Sun.

グライフの魔道書 6  

 どれほどの余裕か、しょせんは騙された冒険者たちと舐め切って、支援魔法をかける時間すら与えていたウルフであったが・・・。
 早くも高速圧縮魔術を唱え、グリフォンを召喚し彼らと相対することになっていた。

「1体は私とトリスで相手をするから、残り2体よろしく」
「はいはい、わかったわ。ほらいっておいで」

 ぱたぱたと手を振ってミレイを送り出したジーニは、ウルフに張られているらしい妙なバリアの存在に気づいていた。
 ≪エメラダ≫を通して彼を透かし見ると、ウルフはローブの下に何かのマジックアイテムを身につけており、そこから魔力を供給しているらしい。

グライフ22

「なんて傍迷惑な男なの、こいつ。ちっ、アイテムを破壊するのは無理ね・・・アレク!」
「今やってる!」

 海精の神殿から授けられた呪文【召雷弾】を、呼びかけられると同時に敵へぶつけたアレクは、胸元のペンダントを握り締めた。
 ウルフの高速圧縮呪文による召喚がまた行なわれる。

「今度のは死霊術ってとこね」

 ジーニの予測に違わず、肉体を持たない死霊たちが森の木陰から霧のように湧き出てきた。
 ギルが斧を振り回しつつ叫ぶ。

「また召喚したのか!?」
「怯まないで。死霊相手なら、私でも相手できます」
「おう、頼んだぜ、アウロラ。ミレイ!そっちは・・・」
「こっちは手一杯!」

 新たに出現したモンスターの一部は、彼女たちの方にも流れていた。
 多勢に無勢のその姿に、早めにウルフを片付けなければいけないとギルは判断した。

「ジーニ・・・」
「分かってるわよ。・・・死霊はアウロラに頼んでおきましょ。グリフォンはミナスの魔法に任せなさい。親玉は、あたしがとっておきの瓶を投げてあげるから」

 ジーニの右手が、ベルトポーチの中に突っ込まれている。ギルは軽く頷くと、体を回転させて前線へと切り込んでいった。
 その後ろで、気息を整えていたアウロラが右の上腕部を傷つけられながらも、一所懸命に導きの歌を発声したが・・・。

「くっ!!」

 不思議な力にかき消されたことに気づき、いち早く指輪を媒介に魔力をまた集中し始めた。

「次から次へと・・・!目障りじゃ!」

 氷の姫に憑かれているミナスが腕を振ると、たちまち辺りが氷霧に覆われて白くなっていく。
 そんな中、ウルフはいくつかの印を結びながら呪文を唱えて姿を消した。

「消えた・・・!?」

 愕然とした表情になった同族へ、やっと沈黙の魔法を解除したトリスが叫ぶ。

グライフ25

「おそらく幻術です!転送呪文封じの結界符はすでに貼りましたから。姿が見えないだけでまだ居るはずですわ!」
「・・・なら、とにかく見えてる奴から片付けちまおうぜ。リーダー、アレク!」
「おう!」
「わかった」

 最年長者の指示に、戦士たち二人が応える。
 そうして死霊がただの幻術であることに気づき、大蛇やグリフォン、トロールたちを先に片付けていった。
 その様子を見て焦りを感じたのか、椎の木の一つが揺らぐと、その幹から分かれるように人影が滲み出る。
 幻術の集中が途切れたウルフであった。

「くっ。並みの冒険者ではないな・・・」
「当たり前だ。お前なんか、あのカナンのじいさまや魔王に比べれば!」
「おのれええ!」

 ローブの上から斧の刃がかすめ、激昂したウルフは最後にして最強の召喚呪文を唱えた。
 アレクが嫌な顔になる。

「・・・げ」

グライフ26

「な・・・こいつはまさか・・・っ」

 途切れたエディンの言葉尻をジーニが捕えた。

「ドラゴン!?」
「わが召喚に応じし竜よ!わが前に立ち塞がりし愚か者どもを蹴散らせッ!」

 ウルフの命令に竜たちが呼応する。
 空気がとてつもない咆哮に震える中、またウルフの姿が消えた。

「くそっ、また消えやがった!」
「ったく、とんでもないヤツ呼び出しやがって!」

 エディンとギルが悪態をつく中、アウロラは冷静に効果時間を見極めて防御呪文を張り直した。

「主よ、我が仲間を護りたまえ・・・そして更なる力をお与え下さい・・・!」

 彼女の足元には、神精ファナス族の幼生が毛を逆立てて最強の幻獣を睨みつけている。
 ギルとアレクが入れ替わり立ち代わりで分厚い鱗越しに強烈な斬撃を与える中、その幼生は思い切り飛び上がり、鱗の無い長大な喉笛に喰らいついた。
 ドオオォォン・・・・・・と土煙と轟音を上げて、氷竜が斃れる。

「後一匹じゃ!」

 ミナスが放った氷の宝石の首飾りは、狙い通りに火のエレメントを持つ竜を縛り上げ、ギリギリとその命を削った。

グライフ27

 続けざまに斃れた竜を、信じられないものをみたといった態で、幻が解けてしまったウルフが見つめている。

「ようやくおでましか」
「あの2体をも倒すとはな・・・だが丁度いいとも言える」
「なんだと?」

 そう言ったギル以下、身構えていた”金狼の牙”たちの目の前で、ウルフは手にしていた魔道書を燃やしてしまった。
 あまりの意外な出来事に動けない一行を嘲るように見やった男は、すでに魔道書から読み取った新たな力を試さんと進み出た。

「ヤツを殺す為のこの力!貴様等の体で試させてもらう!!」

2013/04/28 14:04 [edit]

category: グライフの魔道書

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