Sun.
ネルカ城砦跡 3 
まずは街から程近い城砦の南部に足を踏み入れた。
そのほとんどが崩れ、瓦礫の山となっている。

油断するとすぐ足を滑らしかねない場所を警戒し、”金狼の牙”たちはお互いに補助をしながらその場所に下りていった。
「・・・・・・どんな栄光も、時の前には空しいもんね」
辺りを見回したジーニが、ぽつんと呟いた。
伝承では魔法石で覆われた美しい外壁があったとされている。
しかし、その殆どは削り取られ、遠い日の威光は見る影も無かった。

時折、エディンが立ち止まっては残っている外壁を軽く叩いたり、ひびの入った辺りを指でなぞって調べたりしていたが、機械的な罠や仕掛けは見当たらない。
「こりゃ、本命は北部のほうかもしれないな」
「・・・そうかしら。ここまで来るとかえって怪しい気がするわ」
ジーニはとある外壁の前まで来ると、首を傾げてそれを見上げた。
「これ・・・何だか怪しいのよね。ちょっと試してみてもいいかしら?」
「魔法か?」
「かもしれない。いずれにしろ調べてみなきゃ確かなことは・・・っと、この指輪もそろそろ力を使い切りそうね」
彼女が優美な指で摘み上げたのは、蒼い輝きを見せる宝石の嵌まった指輪であった。
貰った当初はスターサファイアのように誇らしげに輝いていたそれは、度重なる使用に魔力をすり減らし、5分の1ほどに光を失っている。
ジーニはゆっくりとコマンドワードを唱えた。
『魔力を捕らえ我が目に映せ・・・!』
たちまち、術者であるジーニの視界内が紫色に染まっていく。
その中で、本来不可視であるはずの魔力のオーラが、外壁の一点から発せられているのが分かった。

「やっぱり・・・!」
「まさか幻覚ですか?」
アウロラの指摘に彼女は首肯した。
「それも実体を伴った高度な術よ。でも正体さえ分かれば・・・!破魔の術をかけるわ」
すんなりとした手がベルトポーチから翡翠色の瓶を引っ張り出した。
栓を捻り、中の薬液をオーラの出ている場所に注ぎ込むと、たちまち幻覚の術は解除される。
ギルが目を瞠った。
「階段が・・・」
「そういうこと!さって、ココから先はあなたの領分だからね、エディ」
「あいよ、任せてもらおうか」
ランタンを掲げたエディンが、開いた入り口に長身を滑り込ませる。
しばらくして、「いいぞ」という彼の声が返ってきたので、一同はアレク・アウロラ・ジーニ・ミナス・ギルの順で一人ずつゆっくりと降りていった。
タン、と着地した足元よりも、アレクはまず周りの様子に呆気に取られた。
「これは・・・・・・ネルカの魔法石?」
地下の壁はネルカの魔法石、すなわちネルカストーンと呼ばれる物体で覆い尽くされている。

この魔法石の影響下にあるものは常に再生し続けることとなるわけで、それが不滅城砦と恐れられたこの場所の秘密だったのだろう。
むき出しの石は敵味方の区別無く影響を及ぼす。
こんな状況では、弱い敵であっても長期戦を強いられることは想像に難くない。
「ちょいとすごいだろう。・・・っと、アウロラ。お前さん、肥えたんじゃないか?」
「失敬な!」
「抱き心地が良くなったと褒めたのに・・・」
「全然褒めてませんよ!ジーニも何とか言ってやってください!」
緊張感を欠くにも程がある仲間たちの様子である。
自分の体を否応無く包み込む強化の力とは裏腹に、たちまちアレクは不安に包まれた。
そのほとんどが崩れ、瓦礫の山となっている。

油断するとすぐ足を滑らしかねない場所を警戒し、”金狼の牙”たちはお互いに補助をしながらその場所に下りていった。
「・・・・・・どんな栄光も、時の前には空しいもんね」
辺りを見回したジーニが、ぽつんと呟いた。
伝承では魔法石で覆われた美しい外壁があったとされている。
しかし、その殆どは削り取られ、遠い日の威光は見る影も無かった。

時折、エディンが立ち止まっては残っている外壁を軽く叩いたり、ひびの入った辺りを指でなぞって調べたりしていたが、機械的な罠や仕掛けは見当たらない。
「こりゃ、本命は北部のほうかもしれないな」
「・・・そうかしら。ここまで来るとかえって怪しい気がするわ」
ジーニはとある外壁の前まで来ると、首を傾げてそれを見上げた。
「これ・・・何だか怪しいのよね。ちょっと試してみてもいいかしら?」
「魔法か?」
「かもしれない。いずれにしろ調べてみなきゃ確かなことは・・・っと、この指輪もそろそろ力を使い切りそうね」
彼女が優美な指で摘み上げたのは、蒼い輝きを見せる宝石の嵌まった指輪であった。
貰った当初はスターサファイアのように誇らしげに輝いていたそれは、度重なる使用に魔力をすり減らし、5分の1ほどに光を失っている。
ジーニはゆっくりとコマンドワードを唱えた。
『魔力を捕らえ我が目に映せ・・・!』
たちまち、術者であるジーニの視界内が紫色に染まっていく。
その中で、本来不可視であるはずの魔力のオーラが、外壁の一点から発せられているのが分かった。

「やっぱり・・・!」
「まさか幻覚ですか?」
アウロラの指摘に彼女は首肯した。
「それも実体を伴った高度な術よ。でも正体さえ分かれば・・・!破魔の術をかけるわ」
すんなりとした手がベルトポーチから翡翠色の瓶を引っ張り出した。
栓を捻り、中の薬液をオーラの出ている場所に注ぎ込むと、たちまち幻覚の術は解除される。
ギルが目を瞠った。
「階段が・・・」
「そういうこと!さって、ココから先はあなたの領分だからね、エディ」
「あいよ、任せてもらおうか」
ランタンを掲げたエディンが、開いた入り口に長身を滑り込ませる。
しばらくして、「いいぞ」という彼の声が返ってきたので、一同はアレク・アウロラ・ジーニ・ミナス・ギルの順で一人ずつゆっくりと降りていった。
タン、と着地した足元よりも、アレクはまず周りの様子に呆気に取られた。
「これは・・・・・・ネルカの魔法石?」
地下の壁はネルカの魔法石、すなわちネルカストーンと呼ばれる物体で覆い尽くされている。

この魔法石の影響下にあるものは常に再生し続けることとなるわけで、それが不滅城砦と恐れられたこの場所の秘密だったのだろう。
むき出しの石は敵味方の区別無く影響を及ぼす。
こんな状況では、弱い敵であっても長期戦を強いられることは想像に難くない。
「ちょいとすごいだろう。・・・っと、アウロラ。お前さん、肥えたんじゃないか?」
「失敬な!」
「抱き心地が良くなったと褒めたのに・・・」
「全然褒めてませんよ!ジーニも何とか言ってやってください!」
緊張感を欠くにも程がある仲間たちの様子である。
自分の体を否応無く包み込む強化の力とは裏腹に、たちまちアレクは不安に包まれた。
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