Wed.

護衛求む 2  

 ローン・イリーガ、というその依頼人は小柄な中年の男性だった。
 やや頼りなげなその風貌とは別に、語り口ははっきりとしていて、解りやすい言葉を選んでくれている。
 彼は、その口調で道行について説明してくれた。
 平坦ではっきりした道が続いているトレセガ街道は、途中で森に繋がっており、狼や野盗が出るという。
 全員がエディンの方を向いたのは、言うまでもない。

「はいはい。ちゃんとお仕事しますよー」

 その台詞が合図だったかのように、ローンが馬車を引き、一行はその周りを警護して歩き出した・・・。

ScreenShot_20120920_042529750.png

 途中、狼達をジーニの【眠りの雲】で眠らせ、ウィードを問題なく倒した一行は、休憩地点の小川でゆっくりと心身の疲れを癒した。
 森を無事抜けて、もう一息だと声を掛け合ったところで、依頼人から意外なことを言われる。

「・・・・・・狼の隠れ家のマスターには既にお願いしてあったんですが、ご存知ないでしょうか?」
「キイテマセン」

 ギルが思わず変な調子で返す。
 ローン氏は、「荷物を持ってください」と、さも当たり前のように彼らへ言ったのだ。

(あ、あのくそ親父~~~~!帰ったら見ときなさいよッ!)

 肉体労働の苦手なジーニが、思わず心中で復讐を誓っている最中も、依頼人の説明は続いた。
 上り坂が続くので、馬車に荷物を置いたままでは難しい、そのために馬の負担を減らすので荷物を持って欲しいと。
 しかし、これも仕事であることは間違いない。一行は諦めて重い荷を担いだ。
 ローン氏には聞こえない最前列で、ギルとアウロラがこっそりと囁きあう。

「なあ・・・・・・俺たちって・・・冒険者だよな?」
「そうですね」
「冒険者の仕事って・・・こんなものなのかよ」
「・・・・・・・・・」
「俺たちは・・・野盗や狼から依頼人を守るためにここにいるんじゃなかったのか・・・」
「・・・・・・・・・」

 ぶち。

(げげ!)

 聞こえるはずもないのだが、アウロラの堪忍袋の尾が切れたような音が、すぐ後ろのエディンには聞こえた気がした。
 エディンは、慌てて前のギルへ無駄口をやめるよう、アイコンタクトを必死で出した。
 何しろ、アウロラは普段は優しいのだが、怒りが頂点に達した時の恐ろしさは半端ではない。
 この娘を怒らせるのは、決して得策ではないのだ―――だが、哀しいかな、我らがリーダーにその目配せは見えていなかった。

「冒険者の仕事って―――」
「・・・分かりましたよ。理不尽な荷物運びを急に押し付けられたのは分かりますが、そんなことをグチっても仕方ないでしょう」
「う・・・・・・」
「目の前の仕事をキチっとやりとげるのも、冒険者の仕事でしょう」
「・・・・・・・・・」
「行きましょう。無駄口を叩いて無駄に体力消費する必要はないです」
「・・・・・・ハイ」

 まさしく氷の女王と見紛うばかりの視線で睨みつけられ、ギルは口を紡ぐしかなかった・・・。

「ん。罠がある」
「・・・いつも、ここを通るときはこんな様子なんですか、ローンさん」

 無事荷物を下ろし、また森のエリアに入った一行の足を止めたのは、エディンのそんな一言だった。
 人為的な罠であることはエディンの様子でよく分かる。
 ギルが、ローンに普段の街道について聞いた。このローン氏も、以前のように盗賊の下へ冒険者たちを案内するつもりなのだろうか?
 しかし、彼は思い当たることなどないらしく、眉をひそめて答えた。

「いえ、もっと平和できれいな森だったのですが・・・やはり、野盗などが森を荒らしているのでしょうね・・・悲しいことです」
「人間のエゴ・・・・・・か」

 アウロラが哀しげに瞳を揺らして言った。
 その後ろで、黙って指を動かしていたエディンが、終わったとばかりに立ち上がって一行を促した。
 一同は、しばらく言葉すくなに歩き始めた。

2012/11/07 03:18 [edit]

category: 護衛求む

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