Wed.

Eureka 4  

 霊媒洞から脱出した一行は、深々と森の空気を吸って体を伸ばした。
 アレクが手をかざして上空を見上げる。

「眩しいな・・・。辛気臭い洞窟ともこれでおさらばだ」
「依頼品も無事回収できたことだし、村へ戻ったら祝杯を上げましょう」

ユリイカ14

 末尾にハートマークか音符がつきそうな勢いでジーニが誘う。
 他の面子が仕方ないなぁ、という顔になりつつ同意しようとすると、ふとエディンが顔を森の奥のほうへと向けて鋭く言った。

「今、何か聞こえたぞ」

 きゃー・・・という微かな声。

「・・・悲鳴?ここから近いよね?」
「きゃぁああああああああ!!!」

 紛れも無い、絹を裂くような女性の悲鳴である。
 アウロラは「ただ事じゃなさそうですね」と言い、それに同意したギルが「行くぞ!」と走り出した。

「おい!ちょっと待てよ!」
「ちっ、仕方ない!ギルのアホを追いかけるぞ!」

 アレクとエディンの台詞に、一同は動き出す。
 靄の漂う森の中、ギルに追いついた仲間たちは、まず独断専行しようとした彼を叱ろうとしたのだが、その機先を制するようにギルは口を開いた。

「待て!!誰か来るぞ!!」

ユリイカ15

「助けてぇええ!!!獣に犯されちゃうわぁああ!!!」

 金色の髪に上等な身なりをした女の子である。
 その台詞に眉をひそめながらミナスが首を傾げる。

「・・・女の子?さっき聞こえた悲鳴はこの子のかな?」
「ねえ!!お願い助けて!!訳の分からない変態に追われてるの!!」

 その言葉とほぼ同時に、「グオオォォン・・・!!」という咆哮を上げて、黒い靄を連れた大きな獣が森の向こうから現れた。
 振り返り、それを認めた女の子がさらに悲鳴をあげる。

「き、来たああああ!!!」
「ちょっと、何だよあれ・・・。なんかやばいものじゃ?」
「躊躇してる暇はありませんよ、ミナス。意外と早い!」

 硬い声のアウロラに首肯したミナスが、

「そこの人!横に飛んで!」

と声をかけた。
 女の子は引き続き悲鳴を上げつつも、どうにかミナスの指示通りに獣の鋭い牙に裂かれる寸前で回避した。
 目標を見失った獣は、だらだらと口から涎を垂れ流しつつ”金狼の牙”の眼前へと降り立つ。

「くっそお!今日は本当についてないぜ!!」
「同感ね。何だかよく分からないけど・・・」

 ギルに同意したジーニが、≪死霊術士の杖≫を構えた。

「倒すまでよ!!」

 冒険者たちの前に姿を現した巨大な獣は、辺りに禍々しい気を撒き散らし、ただならぬ雰囲気を漂わせている。
 ギルがその凶悪な眼から視線を外さないようにしつつ、疑問を口にする。

「こいつ、一体なんなんだろうな・・・」
「俺もはじめて見る」

 愛剣を抜いた幼馴染が応じた。

ユリイカ16

「だが・・・コイツから漂う瘴気・・・何かやばい」

 魔法剣士の言葉が終わるか終わらないかのうちに、エディンは自分の体調の変化に気づいた。毒に、侵されている――!?

「ちっ、コノヤロウの仕業か!」
「全員、化け物を中心に円陣を組め!速攻で勝負をつけるぞ!」

 長期戦は不利、と悟ったギルが指示を出す。
 ダイブした茂みからやっとまろび出た金髪の女の子も、「私も手伝うわ!」と声を上げた。どうやら魔法の心得があるらしい。
 獣を守るように漂う瘴気は、魔法によって簡単に吹き散らされるものの完全にいなくなるわけではなく、またすぐに発生してくる。
 ちっ、と小さく舌打ちしたアレクが指先から雷を放ち、獣にぶつけた。表皮が弾ける。ダメージは与えたようだが、致命傷にはほど遠いようだ。

「駄目か・・・・・・」

 ≪エメラダ≫をかざしていたジーニは、額に汗を滲ませた。この怪物や瘴気には、呪縛の効果が及ばないらしい。
 毒によって朦朧としてきた一行を見て、女の子は素早くウンディーネを召喚した。

「和をシンボルとする水の精霊よ。我が同胞等を、汚れた力から守りたまえ。ウンディーネ!いらっしゃい!」

ユリイカ17

 ”金狼の牙”たちの体を、澄んだ水の膜が覆う。

「あなた達にウンディーネの加護を授けたわ!あの瘴気を少しは緩和してくれるはずよ!」
「すまない、助かる!」

 エディンはそう礼を述べながら、飛び上がって獣の体にレイピアをつき立てた。咆哮が辺りに響き渡る。
 激怒した獣は、口から毒を含んだブレスを吹きかけてきた。

「・・・大精霊の加護を甘く見ないでいただきたいっ!」

 アウロラの体に救った毒を、かつて守人として面倒を見た大精霊の対毒結界が浄化する。
 彼女はその隙に防御力と抵抗力を上げる結界を張り、アレクが上級の神聖呪文である【癒しの煌き】の詠唱を始めた。
 ギルが喜びの声を上げる。

「よし、これで立て直したぞ!」

 ≪護光の戦斧≫に神聖な気を込めたギルは、一気にそれを振り下ろした。

ユリイカ18

「【破邪の暴風】!」
「グォオオオオオン!」

 神聖な力を厭った獣は長大な爪を振り回し、傷つけられた体をものともせずに暴れようとする。

「くぅ・・・あと少し、あと少しですよ!」
「ああ。トール、気絶したミナスを起こしてやってくれ」
「了解やで!」

 絶え間なく浴びせられる毒の瘴気に、汚染に弱いエルフ族であるミナスが気絶している。
 これはきつい戦いだと、アレクは剣を構え直して気合を入れた。

2013/05/01 06:40 [edit]

category: Eureka

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