Wed.

護衛求む 3  

 やがて、出来るだけ声を落として、エディンは仲間達やローン氏へ言った。

(落ち着いて聞いてくれ・・・・・・尾行されている。)
(・・・・・・え?)

 濃藍の目を瞠ったのはミナスだ。その横で、依頼主のローンは声も出ない様子でびっくりしている。
 落ち着いた歩き方のまま、アレクはエディンに問うた。

(・・・一体、どこに・・・?)
(右前方の茂みの中・・・わずかに気配がある。おそらく野盗だろう。数は・・・・・・分からない。)
(どうして襲ってこないんだ?)

 気の短いギルが囁く。

(仲間を待っているか、隙を伺っているのか・・・・・・。それとも何か策があるのか。)

 歩きながら、一行は考えを巡らせて行く。

(・・・・・・どうするの?)

 不適に微笑んだジーニが言った。もしアレクが火事を警戒して止めていなければ、この高慢な女性は、躊躇いもせず火炎の術を使っていただろう。

(まだ距離がある。馬車を置き去りにして先制攻撃をかけるのは不可能だな・・・・・・。このまま気づいていないフリをして行こう・・・。)

 消極的な案に、ギルやジーニは不満そうだったが、アウロラが睨むと渋々頷いた。
 歩き続けた一行の視界左手に、大きな沼が入った。
 森の切れ目も近いらしく、それほど遠くない位置に建物らしきものも見られる。

「もうすぐだね・・・」
「ええ、あとひと頑張りです」

 ミナスの緊張した呟きに、わざと陽気にローン氏が応じる。
 何もなければ・・・と願う一行をあざ笑うように、先頭を歩いていたエディンが足を止めた。

「・・・・・・・・・これは!」
「この地面って・・・・・・」

 エディンと、目聡いジーニが見つけたのは、かなり大掛かりな落とし穴だった。
 驚く依頼人に、エディンが野盗の狙いは多分これだったのだろう、と説明する。
 腰のダガーに手をやりながら、エディンが仲間を見渡す。

「・・・・・・さて、ここでケリをつけるか。幸い、後ろは沼地だ。馬車と奴らの間に立てば、後ろは気にせず戦えるだろ」
「・・・・・・なるほどね」

 その言葉に頷いたジーニが、さり気なく杖を利き手に持ち替えた。
 そして一行は、沼と馬車を背負うように隊列を組み直す。
 ミナスは遠距離攻撃よる先制を提案したが、敵の場所がはっきり分からないとまず成功しない、とエディンが嗜めた。

「敵の居場所が分かれば・・・」
「あら、エディン。あれをお忘れ?」

 にやりと笑ったジーニが懐から取り出したのは、青く輝くオーブ―――”生命の瞳”だった。
 これは生命オーラを視認できるマジックアイテムなのだ。
 彼女のやろうとしていることを理解したエディンが、陽気にぱちりと指を鳴らした。

「そいつがあったか!」
「後はお任せあれ、ってね・・・」

(1・・・2・・・3・・・4人ね。人数はこちらの方が多い。先手を取れば、かなり有利な状況を築けるわね・・・)

 続けざまに、ジーニは呪文を唱えて印を組むと、杖から魔法の矢を飛ばしてオーラを視認した場所に飛ばした。

「・・・魔法の矢!」
「ぐはあっ!」

 ジーニが手ごたえを感じるとともに、次の瞬間、数人の男がいきり立って飛び出してきた!

「野郎、ふざけやがって!」
「おあいにくさま、野郎じゃないのよ。悔しかったら・・・・・・」
「やめろ!状況を見極めるんだ!」

 かかってらっしゃい、というジーニの挑発は喉の奥に消えた。
 首領らしき男が出てきて一喝すると、彼はジーニたちに向き直った。

「ここは退こう。だが貴様らの顔は覚えた。生きてここを通って帰れると思うなよ!」
「ほーっほほほほ!負け犬の遠吠えなんか、いちいち覚えてられないわよ!」

 野盗たちはジーニの叫び声を背負いながら、冒険者たちが来た方向へ走り去った。

「・・・・・・・・・」

 ローンは心もとない顔をしていた。野盗を怒らせてしまったのが原因だろう。
 それを見たジーニが、ふん、と胸を張って言う。

「不安になる必要はないです。私たちがついている限り、依頼人は必ず守りますから」
「・・・・・・はい」

(そう言われても不安だろうなあ、ジーニが思い切り挑発したもんなあ。)

 胸中で呟きつつ、エディンは急ごうぜ、と声をあげて一行を村へ導いた。

2012/11/07 03:19 [edit]

category: 護衛求む

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