Wed.

Eureka 5  

 いくつ手札を持っているのか、化け物の今度の瘴気は”金狼の牙”たちを呪縛するものであった。
 元から抵抗力の高いアウロラ以外がそれに捕まり、動きを止めてしまう。
 気絶から復帰していたミナスが召喚した渓流のじゃじゃ馬・ナパイアスが、毒の成分だけでも浄化しようと彼を叱咤する。

ユリイカ19

『ちょいと、ミナス!そんなちんけな毒なんざ、気合をいれて治すんだよ!!』 
「う、うん・・・がんばる・・・!」

 おかげで何とか解毒に成功したミナスは、≪森羅の杖≫を振りかざしてスネグーロチカを召喚する。
 白い雪を撒き散らす娘たちの目くらましのおかげで、無事に獣の背中へと飛び上がったエディンが、レイピアとナイフを交差させて気を腕に溜め込んだ。
 
「喰らえ、【斬隗閃】!」

 遠距離や対多数にも対応できる双剣の技だが、その威力を近距離で一点集中するとどうなるか――。
 案の定、岩をも断ち切る気の塊は不浄な獣の体をも貫いた。

「――――!!!」

 声なき咆哮を残し、化け物は消滅する。
 それを視界に捕えながら、女の子がポツリと呟いた。

「・・・魔性の力の成れの果て、か」
「・・・ん?」
「いや、なんでもないわ」

 聞きとがめたギルに首を横に振って気にしないよう言うと、女の子はもう一度視線を元に戻したが、そこには獣が存在していたという痕跡のひとかけらさえ残っていなかった・・・。

「ふぅ・・・。厄介な相手だったな」

 ≪黙示録の剣≫を鞘に収めたアレクが述懐すると、女の子は気が抜けたようにぺたんとその場にしゃがみ込んだ。

「助かったぁあ・・・」
「おい、あんた。大丈夫か?」
「ええ。このとおり大丈夫。あなた達のおかげで助かったわ」

 彼女は冒険者で、自分はソフィアだと名乗った。

「森でいきなりさっきのヤツに襲われたの。危ないところを本当にありがとう」
「俺はエディンだ。リューンで冒険者をやっている」

 最年長者が自己紹介をして、他の者たちも名乗りあった。
 アレクが首を傾げる。

「ところでなんでまた、こんなところに一人でいたんだ?」
「逃げてる途中で仲間とはぐれちゃって。いや~、参った参った」

 そう言ってぱたぱたと手を振る彼女の様子に何を感じたのか、じっと観察していたエディンが口を開いた。

「・・・そいつは大変だったな。俺たちはこれからすぐそこの村に戻るんだが、アンタも一緒に来るかい?」
「ええ、そうさせてもらうわ」

 エディンの見たところ、この女の子は間違いなく貴族階級か、それ以上の育ちであるはずだ。
 身なりだけではない。わざと蓮っ葉な言葉遣いをしていても、仕草や物腰が上流社会のものであることは誤魔化しようがない。
 そういう世間知らずな人物を放置していて、後で大事になったら関わったこちらも厄介なことになると、エディンはとりあえずの同行を申し出たわけである。
 そしてやっと仕事を引き受けた村まで戻ったところで、アレクが「今日は疲れた」とだけ零した。
 アウロラが首肯する。

「イノシシに襲われて死に掛けたり、訳の分からない魔物と戦ったりと、散々な一日でしたからねえ」

 彼女の緋色の双眸の先では、すっかり調子を取り戻したらしい臨時の同行者がはしゃいでいる。

ユリイカ23

「おおお!!ここがマルコメ村かあ!すっごい人がいるじゃない!?これはもう村って言うより町よねえ!!」
「・・・なんでこの子はこんなにも元気なんだ?さっき死に掛けてただろうに」

 うんざりとした態のエディンに、ジーニが首を横に振りながら言った。

「これが若さってやつよ」
「・・・・・・そうかよ」

 それきり何となく黙り込んでしまった大人組みを案じてか、アレクが口を開いた。

「とりあえず、依頼人のところへ行かないか?報酬を貰って早く休みたい」
「そうですね」

 彼の意見に頷いたアウロラは、ソフィアにこれからどうするかを訊ねたのだが、彼女はとりあえず面白そうだからついていくと答えた。
 そんなに面白いだろうか、とやや首を傾げつつも、”金狼の牙”たちは依頼人・キクの錬金術の店に入ることにする。
 ・・・・・・店では、木製の棚にずらりと並んだ硝子製の瓶が見守る中、落ち着いた挙措でキクがお茶を啜っていた。

「お待たせしました」

 アウロラが声をかけると、キクは取っ手の無い杯――確か「湯のみ」というらしい――を卓に置いて、こちらをワクワクした表情で見やった。

「おお!そなた達か。で、首尾はどうじゃった?」
「緑のユリイカ草が3つ。紫、青、橙がそれぞれ1つずつの全部で6つだ」

ユリイカ24

 慎重な手つきで荷物袋から依頼の品を取り出したアレクは、草を覆っているハンカチを開いて中をキクに見せる。
 それを確認した彼女は、「ほお!」と目を丸くした。

「橙を見つけてきたか!お前さん達、みかけによらずいい仕事をするのう!」
「ちょっと、一言余計よ」

 ・・・とは言うものの他の面子はともかく、子どものミナスや、あからさまにインドアタイプのジーニがいるパーティである。キクがそう評するのも無理はなかった。
 キク自身も悪気は全く無いようで、うきうきとした様子のままカウンターの引き出しから皮袋を取り出した。

「ほれ、約束の報酬じゃ。かなり重くしておいたぞ」
「へ?・・・・・・あ、ほんとだ。900spも入ってる」
「こんなに貰っていいの?」

 皮袋をギルと一緒に覗き込んだミナスが問うが、キクは「気にすんな、感謝しておるんじゃ」と屈託が無い。
 そういうことなら、と受け取った”金狼の牙”たちだったが、次回の依頼とやらだけは勘弁と首をすくめた。
 魔法生物であるノヅチを返却していると、ふとキクの黒い眼が、一行のやや後ろに佇んでいるソフィアの前で止まった。

「・・・そうじゃ。先ほどから気になっておったのだが、そちらのお嬢さん、どっかで見たことあるのう」

ユリイカ25

 ビクリ。
 傍目にも分かるほど、ソフィアの体が揺れた。
 そんな彼女をよそに、湯飲みを片手にキクが唸る。

「うう~む、どこじゃったかなあ。思い出せそうで思い出せん」
「ん~、他人の空似じゃないかな?世の中には似たような顔をした人間が何人かいるって話しだし」

 ソフィアは額に汗をにじませつつ、ぱたぱたと手を振ってさらに言い募った。

「あ~あ、なんだかお腹が空いてきちゃったなあ。ねえ、そろそろ宿屋に戻りましょうよ」

と、彼女が傾いてきた日の光に、横顔を晒した時であった。
 ちょうど湯飲みの中を口に含んでいたキクが、ブフウウゥゥゥ!と勢いよく噴出する。
 咄嗟に飛び退ってそれを避けたミナスが文句をたれた。

「うわ!!きったない!!いきなり口から飲み物吹きださないでよ!」

 ミナスが部屋の隅に立てかけてあるモップへと走る。

「まったく!!あ~あ、床がびしょびしょだ・・・ってあれ?どうしたの?」

 お茶が吹きつけられた床をミナスはひたすら掃除していたが、ふと気がつくと、キクが「数々の無礼をお許し下せえ!!」とぺこぺこ頭を下げ、他の仲間たちは呆気に取られたようにソフィアとキクの顔を交互に見やるばかり。
 その後、実はこの国の姫君であることを迎えに来た騎士からすっぱ抜かれたソフィアが、村の酒場で宴会を開き、騎士から追加報酬を得た”金狼の牙”たちとドンチャン騒ぎを起こすのだが――この時の彼には知る由もなかった。

※収入900sp+1100sp※
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■後書きまたは言い訳

62回目のお仕事は、月並みさんのシナリオでeurekaでした。
中編シナリオとReadMeの紹介にありましたが、さくっとできる感じのシナリオで、仕事の目的もはっきりしており話の筋も分かりやすかったです。
高レベルらしい戦闘と、ギャグっぽいテイストが絶妙に混ざり合っていて面白かったです。
ただ、対象レベルが8~10レベルなので、不用意に全員が木の実を取りに行くとかちょっと不自然かなあと思わなくもないです。それだけの実力者なら、今回エディンが途中でやったように、先行して様子見をする(本編ではありませんでした)とかできますからね。
一応、罠については、今回のように召喚獣で予防線を張るのが一番安全だと思います。
トラバサミを外す判定もあるのですが、筋力が高いか器用が高いかじゃないと抜け出れませんので。
ソフィア登場後の流れについては、もうちょっと裏事情が明らかになってくれるとありがたいかもしれません。
何であれに追われていたのかとか、そもそもどうしてお姫様が勝手に出歩いてるのとか・・・そういうのが全部まだ分からないまま・・・。でも、こういう元気なお姫様は大好きです。

同氏が作った続編の「この人の場合。」をプレイするのかと言われると・・・うーむ、ちょっと保留中です。
あのシナリオ、戦闘きついので”金狼の牙”では歯が立たないかもしれない・・・。

あと、最後の方で本当は服にお茶を引っ掛けられるのですが、さすがにそれはあんまりというか可哀想過ぎたので、床にぶちまけてお掃除するというエンディングにしてみました。
キク=ヤクシさんやノヅチとまたどこかでお会いするシナリオとかあると面白いだろうな。

さて次回はちょっと小話になります。
あの都市とあのクロスオーバーイベントを放置したままなので、ちゃんと決着をつけてあげないと。

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

2013/05/01 06:41 [edit]

category: Eureka

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