Wed.

金狼の牙の行進曲 4  

「ねぇねぇ、知ってる?リーリンっていう歌の上手いお姉ちゃん、実は”歌の一族”なんだって」

行進曲07

 緑濃い森の中をやってきたのは、ここレーシアの森において、歌の上手な女性がいると聞き及んだアウロラが、ぜひ話を聞きたいとせがんだ為であった。
 その途中で出会った琥珀色の目をした同族の少年に、ミナスは顔を輝かせて色々と話を聞いていたのだが・・・。
 ふと件の女性について話を振ったミナスに返ってきたのは、そんな台詞であった。

「なんだって!?歌の一族の生き残りがここにいるのか?」

 ずいぶんと驚いた様子のギルにうろたえながらも、新しいミナスの友人は頷いた。

「う、うん。いるよ。あそこのレーシア音楽館で音楽を教えているよ」
「そうか。ありがとうな坊主」

 ごつい手でくしゃりと櫛通りのいい金髪を撫ぜると、彼はその音楽館とやらのほうへ視線を向けた。
 木で作られた瀟洒な感じの建物には竪琴が描かれた看板があり、そこには人間の言葉とエルフの言葉で交互に、『歌が大好きな人、歌に興味ある人、誰でも歓迎いたします。お気軽にお立ち寄りください』と書いてある。
 仲間たちが視線で問いかけてくるのに首肯し、彼はそっとドアを開いた。

「いらっしゃい」

と入り口を振り返ったのは、白に近い銀髪に淡い桃色の薔薇を挿したエルフの女性であった――彼女がリーリンだろうか?
 店の中央にある木材のテーブルや椅子は、居心地の良いぬくもりあるデザインをしており、客に対する店主の心遣いが感じられた。
 壁に掛けられた棚には、楽譜が何枚かかけられている。

「何か用ですか?」

と問いかける彼女に、ギルは進み出て言った。

「”歌の一族”の生き残りについて聞きたくないか?」
「!?なんですって!?」

行進曲08

 たちまち顔色の変わった相手に、まずは落ち着いて座って欲しいとギルは促した。
 それに従って腰をおろしたものの、彼女は気が気でない様子だ。

「一族の生き残りの居場所を知っているの!?」
「ああ、知っている。サラーとショコラという歌の一族の生き残りのエルフの姉弟が、キルヴィの森で呪歌を教えていたよ」

行進曲09

 吟遊詩人の寄合所で噂を聞いた自分の仲間がそこに赴いて呪歌を教わったのだ、という話をギルがしてみせると、儚げに見えるエルフの歌姫はほうと息をついた。

「・・・サラー姉さんとショコラが無事に生きていて・・・・・・本当によかった」

 リーリンはしばらく目を瞑り、動悸の止まらない胸を押さえて深呼吸する。
 さすが吟遊詩人とでも言うべきか、正しい腹式呼吸で何とか驚愕を押し込めたようである。

「・・・お願い!私を彼らのいるキルヴィの森まで連れて行って!!」

 彼女はひたとこちらに視線を合わせて懇願した。

「サラー姉さんとショコラに逢いたいの!!お願いします!!」
「・・・わかったよ。そういうことなら、キルヴィの森まで連れて行くよ」

 かけがえの無い同族と生き別れになる――その辛さをよく分かっているミナスは、心の底からリーリンをショコラたちに逢わせてあげようと思い、約束をした。

「本当!?ありがとう・・・あなたもエルフなのね」
「うん。”歌の一族”ではないけれどね」

 だからあなたの気持ちはよく分かるよ、と言った少年に、リーリンは右手を差し出した。

「あなたの一族の方も早く見つかるように・・・祈っているわ」
「・・・うん」

 ミナスはちょっと泣きそうな顔で笑った。

2013/05/01 20:11 [edit]

category: 小話

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