Sun.

グライフの魔道書 4  

「あった!グライフの魔道書!!」

 呆れたようにジーニが言う。

「なんだ。こっちが戦闘中の間も、探していたのね」
「これで・・・」
「ん?」

 ジーニが続きを促すように首を傾げると、ミレイはどこか迷子のような雰囲気を漂わせつつ、小さな声で言った。

「・・・これで契約終了ね」
「え?・・・ええ」

 戸惑ったジーニはとりあえず相槌を打ったが、ミレイの顔は晴れなかった。
 それどころか・・・。

「・・・ゴメンね、ジーニ」
「――――!?ミレイ、何を・・・」

 謝られたジーニよりも先に、何かがおかしいと気づいたギルが声をかけるも、ミレイは何も答えることなく入ってきた入り口へと駆け出していた。
 ――手に、グライフの魔道書を抱えたまま。

「あいつ、まさかっ・・・」
「だ、出し抜かれたっ!?えっ、ちょ。マジ?」

 慌てるジーニの前方を二、三歩ほど進んだギルが叫ぶ。

「ミレイ!裏切るのか!!ミレイ――――!!!!」

 だが彼女はひたすら走り去っていく。

「くっ、追うぞ!!」

 リーダーの号令で、体勢を立て直し全員が走り出そうとするが・・・その先には、まるで立ち塞がるかのごとくいつの間にかモンスターが出現していた。

「ッ、邪魔だ!!」
「ギル、ここは私が」

 一瞬だけ眼を閉じ、左手の指輪に意識を集中したアウロラが再び目を開いた時には、すでに最初の一音が朗々と発せられていた。
 通常の攻撃ではダメージを与えられない死霊たちに、【浄福の詠歌】をもって天へと導く。
 そうして開けた道を、彼らは記憶を頼りに入り口へと引き返していった。

「・・・・・・」

 洞窟から出たところで、エディンが油断なく目を光らせる。
 アウロラが小さく訊ねた。

「どうです?」
「微かだけど足跡はある・・・なんとか追えそうだ」
「他にも何組か冒険者が来ていたみたいよ。間違えたりしてない、エディ?」

 ジーニの台詞に、エディンは鞘に包まれたままのレイピアで地面を示した。

「単独行動を取っている足跡は少ない。加えて、サイズや歩幅等の条件をあわせればバッチリさ」
「それでは追跡開始ですね」

 アウロラの言葉に一同が頷いた。
 微かな手がかりを見失わないようにしつつ、なるべく早足で追跡する。
 その手のことには慣れている冒険者といえど、そうそう簡単にはできない事ではあるのだが、エディンを先頭にした”金狼の牙”たちは見事にやってのけた。
 途中で、ポツリとギルが呟く。

グライフ13

「・・・なぁ。隠し部屋のモンスターも、ミレイの仕業だったと思うか?」

 やはり彼も、エディンと同じく正解なのに出てきた敵に対して不信感を抱いていたらしい。流石はリーダー大した勘だと感心しつつ、エディンは応じることにした。

「ああ、そりゃそうだろう。あそこにあったトラップをわざと作動させたと思うぜ」
「・・・あのような事をするような人には見えなかったのですが・・・」
「・・・たしかに、他の冒険者からもそんな話は無かったな」

 そんな人には見えない――優しいだけのように見えて、両親と死に別れた後の財産争いの経験から意外と人を観るアウロラの言は、重々しいものであった。
 だからこそ、盗賊として長く人生を過ごしてきたエディンもそれに同意する。

「・・・・・・」

 ミレイの裏切りがよほど辛かったか、無言のまま少し苦しそうな顔に変わったアレクを雪精トールが心配そうに見やる。
 そうしてどれほど走ったか――いきなりエディンがその長い足を止めて、すぐ後ろを走っていたギルに呼びかけた。

「!! リーダー、ストップだ!」
「え」

 言われたとおり立ち止まったギルの足元には・・・。

「よく見ろ・・・トラップだ」
「なんで・・・これもミレイが・・・?」

 訳が分からない、といった態のギルにジーニが突き放すように言う。

グライフ14

「・・・他に考えられる?」
「・・・・・・」
「追跡がバレてるみたいね。他にもトラップが仕掛けられた可能性が高いわ。もっと慎重に行きましょう」

 おおよそ、敵対する意志を明らかにした相手に対して、ジーニほど冷たい者もそうはいない。例えそれが――よく自分たちの宿に出入りしていた相手であっても。
 洞窟内で慌てていた姿はどこへやら、すっかり彼女は冷静さを取り戻していた。
 気配を消し、さらに慎重に追跡を再開する。

2013/04/28 14:02 [edit]

category: グライフの魔道書

tb: --   cm: 0

コメント

コメントの投稿

Secret

プロフィール

最新記事

最新コメント

月別アーカイブ

カテゴリ

カレンダー

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

ブロとも申請フォーム

QRコード

辺境に足を運んだ方の人数

▲Page top