Wed.

金狼の牙の行進曲 3  

 ゴトゴトと長い時間、馬車に揺られて魔光都市と言われるルーンディアに訪れた”金狼の牙”たちは、まず最初に7番街にあるマルドア道具店へと足を運んでいた。
 ニーナという水色の美しい髪が印象的な美女が店長を務めるその店は、ルシフィル社製の便利なアイテムが置いてある。
 もっとも、彼らがここへ入店したのは、ギルがエセルに渡すお土産のためであった。

「いらっしゃいませ」

 にっこりと笑うニーナの後ろには、籠に入った綺麗な羽の鳥と、ずらりと並んだ瓶入りの薬品たちがあった。

「こんなところに、女の子向けの土産なんかあるのか?」
「あーら、あたしのチェックを舐めるんじゃないわよ」

 ジーニは≪死霊術士の杖≫についた髑髏を、ギルの額冠にコツコツとリズミカルに当てながら言った。

「この店はね、普通の冒険者が使う薬のほかに、女の子たちが好みそうな素敵な香水が置いてあるの。アンタ、前にもエセルに香水渡したんでしょ?」
「あ、うん。≪プラの樹≫で買ったやつな」

 ずいぶんと可愛らしい瓶に入っていたそれを、ギルにプレゼントされてから、エセルはもったいないからとちょっとずつだけ使っていたのである。

「ま、大事に使ってるのは知ってるけど、他にもあれば二種類を使い回せるでしょ?リューンにはなかなか置いてないものみたいだし、いい土産になるんじゃない?」
「なるほど・・・」
「ってわけでニーナさん!ちょっと香水の瓶だけこっちに並べてくれる?」
「かしこまりました~」

 そういってニーナは三種類の瓶をカウンターに置いた。
 それぞれ、≪桃薔薇の雫≫≪貴婦人の涙≫≪蒼薔薇の香水≫とラベルが貼ってある。
 目にしたジーニは歓声を上げた。

「あら、どれも素敵じゃないの!それぞれ、どんな感じのものかしら?」
「最近特に人気なのは、この≪桃薔薇の雫≫ね。特別な薔薇の花と香草をブレンドしたもので、心身をリラックスする効果があります」

行進曲05

 ニーナは慣れた手つきでスポイトを操り、瓶から桃色の透き通った液を少しだけ吸い上げると、ちょっぴりジーニの手首に垂らしてくれる。

「まあ、なんていい香り・・・。薔薇特有の香りだけじゃなく、すっと胸のすくような匂いが残るのね」
「それが精神を正常にする香草のラストノート。薔薇だけだとしつこいけど、これはもう少し気軽に使えるでしょ?」
「薔薇と言えば、こっちの瓶もそんな名前よね?」
「ええ。こっちの≪蒼薔薇の香水≫は、原材料を私が栽培しているの。育てるのがちょっと難しいのだけど・・・」

 話に花が咲いているジーニと店長に、若干以上ギルはアウェイ気味だったのだが、「アンタの買う土産でしょ」とジーニに首根っこを掴まれてカウンターに引っ張られる。

「あら?こちらの方の香水じゃなかったの?」
「いいえ、あたしは付き添い。本命はこいつの彼女」
「かっ、かのっ!?」
「・・・・・・アンタ、あれだけあの子に尽くさせておいて、今さら付き合ってませんとか言うんじゃないでしょうね。杖でぶん殴るわよ」
「や、それは激しく遠慮したい・・・」

 そんなやり取りをしている仲間たちを、他の者たちは遠巻きに眺めていた。

「ちゃんと買い物終わりますかね・・・。途中で、どっちかがお店のもの壊したりしなければいいんですけど」
「大丈夫だろ、リーダーは案外小物の扱いが上手いから」
「そうそう。ジーニだって、錬金術で瓶の扱いは慣れてるし」
「ふわあ・・・。僕、何か眠たくなってきた・・・」

 あまり興味の無い品揃えの店に退屈し始めているミナスを見て、

(長い馬車旅の後で、これは気の毒に。)

と思ったアレクが、違う店も覗いてみるかと彼に声をかけた。

「え、いいの?」
「あまり離れない方がいいから、遠くても7番街の中だけになるが・・・それでいいのなら」
「やったあ!」
「アレクがついてるなら大丈夫か・・・後で迎えに行ってやるから」
「ああ」

 最年長者の言葉に返事を返すと、半神半人の彫刻のような美青年は、小さなエルフの手を引いて道具店を出た。

(悪い奴らに目をつけられても、まああいつら二人なら・・・。)

 大丈夫だろう、と一人頷くエディンだったが、まさか二人がこの後に、武器屋のお兄さんを相手に腕試しをすることなど、想像の外であったに違いない。

行進曲06

 存分に暴れた挙句、性質の悪い海賊が出る貿易都市や、エルフのいる森へ列車を使って行くことができるという情報を得てきた二人を、果たして叱ればいいのか褒めればいいのか、しばし悩んでいたエディンであった。

2013/05/01 20:10 [edit]

category: 小話

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