Sun.

グライフの魔道書 3  

「たぶんお目当ての魔道書はこの部屋だと思うけど・・・」

 そういう女盗賊に、にっこりとアウロラは笑いかけた。

「ミレイさんのおかげで、案外楽に辿り着けましたね」
「まぁ、私もプロですからね~。それにギルバートがいるからモンスターも怖くないし」
「あんまりあてにされても困るけどな」

 台詞のとおり、ちょっと困ったような顔でギルが頭をかく。

「またまたぁ、謙遜しちゃって。さっきのモンスターなんか楽勝だったじゃない」
「まぁ、さっきのはな」

 そう返したギルの声が聞こえていたのか、いなかったのか。
 ミレイは何かに気づいたように顔をやや上に向けて言った。

「あら?コレは・・・」
「え?」

 ギルがそちらを見やると、動物を象ったレリーフが何枚も壁に埋まっていることに気がついた。描かれている動物は、鼠や牛など様々だ。
 アレクが首を傾げる。

「なんだ・・・?」
「トラップみたいね・・・」

と返したのは、じっとそれを睨みつけていたミレイであった。

「多分、最後の。ほらここを見て」

 ミレイが示した場所には、文字が書かれているプレートがあった。

グライフ9

「えーと、何々?『くらやみにもかがやくみずほ だいちをおおうそのほしくさ かえりみたまえこのうきよ すべてをみちびくりんね そはせかいのほんしつ』・・・なんだろ、これ?」

 なんとも長ったらしい人間語の文章を読み下したミナスだったが、その内容には首を捻るばかりである。どうもリドル(謎かけ)のようであった。
 バッ!と他の仲間たちがアウロラの顔を見つめた。

「・・・いっせいにやられると、心臓が口から飛び出てしまいますよ。まあ、私の出番なんでしょうけれど」
「うん。というか頼む」
「・・・・・・少し自分でも考えてくださいね、ギル」

 ミレイによると、この動物のレリーフはスイッチであるらしい。
 後ろでエディンも首を縦に振っている。正しい場所を押せば道が開けるタイプの仕掛けだということだが・・・それは間違えればトラップが発動するということでもある。
 恐らくは、先ほどのリドルが正解のレリーフを教えてくれるものだろう、とミレイとエディンが結論付けた。

「・・・・・・この言葉・・・。文字自体の意味というよりは、文字の並び方に何かヒントがある気がしますね」

 プレートの文字の上を、ゆっくりとアウロラの指が這う。

「わざわざ1文字ずつずれている・・・。これが怪しい。もしかして・・・」

 アウロラは羊皮紙の端っこになにやら文字を書き付け、しばらくそれとにらめっこを続けていたが・・・何かを掴んだのであろう、頷いてレリーフの方へ移動する。
 彼女は猿のレリーフの目の前に移動した。

グライフ10

 そして躊躇なく、その手の部分に触れる。

「正解~~~♪」

 天真爛漫なミレイの声が響く。
 間の抜けた音の拍手を彼女が続ける横で、ジーニが感心したように言った。

「よく分かったわね。今のは・・・?」
「ああ、はい。一番右端の文字が答えです」
「ほ、さ、よ、ね、つ・・・って書いてあるけど?」
「横一列ごとに、1文字ずつずれていた文章だったでしょう?つまり、一番右端の文字を一文字ずつずらして読め・・・というメッセージだったんです」
「・・・・・・ああっ、なるほど!」

 そこで理解してすっきりしたジーニは手を打ったが、ギルやミナスがまだ理解していない表情であることに気づき、アウロラは「ほさよねつ」と書いた羊皮紙の横に、「ましらのて」と書き込んで二人に見せた。

「この右端の文字を、一個ずつずらして読むと『ましらのて』・・・つまり、猿の手になるんですよ。レリーフの答えはこれです」
「うわあ・・・僕、全然わかんなかった」
「・・・俺も今言われてやっと分かった」

 そんな二人が囁き合う中、部屋のどこかで仕掛けが動いたような音がした。だが、音が反響しているせいで正確な位置は掴めない。
 ジーニが呟く。

「お宝・・・かしら?」

グライフ11

「手分けして探すか」

 応じたアレクが進み出ようとするのを、ミレイが防いだ。

「待って!・・・どうやら最後にもう一つ試練があるみたい」

 部屋中からモンスター特有の気配を感じ取る前に、アレクの本能がすでに剣を抜かせていた。雪精トールも戦いの予感を感じたのか、懐から肩の位置に移動している。

グライフ12

 エディンが眉をしかめつつ武器を構える。

(・・・解せねぇな。わざわざリドルを仕掛けて、正解を当てたのにモンスターが出てくるなんざ・・・。やっぱりこりゃあ・・・)

 彼のやや後ろで、「やるしかないようね」といって≪死霊術士の杖≫を構えるジーニは、エディンの持つ違和感に気づいているのだろうか?

(気づいてなくても不思議じゃねえ。今回、ずいぶんと自然にやってるからなァ・・・リーダーは勘で気づいてるみてえだが)

 とにかく、彼の疑惑が当たっているのかどうかを確かめるためには、目の前の死霊たちを片付ける必要がある。
 やれやれとため息をついたまま、彼は手近な死霊へミスリルのレイピアを突き刺した。

2013/04/28 14:01 [edit]

category: グライフの魔道書

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