨウナモノヲ・・・・・・」

 鎌を振りかざしたまま、それを下ろすことも出来ずに固まっていた不浄の敵は、そこまで呟くと輪郭から徐々に光の粒となって天へ昇っていく。
 怖気を奮う造形と白いぬめぬめとした質感を持った骨が、詠歌に見送られ姿を消す寸前。

「神ヨ・・・・・・、しんたらノ神ヨ・・・・・・、オ答エクダサイ・・・・・・」

ネルカ城砦19

という悲しげな台詞を残していった・・・。
 ジーニが柳眉を寄せる。

「シンタラの神?」
「彼らの信仰・・・なのでしょう。ここで負けたことが、よほどに心に掛かっていたのか・・・。はたまた、何かをそこまで守り抜きたかったのか・・・」

 今の自分では推察するしかできないが、とアウロラは付け加えた。
 暗闇の中を残りの敵がいないか念の為に歩き回ると、魔法陣が宙に浮かんでいるのを見つけた。
 茶褐色の瞳を輝かせたジーニがじっと見つめる。

「これは・・・音に反応するって書いてあるわね。大事な品を隠すための陣みたいだけど」
「音・・・」

 ハッとなったアウロラが、ポケットから羊皮紙の切れ端を出す。

「ジーニの忠告に従って正解でしたね」
「あの老婆の言葉か」

 アレクが覗き込んだ。
 城砦に入る前に街で聞き込んだ際、さる老婆が城砦に纏わる呪文だと教えてくれた言葉の書付である。
 ただ、最後の一言がわからないと老婆は申し訳なさそうに身を縮めていたはずだ。

「大丈夫なのか、最後までわからなくて」
「先ほど、ヒントを頂いていたでしょう?」
「ヒント?」

 珍しく悪戯っぽく微笑んだアウロラの様子に、アレクが首を傾げる。

「私自身が申し上げたではないですか。彼が守り抜きたかったもの、それがこの魔法陣なのです」

 そこまで説明したアウロラは魔法陣に向き直り、堂々と魔法陣を解除する言葉を発した。

「エルレ・ピレ・シンタラ!」

 先ほど骸骨が呟いていた神の名を最後に唱えると、隠されていた宝箱が出現した。
 たちまち仲間たちは感心した声をあげる。
 鉄製の箱をエディンが調べると、罠が仕掛けられている。
 慎重にそれを外すと、彼は滑らかな動きで開錠し、蓋を開いた。

「槍だ。真っ白だな」
「これは・・・ネルカストーン製ね!これだけで結構なお宝じゃないの!」

 杖の≪カード≫をかざして鑑定したジーニから歓声が漏れる。
 どうやら、苦労してここに降りてきた甲斐は(少なくとも彼女の基準では)あったらしい。
 一同は互いの検討を称えながら、外に出るための魔法陣を発見してその上に乗った・・・・・・。

※≪万象の司≫≪石化治療薬≫≪大きな宝石≫≪解毒剤≫≪ネルカの槍≫≪ネルカの護符≫≪ネルカの石≫×8※
--------------------------------------------------------

■後書きまたは言い訳

63回目のお仕事は、SARUOさんのシナリオでネルカ城砦跡でした。
シナリオ公開からリプレイにするまでが早すぎるかなあ、とは思ったのですが、一応1ヵ月くらいは間を置いたので勘弁してやっていただければ幸いです。
特に依頼を受けるシーンなどが開始時になかったので、前回の小話と繋げられるよう、地図作製組合のクレーマーさんから情報を貰ったことにしてみました。本編にはありません。
地図作製組合が再始動なさった暁には、ぜひこちらのダンジョンも入れて欲しいものです。

主目的はダンジョンアタックなわけですが、入り口を探し当てるのに【魔力感知】が必要だったり、そこから潜り込むのに【魔法を解除】のキーコードが必要だったり、最後のボスのところは【飛行】キーコードがあった方が有利だったりと、なかなかテクニカルな魔法の使い方が求められる辺りが、高レベルダンジョンの高レベルたるゆえんなのではないかと私は思っております。
うちは全て自前で賄いましたが、もしこれらのキーコードを持たないパーティでも安全安心設計、街中でスクロールが購入可能です。ただ、翼の呪文については向こう岸に飛び越すのと、穴から下に降りるのに2つ必要になるのではと思いますが・・・。
まあ、ネルカストーンがあるからと開き直ってそのまま降りるのも、一つの方法ではあります。私はあまりお勧めいたしませんが。

ビボルダーが護符、アンデッド連中が【浄福の詠歌】で軒並み対処できたので楽でした。【亡者退散】を持ってる僧侶がいるのなら、そう苦労はなさらないのではというのがプレイした感想です。
ただし、あまりにも全体攻撃の火力が少ないと、護符を取る前のプチデーモンやビボルダーたちに散々苦しめられることになると思いますので、その分のフォローは各自パーティに潜ませておくべきかもしれませんね。

さてこちらのシナリオで、とうとうレベル10冒険者が生まれました。
アウロラ、アレク、ジーニの三名です。
地図作製組合によるポイントでクーポン貰ってた影響がモロに出ましたね。
恐らくこの分で行くと、ギル・エディン・ミナスも一つ高レベルシナリオこなせば10に到達するのではないかと推察されます。現在、次回にやるシナリオを三つほど検討中なのですが、どれにしたものか・・・。
戦闘がとにかくメインのシナリオとなると、とたんに私の文章力は落ちます(戦闘描写がとにかく下手っぴ)ので、それ以外にもストーリーが見えるやつがいいのですが。

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

2013/05/05 05:29 [edit]

category: ネルカ城砦跡

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