Thu.

異国の華 4  

 猛々しい開戦の合図が上がり、まるで黒雲に見える人の塊――軍隊が、ときの声をあげてぶつかり合う。
 眼前で繰り広げられるそれを見て、ミナスが小さい声で唸った。

「うう・・・絶対敵のほうが多いよ!!」

 追加報酬の件を頭の片隅にがっちりホールドしてあるジーニが、不安げに瞳を揺らすエルフに発破をかけた。

11異国の華

「どうやら始まったようね。行くしかないのよ!!」
「・・・お前さん、ホント頼りになるわあ・・・」

 はは、と力ない笑いを発したエディンは、気を取り直して装備の確認をした。ミスリル製レイピアも名匠のナイフも、手入れを怠っていないおかげで新品同様に美しい姿を保っている。これからそれらがどれほどの血を吸うことかと思うと、自然気が重くなった。

「・・・・・・まあ、確かに行くしかないだろ。リーダー、合図頼むわ」
「あいよ。じゃあ皆、行くぞ。食い破れ!」

 ギルがさっと左手を下ろし、彼らはいっせいに駆け出した。
 すぐに敵の部隊と交戦が始まるものの、今まで培ってきた経験からなる臨機応変の戦闘に、敵の兵士たちは抗う術を持たない。

「な、なんなんだ、こいつら・・・」
「気をつけろ、魔法を使う奴がいる!」
「こっちは魔法剣だ!くそ!」

 これまでの戦争になかった攻撃に、敵は浮き足立っている様子である。頃合を見計らい風で相手を薙ぎ倒したジーニが、「さあ、進むわよ!」と元気な声をあげた。
 その彼女の肩を、エディンが掴んだ。

「何よ、エディ?」
「ちょいまち。どうやら敵の親玉さんは・・・あっちみたいだ」

 これまでの進路であった北ではなく、彼の長い指は西の方角を指し示していた。
 たちまち顔を見合わせた一行の中で、一番にギルが言う。

「ちょうどいい、ワコクにこのまま行っても文句が出ないよう、片付けておこうぜ」
「・・・まあ、このまま消えたら契約違反になるもんね」

 肩をすくめてみせたミナスの頭を、そっとアレクが撫でた。

「そういうことだ。もう少しだけ頑張ろうな」
「よし、支援魔法をかけなおしたら一気にいこう。いいな?」
「おう!」

 リーダーの決定に全員が頷く。
 ・・・ほぼゲリラ戦闘のように襲い掛かってきた冒険者相手に、すぐさま本営の陣を厚くすることもできず、敵将は舌打ちをしながら抜刀した。
 敵軍の将はさすがにずば抜けた攻撃力を持っていたが、そのほかの敵兵は大した使い手ではない。
 そのことにいち早く気づいたギルが、雑魚の間を縫って斧の刃の一点に集中した気を斬撃とともに叩き込んだ。

12異国の華

「ぐふっ!?ば、ばかな・・・・・・」
「悪いけど、早く仕事終わらせたいんでな」

 残りの敵兵をアレクやエディン、アウロラやミナスの召喚した者達が蹴散らしていく。敵将を倒した勢いをそのままに、”金狼の牙”はひたすら戦場をワコクの方角へと駆け抜けていった。

「はあ・・・はあ・・・。ここまで来れば・・・ワコクは・・・もう・・・すぐ・・・」

 戦闘の連続で息を切らせたミナスが呟く頃には、すでに夜の帳が下りていた。
 同じように息をハアハア切らせていたアレクが、しばらく黙り込んだ後に「ん?」と首を傾げる。気づいた幼馴染が「どうした?」と声をかけた。

「いや・・・ここまで来たら、追加の報酬は受け取れないんじゃないか?」
「・・・・・・あーー!!」

 彼の言葉の意味に気づいたギルが大声を上げ、ジーニがショックを受けた顔つきになった。ちなみにアウロラとエディンはそれにちゃんと気づいていたらしく、困ったように微笑んでいるばかりである。
 何しろ、報酬を受け取るべきベラスの陣営は、先ほどまで彼らが駆け抜けてきた敵軍のさらに向こう側にある。今から引き返して行けば、報酬を受け取ることもできるだろうが・・・。

「3000sp・・・でも冒険者として依頼を投げ捨てていいものか・・・」

 腕組みをしているアレクだったが、ギルが断腸の思いで「俺たちには、依頼を果たす責任がある!」と意見を通したために、一行は先へ進むこととなった。

「そうだな、しかたないか。先に進もう」

14異国の華

「しかたないかって・・・アンタよく淡白に割り切れるわね!?」
「今さらぐだぐだ言った所で、戻るのはまずいだろう?」
「まあね。確かにね!・・・あたしが怒ってるのは、エディもアウロラも気づいた事に、なんであたしが気づかなかったのかって事だけよ!」

 ほぼヤケクソ気味に叫んだジーニを宥めつつ、一行はとある民家にて足を止め、一晩の宿と置いた馬つきの馬車を買う事ができた。
 銀貨500枚を代金に置いて行った時には、軽くなった財布を睨んだジーニがため息をつき通しだったという・・・。

2013/04/25 12:23 [edit]

category: 異国の華

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