Sun.

グライフの魔道書 7  

 その瞬間、空は白く輝いた。

「受けよ!星の輝き!!メテオ・ストライク!!!」
「こ、これは・・・!」

 ミナスが呻く。
 男が唱えた魔法は、かつて”金狼の牙”たちが北方の城塞都市キーレの大戦に参加した際、味方呪術師の女性が唱えた最強の呪文であった。
 あの時は、蛮族をなぎ払うためにと味方が唱えた魔法だったが・・・。
 アレクが上空を見て叫ぶ。

「星が!!星が落ちてくる・・・!!」

 もうダメだ・・・あの呪文の威力を知っている全員が目を瞑ったその時、ミレイがひときわ澄んだ声で「トリス!!!」と呼びかけていた。

「――――!!?」

 男が唱えたものは、間違いなく現存する中で最強にして最悪の呪文・・・そのはずであった。
 しかし。

「・・・・・・生きてる・・・のか?」
「何とか辛うじて、ね・・・」

 エディンの呻き声にジーニが答える。
 彼らの少し離れた地点では、ミレイとトリスが胸を張っている。
 トリスが高々と笑い声をあげた。

「フォウンティーヌ教会の大司教様より授かった最強の時空遮断防御符を使わせて頂きましたわ♪」
「・・・そっか、それで僕ら、消し炭だけは免れたのか」
「ええ。この呪符でも、完全に遮断できない威力というのには驚きましたけど」
「いや・・・生きてるってだけで十分ありがたいよ」

グライフ29

 同族のミナスへ残念そうに首を振っていたトリスであったが、そういわれてはにかむように微笑んだ。

「バ・・・バカな・・・生きているだと・・・・・・」

 なおも現状が信じられないウルフの様子に、エディンが「ケ」と短くはき捨てた。

「アイツだか復讐だかしらねぇが、やりたきゃ他人に迷惑かけずにやりやがれってんだ」

 ミレイから、大神官がありがたい上級の神聖呪文を込めたという治癒符が投げられる。
 受け取ったミナスがそれを天にかざすと、たちまち”金狼の牙”たちの傷が癒えた。

「バカな・・・こんな・・・っ」
「なんか悩んでる所悪いけど、決着つけさせてもらうよ!」

 ミナスが≪森羅の杖≫を構える。前衛の三人も、各々の得物を構えてウルフの方へと移動した。
 まずアレクが【炎の鞘】でもって、ウルフの足を傷つける。焦った彼はレイピアとナイフをかざして走り寄るエディンへ、青く煌く雷光を放出した。

グライフ30

「ぐっっ!?・・・て、てめえ・・・」
「こんなところで・・・負けるわけには・・・!」

 だが抵抗できたのはそこまでであった。
 雷光で焼け爛れていたエディンの体を、ジーニが一番最近に取得した薬瓶で快癒させ。
 さらには、アレクが唱えた癒しの上級呪文が彼ら全員を包み込む。
 完全に体勢を立て直した”金狼の牙”の中、スネグーロチカの目くらましによる援護を受けながら、エディンが【暗殺の一撃】でウルフの胸部を深く突き刺した。

グライフ32

「ぐあぁ!」
「さっきのお返しだ・・・たんと受け取れ!」

 深々とレイピアを突き刺され、ウルフはその場に崩れ落ちた。

「ば・・・こんな・・・こんな・・・ところで・・・わ、私は・・・・・・アレグレット・・・キミの仇を・・・・・・」
「いいか、兄さん。あんたにも事情があるんだろうが、まずはこっちの用件を聞いてもらおうか」

 静かなエディンの声にかぶさるように、厳しい声のアウロラが詰問する。

「獣人化した村人はどうすれば元に戻せるのです!?・・・答えなさい!」
「村人だと・・・?赤の他人だろうが・・・何故だ?これほどの危険を冒して何故奴らを救う?」
「・・・・・・仕事だ。それ以下でもそれ以上でもないさ」

グライフ33

 乾いた声でエディンが言う。

「・・・フッ、まぁそう言うことにしておくか。なんにせよ、私には関係の無い事だったな・・・」

 ウルフいわく、彼らの獣人化は幻術によるものであったと言う。
 先ほど放った【メテオ・ストライク】に全魔力を集中した時点で、その幻術が切れているだろうと彼は語った。

「さぁ、殺すがいい」
「悪いがな。兄さん」

 エディンは残像が残るほど素早くレイピアを抜き去ると、ことさらゆっくりと彼に話しかける。

「今回の仕事は村人の獣人化を解決することで、あんたの命を取る事じゃない。こっちは早く帰って宴会したいんでな」
「な、貴様、私の首に掛かった賞金はいらぬのか!?」
「アー?聞こえねぇな、んなもん。なあ、皆?」

 最年長者の言葉に、全員が「仕方ないなあ」とでも言うような顔で苦笑いし、宿の方角へと歩き始めた。

 さて、その後。
 今度の事件の真相を知りたがった親父さんや娘さんたちに、ミレイとトリスを肩をすくめてから説明を開始した。
 ウルフがグライフの魔道書を何らかの目的で欲したこと。
 村人に魔道書を探させるために幻術を使い、獣人化したように思わせ、治療には魔道書が不可欠だと言う噂を流したこと。
 偶然近くに滞在していたミレイとトリスが、村人から依頼された魔道書探索の前に噂の出所を調査したところ、発生源を突き止めたが逆に捕まってしまったこと。

グライフ34

「で、トリスを人質にミレイに探させたって事ね」
「でも魔道書を持っていってもトリスを無事に返してくれるっていう保障はないじゃない?それで悩んでたんだけど・・・」

 ミレイは両の人差し指をツンツンさせながら、上目遣いにジーニを見た。

「そんな時、狼の隠れ家の親父さんが魔道書の情報を手に入れたって聞いて、ジーニの事を思い出したのよ」

 だが、魔法でミレイの行動がウルフに筒抜けであったことに気づいたため、ミレイは直接トリスが人質となっていることを伝えるわけにはいかなかった。
 そのために、わざわざ”金狼の牙”をモンスターで足止めし、目当ての魔道書を持って逃亡する(しかも追ってくるように仕向けつつ)ということを行なったのである。
 トラップを仕掛けたのは、少々の時間を稼ぐためと、緊張と集中力を持続させるため。

「不用意にウルフに近づいて捕まっちゃったら、洒落にならないもんね」

 悪戯っぽく微笑んだミレイの杯に、ジーニが何杯目かも分からない葡萄酒入りの杯を合わせて言った。

「そしてあたしたちが近くに来たら、事情が伝わるように会話を誘導して救助を請う!と」
「気づいてくれて助かったわ。ありがと、ジーニ」
「お礼は形のあるもので勘弁してあげるわよ。まあ、今日のあたしの酒代くらいでいいわ」
「えええ!?」

 お茶目に紛らわせて焦らせた責任を逃れようとしたミレイだったが、さすがにジーニはそれも見抜いていたのであった。

※収入2000sp、【雷神の眼光】※
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■後書きまたは言い訳

61回目のお仕事は、八雲蒼司さんのシナリオでグライフの魔道書でした。思いのほか少し長いリプレイとなりましたが、シナリオの元の文章やテンポの良さのおかげでしょうか。ほとんど苦にならずに書き上げることができました。こちらは「発展都市ラスーク」とのクロスオーバーイベントがあったり、「竜殺しの墓」の称号で反応する台詞があったりと、今までの冒険者の経験をちらと垣間見ることができます。
今回、エディンは「俺は冒険者で暗殺者じゃねーんだよ」とウルフ殺害をしませんでしたが、賞金首云々の場面で違う選択肢を取れば、追加称号(0点)と追加報酬があります。こっちのエンディングもどんなものなのかちょっと見たかったかも。

ミレイとトリスについては、こういう展開だと連れ込みするのかな~?と思っていたのですが、作者様が続編を心に期していたらしく、宿には連れ込めませんでした。・・・まあ、よく考えたらミレイとギルの様子を見て「なに!?何でそんなに親しいの!?」ってことになる人が一人いそうなので、やっぱり連れ込みなくて正解だったんだと思います。(笑)
大丈夫だギル、月姫の方は生暖かく見守ってくれてるから。(笑)

途中で手に入れた別の魔道書から解読された【雷神の眼光】ですが、レベル比7(肉体属性)の固定値15(魔力属性)、おまけに成功率かなり上昇修正という単体用の強力な攻撃魔法です。ただ、今現在ジーニが【神槍の一撃】を持っているので、使うことも無いだろうな~と売却してしまいました。
ですが綺麗な画像の魔法スキルですので、もし雷系統の魔法で統一してる魔術師さんなどいらっしゃいましたらお勧めさせていただきます。

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

2013/04/28 14:06 [edit]

category: グライフの魔道書

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